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記事2006年11月23日 2049号 (2面) 
私大の教育・研究充実に関する研究
理事長・学長らが教学、運営問題討議
私学研修福祉会が大学・短大研究会
 私学研修福祉会(理事長=廣川利男・東京電機大学学園長)は十月に大学、短期大学の理事長、学長を対象にそれぞれ二日間、研究会を開催した。学校経営や事例紹介をもとに講演やシンポジウムなどを展開した。

学校法人 ガバナンス重要
私大の定員割れと再生が課題


【大学の部】
 私学研修福祉会は十月十六、十七の両日、大学のガバナンスと学校法人をテーマに「私立大学の教育・研究充実に関する研究会」を私学会館(東京・市ヶ谷)で開催した。二日間にわたり講演、パネルディスカッションなどを展開、経営の透明性や意思決定のスリム化などの意見が挙げられた。冒頭、九月末に新理事長に就任した廣川利男・東京電機大学学園長があいさつに立ち「私立大学がこれからの社会で発展していくためには、管理、運営面での情報公開がより一層求められている。学校法人のガバナンスが重要となってくる」と強調した。
 初日には清成忠男・法政大学学事顧問が講演した。ガバナンスの意義については社会に目をむけ自らを相対化し組織のパフォーマンスを向上できることや、広く社会に受け入れられる、時代に的確に適合できるなどを挙げた。大学の特殊性について「二重性」を指摘。設置者(法人)と大学、組織の二重性、法人経営と教授会運営のマネジメントとガバナンスの二重性などについて説明した。清成学事顧問はトータルなマネジメントとガバナンスの二重性の統合が重要になると話し、「最終的な責任は設置者が負うことになると思う」と述べた。
 教学のガバナンスとして、人材蓄積の面から社会にメリットがあるという理由で、大学の公共性を認識することだという。だが定員割れが続くとこの公共性は失われると強調した。また自己防衛本能の強い教授会の閉鎖性の打破なども挙げた。
 このほか日本私立学校振興・共済事業団私学経営相談センター長の西井泰彦氏による基調講演「私立大学の定員割れと再生課題」、また小田一幸・東京造形大学理事長は「弊学における経緯と現況」、飯野正子・津田塾大学長は「大学とガバナンス――津田塾大学を例に」で意見発表を行った。
 二日目は佐藤東洋士・桜美林大学理事長・学長がコーディネーターを務め、大坪檀・静岡産業大学長、河田悌一・関西大学長、納谷廣美・明治大学長によるシンポジウムが開かれた。
 大坪学長は大学とは社会から付託されている存在であり、公器であると強調したうえで、「地域社会から多くの評議員を取り入れ、評議会を独立したものにして助言をいただけるようにしていくべき」と述べた。
 河田学長は関西大学の経営理念、新学部設立などを紹介。「卒業生でない自分が学長になることでも分かるように学閥がなく、『関関同立』の中でも最も透明性が高い」と話した。
 納谷学長は理事長、総長、同大の学長の三長制から二長制への転換について話した。総長の地位・権限はかつての名誉職から中間領域の新規事業を担当するように変わっていったこと、総長制廃止の背景として(1)外部評価に耐えうる大学改革の必要性(2)学長権限の強化(3)意思決定の迅速性・明確性が求められていることを挙げた。同大ではハード面では「アカデミーコモン」の設立、ソフト面では約五年前に全共闘系列を追放し、完全に正常化したという。今後国際系の新学部設置に乗り出す。納谷学長は「学内政治ばかりでなく、外部に目を向けないとスリム化は図れない」と話した。

理事会と教授会の円滑化
学長のリーダーシップが鍵


【短期大学の部】
 私学研修福祉会は十月二十三、二十四の両日、私学会館(東京・市ヶ谷)で短期大学理事長、学長らを対象とした「私立大学の教育・研究充実に関する研究会」を開催した。「理事長・学長(管理運営担当者)と短期大学の運営」をテーマにシンポジウムや講演を展開した。教学の代表としての学長の役割、重要性などが指摘された。
 シンポジウムと質疑では「最近の私立短期大学の課題」と題し、森脇道子・自由が丘産能短期大学長がコーディネーターを務め、四人の理事長、学長が発表した。香川達雄・女子栄養大学理事長は「企業の経験を活かした私学経営」として、同学園の経営改革などを紹介。昭和六十三年当時の学園の状況は、教授会がすべての経営上の重要事項を決定、良い教育を安く提供するが累積赤字も莫大な額となり原価意識はなかったという。
 その後、教授会の反対はあったが学納金の適正化に取り組む。授業こそが私学の売り物、教育が良ければ学納金が高いのは当然であるとして教育原価を十分考慮しつつ毎年の値上げ、毎年の応募者増加を続け、八年目にして累積赤字を解消した。広報費用を三倍まで増額し、学校説明会の回数も増やしたという。
 和野内崇弘・札幌国際大学短期大学部理事長・学園長は理事会と教授会をテーマに発表した。学長は教学の長として校務をつかさどり、私立学校法で理事となることが決められていることなどをから、経営と教学に係わる唯一の人間であることなどと指摘。学長の力量が理事会と教授会の関係を円滑にすることになり、「実質的に理事長のリーダーシップより重要かもしれない」と話した。
 関根秀和・大阪女学院短期大学学院長・学長は「認証評価の動向と短期大学基準協会の評価について」と題し、私学の活性化、再生・破たんなどをも交ぜて説明した。関根学長は「社会的要求に即した評価を進めざるを得ないのではないか」と話した。最後に佐藤弘毅・目白大学短期大学部理事長・学長は会長を務める東京都私立短期大学協会の改革について報告した。少子化の影響による会員数の減少に伴い、平成十三年に「協会在り方検討会」を発足させた。検討会では直営事業のスリム化、東短協コンソーシアム事業の発足、事務局のスリム化、財務内容の健全化などに取り組んだ。コンソーシアム事業での単位互換事業は十九校まで広がってきたことなどを紹介した。
 質疑応答で短期大学教育の意義についての質問に、香川理事長は「二年という短期間で徹底して専門性をものにする。教育の密度を高くするということが重要」と述べた。

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