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記事2006年10月3日 2041号 (2面) 
文科省 学校評価推進協力者会議第3回会合
学校評価の実施義務化検討
評価結果の公表には問題も
私学を対象にするかは不透明
 文部科学省の学校評価の推進に関する調査研究協力者会議(天笠茂座長=千葉大学教育学部教授)は九月二十六日、東京・港区の三田共用会議所で第三回会合を開いた。

 この日は委員による意見発表、続いて「主な論点」(別掲)に関する協議が行われ、学校評価の実施・公表の義務化を私立の小学校・中学校にまで広げるかどうか、幼稚園、高校、特別支援学校に関して学校評価のガイドラインを策定するかどうかが検討された。
 議論の中心は公立学校のため私学に関する協議は盛り上がりを欠いたものとなった。この中では久保田宏明・穎明館中学高校長が、私立学校には県を超えて生徒が通っており、「地域」に対する感覚が公立学校と異なり、公立学校に合わせて実施するには難しい点があることなどを強調した。幼稚園等の学校評価ガイドライン作りに対する意見はなかった。
 委員の意見発表(プレゼンテーション)では、初めに木岡一明・名城大学大学院大学・学校づくり研究科教授が、「新しい学校評価を創る――学校組織マネジメントの展開」とのテーマで発表した。
 木岡教授は学校評価には約半世紀の歴史があり、ブームが繰り返されてきたが、現在まで定着しなかったこと、今のような外部評価、第三者評価への急激な流れは学校現場の反発を招くだけだとしたうえで、そうした問題を乗り越える七つの視点を指摘した。
 七つの視点とは、(1)みかけを取り繕うことなかれ〈自己アピールとしての評価〉(2)できる時に、忘れないうちに行おう〈ポートフォリオ〉(3)焦点を絞って評価しよう〈重点化〉(4)問題に向き合う耐力と自己効力感を〈達成動機とコンピテンス〉(5)めざす姿を明確にして達成感を得よう〈達成指標・行動指標〉(6)目的と手段との関係を明確に〈目標管理システム〉(7)教育の「成果」を見定めながら〈教育の質保証〉。
 また第三者評価には専門的な助言が不可欠であること、学校評価については、認識を深めた教員の異動等で急激に成果が停滞、マイナス効果すら発生しかねない弱さをもっており、そうしたことを防ぐため、支援システムの必要性を強調した。
 「主な論点」をめぐる協議では、自己評価(校長を始めとする教職員による評価)、外部評価(PTAや地域による評価)、第三者評価(国や大学、都道府県教育委員会など当該学校や設置者から独立した機関による評価)との定義についてはおおよそ異論はなかった。
 学校評価の実施・公表の義務化に関しては、「学校のホームページで公表することを前提にした段階で、外部評価者の評価が抑制的になる例がある」「税金を使っている以上、説明責任が生じる」などの意見が出された。また第三者評価に関しては、「良き実践例を発見するとか、改善を要する場合に必要だ」といった意見などがあったが、まだ学校評価の全体像が見えにくいため、意見の整理は進まなかった。さらに公立学校には私立学校のような主体性(財政面や人事権等)がなく、公立小・中学校の設置者である市町村教育委員の人事権は都道府県教育委員会にあるなど構造が複雑に絡み合っていることから、一層整理を難しいものにしている。
 その教育委員会に関しては、「教育行政自体も評価を受けるべきで、現場にだけやれやれでは(教育の現場が)納得しない」といった意見も聞かれた。このほか委員による意見発表では、竹原和泉・横浜市立東山田中学校コミュニティハウス館長が米国ニューヨーク州エッジモント学区の「学校ハンドブック」を紹介して、地域による情報共有の重要性を報告した。

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