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記事2006年10月3日 2041号 (1面) 
私学の経営革新と再生テーマにセミナー 私学振興・共済事業団
経営破綻は教育崩壊にも
より良い教育に私学助成
風評被害除去にも情報公開必要
 学校法人の経営破たんが危ぶまれる中、日本私立学校振興・共済事業団(=私学事業団、理事長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)は九月二十七日、セミナー「私立学校の経営革新と再生に向けて」を東京国際フォーラム(東京・千代田区)で開催した。風評被害を避けるためにも情報公開の必要性を指摘する意見が相継いだ。

 冒頭、鳥居理事長は「来年度より大学の収容力は100%になりさらに厳しい競争環境におかれ各校は特色を打ち出すことが必要とされる。また団塊の世代の退職金の支出を容易に賄えない状態。受験者数も都市部と地方の二極化の傾向にある」など、現在の高等教育の課題を指摘。さらに「赤字決算が続くと経営破たんが起こり、日本の教育も崩壊するということを我々も肝に銘じるとともに、新しく政権を担う方にも真剣に考えて頂きたい」と続けた。
 その後、あいさつに立った文部科学省の山中伸一・高等教育局私学部長は助成金について説明。「より良い教育をしているところに私学助成を、特別補助はよりきめ細かなものにして、使い勝手の良いものにしていこうと私学事業団とやっていきたい」などと述べた。
 リクルート「カレッジマネジメント」の中津井泉編集長は「求められる私立学校の経営革新」をテーマに講演を行った。大学進学希望者が進学先を選ぶ条件として「学びたい学問・分野から進学先を決める」「就きたい仕事や目指したい職業から進学先を決める」などが約九割に達することなど、具体的なデータを示した。これらの結果は女子の方が男子より五ポイントほど上回り、中津井編集長は「職業、進路の決定は男子に比べ難しいため、真剣に考えている」と分析している。
 また「元気な大学の共通項」として(1)危機意識を共有できた大学(2)改革・改善を体質化できた大学(3)運の良い、運を取り寄せた大学―とした。
 澤田裕・私学事業団理事は七月にまとめられた経営困難・破たんへの対応の中間まとめについて概要を説明した。中間まとめの段階では経営困難な学校法人に対し法的措置で対応するか、社会に注意喚起を促し自主的に募集停止に導くかの両論併記となっていることなどを話した。
 パネルディスカッションでは私学事業団の西井泰彦・私学経営相談センター長の司会で、清成忠男・法政大学学事顧問、黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長、佐藤弘毅・目白学園理事長・目白大学学長、影山光太郎弁護士・弁理士による意見発表があった。
 清成学事顧問は「経営分析は財務分析プラスアルファで教員の教育力、研究力がどれだけ備わっているかも必要。意思決定のプロセス、結果が情報として開示されているか。優れた経営者がいなければ自覚症状はでてこない。外部の意見を積極的に取り入れなければ風評被害になりかねない」とし、情報公開の必要性を訴えた。影山弁護士も経営者が代わらなければ再生は難しいことや、トップダウンで「風通しをよくすること」などを指摘した。
 さらに黒田総長も「マスコミの風評被害にあう前に、定員割れを起こす場合には事前に公開する。継続的でない定員割れを起こした学校もしっかりとした教育をやっているところはある。プラスになる真実を示してほしい。私学は自己責任であるということの再認識が重要」と述べた。
 佐藤理事長は「不断の経営分析が必要であり財務分析の仕方は素人では危険。私学事業団が正しい分析方法を示すべき」と提案した。さらに「新しいことをやる前に中退者に目を向けてほしい。確保した学生がいなくなることは経営上大きな問題であり、課題を解決することで魅力ある学校づくりにつながっていく」などと話した。

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