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記事2006年2月3日 2011号 (6面) 
産学連携 (3) ―― 学校法人産業能率大学
(株)パスコと業務提携

 学校法人産業能率大学(上野俊一理事長、本部=東京都世田谷区)はこのほど、株式会社パスコ(東京都目黒区)と業務提携し、地理情報システム(GIS=Geographic Information System)のマーケティング手法を教育とビジネスの分野で普及・促進させていくことを明らかにした。同大学の産学連携の取り組みを取材した。


コラボレーション授業
企業と連携し教育プログラム開発


 産能大学(四月から産業能率大学へ改称)は、実学を重視し実務直結型の教育を実践することによりビジネスリテラシーを修得し、社会の即戦力となる人材の育成を目標としている。
 そのため同大学では、開設当時、文系の大学では珍しかったインターンシップを必修科目として開講するなど、実社会で役立つ能力の修得につながるカリキュラムを積極的に導入してきた。
 社会で役立つ能力を獲得するためには、実社会に触れながら学ぶことが不可欠であり、そのためには、企業、社会とのコラボレーションが大きな役割を果たしている。
 企業と大学との産学連携は共同研究や受託研究など研究面での活動や、また教育プログラム等の共同開発を目的とした教育面での活動に重点を置いたケースも考えられる。教育面で重点を置く産学連携は将来必要とされる人材育成を大学と産業界が連携して当たることで、高い期待が寄せられている。同大学が目指す産学連携は、外部機関と提携し教育プログラムを開発することにより開講する授業を「コラボレーション授業」と位置づけ、普及啓発活動を展開するものだ。
 今回のGISは、電子化された地図上にさまざまな情報を重ね合わせて表示し、分析する情報システムで、IT(情報技術)の進歩に伴いさまざまな分野で活用されており、この分野では同社はリーディングカンパニーとなっている。同大学が同社と業務提携したのは、GISのマーケティングが最近著しく増えて注目を集めていることから、積極的に大学・社会人教育に導入することで、さらに充実したカリキュラムの提供が可能になることがその理由だ。
 「GISマーケティング」は、平成十八年度から経営学部の「マーケティング情報コース」の専門科目として開講されることになっている。この科目では、実際の出店状況をもとにGISからマーケティングについて理解し、データ分析手法を学ぶ。実際には、最近、問題となっている防災・環境対策でどのような施設があるか、あるいは、店舗の出店状況を調査する場合、競業するところはどの程度あるのかなどの市場調査をする場合に利用されている。
 また、「コラボレーション授業」では、社団法人神奈川県情報サービス産業協会に属する企業人が授業を担当する「情報サービス産業研究」、湘南ベルマーレと授業を共同開発した「スポーツビジネス実践講座」が、二〇〇四年度に開講されている。「情報サービス産業研究」は、共同で作り上げたカリキュラムに沿って同協会役員のIT関連企業の代表者や事業部長などベテラン技術者が、システムエンジニアの基礎から高度な内容にわたる実務から得た経験を講義した。「スポーツビジネス実践講座」では湘南ベルマーレ・スポーツクラブトレーナーによるテキストに基づき、十二週間の運動の計画作りをサポートする通信研修講座「プロスポーツトレーナーに学ぶデイリー・エクササイズコース」を二〇〇五年六月に開講した。
 さらに、二〇〇五年度には社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)と共同開発した「コンテンツビジネス講座」が開講された。この講座では、コンテンツ(情報の内容)の制作、流通、ビジネスの現状、および動向を学び、コンテンツに関するさまざまな知識を深めることを目的とする。これは、同大学がマネジメントの新しい適用領域を学びコンテンツビジネスの動向について実践的なカリキュラムを実現するとともに、情報モラルの体得を目指した情報教育環境の整備の必要性があったからだ。


情報技術者の教育充実へ


 同大学が、「企業とのコラボレーション授業」を実現した背景には、大学院、大学、および短大といった学生教育部門のほか、企業等に対して人材育成・企業内教育を支援する社会人教育部門を持つという、独自の背景を持っていることが影響している。社会人教育部門での数多くの企業内研修や人材育成に携わった実績から、企業との連携をどのようにつくり出し、良好な関係を築くということについて、教職員がノウハウを有しているといっていい。
 「前出の『情報サービス産業研究』では本学と企業のコラボレーションの結果、こうした授業プログラムが開講されたことを知った他大学から自分のところでも開講したい旨の申し出があり、情報技術者の教育充実の観点からご協力したという経緯もありました」(企画広報室)
 同大学ではより実践的で有効なカリキュラムとするために、絶えず内容の検討を重ねていく方針だ。



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