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記事2006年11月13日 2048号 (2面) 
大学、諸外国の評価で実情聴取
文科省の学校評価協力者会議
評価者研修や公表などが課題に
海外では学校支援組織が充実
 文部科学省の学校評価の推進に関する調査研究協力者会議(天笠茂座長=千葉大学教授)は、十月三十日、都内で四回目の会合を開き、義務教育等に先行して実施されている大学や保育所における第三者評価と、イギリス・フランス等諸外国における学校評価制度の仕組や特徴等の報告を受けた。今後、我が国における義務教育等の学校評価制度のあり方を検討する上で参考とするもので、委員からは制度実施に伴うコストの問題や公表のあり方、保育所では第三者評価制度の実施園が広がらない原因などについて質問が出された。
 このうち大学の評価については、同省の西井知紀・高等教育局高等教育企画課国立大学法人評価委員会室長が、戦後、大学制度が発足して以降の評価制度の変遷や、平成十四年度から始まった、設置認可の弾力化を進める一方で第三者による評価制度を導入した新たな質保証システムの概要を説明した。
 大学は定期的に認証機関による評価を受けることが義務付けられているが、評価する人材の育成、評価はその後の改善につなげていくものについて社会的理解がいまだ得られていないこと(悪い結果に批判が高まる)が課題だとした。
 また委員からは経営体としての評価を行える研究者不足を指摘する意見も出された。国立大学に関しては、六年ごとに認証評価を受けることが義務付けられているが、業務面や経営面について文部科学省の事務レベルで毎年評価している、とした。
 保育所における第三者評価については、増田まゆみ・目白大学人間社会学部人間福祉学科教授(全国保育士養成協議会現代保育研究所副所長)が制度の変遷や現状を報告したが、二万二千を超える保育所で第三者評価制度を受けている保育所はまだごく少数(任意のため)、全国的な調査結果もないのではないか、とした。また公正・中立な第三者評価機関の増設が課題で、全国的に評価を展開している組織は、全国保育士養成協議会の一団体だけだとした。
 平成十四年度から本格実施された第三者評価は、三人の専門家が現地を訪問、一日の保育を連続的・多面的に観察することで、的確な評価に近づけているとしたが、その一方で、「一日観ただけで何が分かるのか」といった批判もあることを明らかにした。
 第三者評価を受ける保育所が広がらない要因に関しては、他人が園の中に入り、細部まで立ち入ることに保育所側で抵抗感があること、評価を受けるからにはオールAの評価がほしいことが障害となっているとした。またオールAを希望する思いは、評価結果の公表のあり方とも関係する問題で、増田教授は公表が質的向上に繋がっているのか疑問とし、再検証の必要を指摘した。
 このほか評価基準の検討、調査者の研修が今後の課題とした。
 諸外国の第三者評価の評価手法に関しては、現地調査を行った株式会社三菱総合研究所がイギリス、オランダ、フランス、ニュージーランドにおける第三者評価制度の特徴等を報告した。
 評価制度は国によってちがいがあるものの、イギリスとオランダでは学校改善に有効に寄与している、とした。一方、フランスでは一部の地区では制度設計上の問題から、学校改善の成果が見られず、第三者評価の運用が中止されていることを報告した。
 また評価される側の学校に関して、評価の事前・事後(改善)で、民間を含めて学校をサポートする組織が設けられていること(国によっては複数組織)などが説明された。

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