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記事2006年10月3日 2041号 (5面) 
「新世紀拓く教育」 神戸女学院中学部・高等学部
生徒自らの力で可能性発見
国際化学オリンピックで金賞に輝く
 神戸女学院中学部・高等学部(春名康範部長、兵庫県西宮市)は、キリスト教主義の完全中高一貫校である。今年七月、高等学部三年の今村麻子さんが、韓国・慶山(キョンサン)で開催された、世界の高校生が化学の力を競う国際化学オリンピックで金賞に輝いた。今村さんはこの世界大会が「とても楽しかった」と言う。大会参加は昨年に続き二度目だった。
 同校の創設は明治八年。西日本では最古のキリスト教主義の女子高等教育機関であるという。一学年が百五十人程度と少人数で、きめ細かい教育をしている。キャンパスは岡田山の緑豊かな木立の中にあり、れんが色の校舎が、昭和八年当初と変わらないたたずまいを見せる。併設の大学・大学院も同じキャンパス内にある。特徴の一つが自由な校風であること。
 自由を尊ぶ精神から、個性と自立の志が育まれると考えているからだ。
 例えば、神戸女学院は創立以来、制服がない。
入学式などの式典のための制服もない。その代わり、生徒自らが品位ある服装をすることを期待している。「昔はジーンズは駄目だったのですが、生徒会からの申し入れで教員と話し合い、それも今は良いことになりました」と喜多房人教頭は話す。もちろん、自治会活動も各行事等の企画・運営も生徒たち自身の手で行われている。
 英語教育に力を入れているのも特徴の一つである。もともと同校は生きた語学としての英語教育を行い、特に中学部では、長年同校で尽力したアンジー・クルー先生によるクルー・メソッドにより、「聴く・話す・読む・書く」ことで意思疎通ができることを目標としている。高等学部では、中学部で学んだ語学力をさらに高め、将来国際人として活躍できるよう、スピーチやディスカッション、グループプロジェクト、プレゼンテーションなどの言語活動を取り入れている。また、選択科目としてフランス語、ドイツ語などの授業も行われている。当然、各種留学制度やホームステイ、海外研修旅行も実施している。
 近年、進路が多様化してきたことや、生徒が自分の個性に合わせて、カリキュラムの選択ができるよう、選択科目を増やしている。
 また、最近では理系への進学者が半数以上を占めるようになり、理科の各教科も、必修選択と自由選択に分けて、進路に応じて学習できるよう組まれている。一年次には必修として、化学1(理論科学、無機化学、有機化学)を週三時間と、理科総合Bを週二時間学ぶ。二年次は物理I・生物I・地学Iのうちから二科目を必修選択とし週各二時間、各科目のUを自由選択とし週各二時間としている。三年次には各科目ともUを自由選択とし各二時間を当てている。その中でバイオテクノロジーから磁気分野、物質と原子・原子核なども学び、理論科学・有機化学の応用・演習、実験観察も行う。施設面でも、科目ごとに講義室と実験室が設置され、充実している。
 今村さん自身は、小学校時代は算数が好きで、神戸女学院に入ってからも中学部では囲碁クラブに所属しており、特に化学に興味を持っていたわけではない。高校化学グランプリに応募したきっかけは、お兄さんが通っていた高校が高校化学グランプリの会場だったことを知っていたことから、高等学部一年生になった時、軽い気持ちでチャレンジしたのだそうだ。その結果、入賞し、思いがけず日本代表として二年生で世界大会に行くことになった。「化学が面白いと思うようになったのは、世界大会に出るための勉強を始めてからです。勉強すればするほどおもしろくなった。昨年、台北大会で、海外の高校生と触れ合って、金メダルの人はすごいなと思いました」。
 その思いが大きなモチベーションとなって、好循環を生み、今年二度目の世界大会では金メダル。「でも、こんなに頑張れるとは思わなかった」と自分でも驚いていると言う今村さん。
 「今回の大会ではシンガポールの高校生と仲良くなったが、台湾の高校生は英語がとても上手で、自分の英語力の足りなさを痛感した。もっと英語も勉強したいと考えている。将来は、生物関係か有機化学の分野へ進みたい」と話す。「今年の金メダルは二十八人(参加者の一割)。成績一位は韓国の人でした。同じ金メダルでも一位との成績の差は大きい。しかも韓国は金メダルが三人もいました」と今村さん、「二〇一〇年の化学オリンピックの開催地は日本。その時は日本の高校生に頑張ってほしいです」と、後に続く高校生にエールを送った。学校案内には「世界に拓かれた知性と、聖書に息づく自由が、人間としての成長を育む」とある。今村さんは、この言葉のとおり成長して、来年の春、卒業する。

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