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記事2006年10月13日 2042号 (2面) 
中教審大学教育部会 学士課程の教育内容方法改善を討議
改善の「実」を検証
卒業時の学習成果など三教授が意見発表
 中央教育審議会大学分科会の大学教育部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は十月六日、東京・千代田区の財団法人都道府県会館で第七回部会を開いた。
 この日の審議の課題は「学士課程の教育内容・方法の改善」。
 神戸大学の川嶋太津夫・学長補佐・大学教育推進機構教授が学士課程教育のカリキュラムの問題点を米国・英国の例を交え発表。続いて東海大学の安岡高志・理学部教授・教育研究所長が学生による授業評価・授業改善を中心に発表した。さらに京都大学大学院の土井真一・法学研究科教授は、法科大学院制度が創設され、二年課程の卒業生の新司法試験の合格者数が予想を下回ったことで揺れ動いている法学部教育について発表した。
 このほか文部科学省から学士課程教育の現状や関連する答申や提言などが報告されたが、教育内容・方法の改善が多くの大学に広がる中で、中身を伴ったものかどうか吟味が必要なこと、学位記に付記される専攻名が四百四十二種にも増えていること、大学院については設置基準を改正済みだが、学部や短大に関しては積み残していることなどを説明した。
 このうち川嶋教授は、我が国では高等教育のユニバーサル化、長期化などを背景に国際的通用性という観点から「学位」の意味が問われていること、教養教育の専門化、専門教育の教養化といった中で、両者の境界が曖昧になってきていること、米国や英国では学習成果やアセスメント(評価)が重要視されており、アメリカでは「標準化テスト」の導入が提案されたこと(激しい反対にあい、その後トーンが低下)などを報告した。こうした動きには、教育の成果は卒業時だけで判断できるのかといった意見も出された。
 東海大学の安岡教授は、東海大学で一九九三年から実施している学生による授業評価の結果から、その性格について分析結果を報告した。それらは(1)学生の成績、在学年数、学問的能力と授業評価の結果は無関係(2)受講者数三十人以下で評価が高くなる(3)担当科目・年度が変わっても評価は安定(4)文系教員より物理学系の教員が低く評価される(5)研究と教育は表裏一体、車の両輪は嘘、研究能力(論文数)と授業評価は無関係(6)年齢とともに評価は低くなる――というもの。
 こうしたデータに対して委員から自らの印象や体験として納得できるとの意見が相次いだ。
 京都大学大学院の土井教授は、今年行われた新司法試験の合格率が全体として予想を下回ったことから、法科大学院の定員と新司法試験の合格者数の不均衡、過剰な受験競争の再燃の危険性、学部教育の成果を評価する方法の開発、学士課程と法科大学院間での人材の流動化などの課題を指摘した。
 特に学士課程と法科大学院との間の人材の流動化の問題に関しては、法科大学院の入学者に占める自大学・自学部学生の比率の相対的低下、法学部や他の学士課程と法科大学院との関係の整理の問題を指摘した。
 土井教授によると、京都大学の法科大学院の場合、自校大学出身者は五二・六%で全国的に最も高い水準だが、関西の有力国立大学ではその比率がわずか一一・九%に過ぎないという。
 こうした問題の整理は各大学だけでできるものではないことなどを強調した。
 大学教育部会は、今後、先の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」で積み残された点について審議を深めていくことにしており、十一月には大学と高等学校との接続の改善で意見聴取を行う予定。

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