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記事2006年10月13日 2042号 (6面) 
ユニーク教育 (163) ―― 岡山商科大学附属高等学校
自ら目標設定する総合学科制を実施
主体的に生きる人間を育成
 岡山商科大学附属高等学校(戸村彰孝校長、岡山県岡山市)は普通、商業、機械、自動車、環境システムの五学科を設置していたが、平成十六年四月、五学科制を廃止し、県下の私学では初めての総合学科を設置した。今年で三年目の完成年度を迎えた。
 「この総合学科制は自らの力で進路を定め、目標を設定し、自分に適した時間割を作るようにするものです。生徒一人ひとりの夢を限りなく伸ばそうとするもので、入学後からさまざまな研修と指導で最適なプランを組み立てています」と大月教頭は語る。
 同校の校訓は「忍耐し 努力せよ 個性を磨き わが道を行く」。自分の道を自分で考えていこうという精神だ。教育目標は「個性を尊重し、創造性豊かで主体的に生きる人間の育成」を掲げている。この校訓や教育目標の考え方には、夢の実現に向かって自らプランを組み立てようという、まさに総合学科制の考え方が表れている。
 入学後一年次の半年間で、生徒の適性にあった進路について研修、六系列――「国際・カルチャー」「環境・サイエンス」「経営・ビジネス」「福祉スポーツ」「自動車・エンジニア」「機械・テクノロジー」についてガイダンスを行う。この六系列の進学・就職については、具体的な資格や検定を合わせて、最新の情報を産業社会と人間の中で紹介し説明する。と同時に実地見学等の授業を受け、最終的な自分の希望系列を決定し、本人、保護者、担任とで意見交換を経て、具体的なドリカムプラン(時間割)を作成する。
 二年次から、大学進学を目指す場合、就職を目指す場合、資格取得を目指す場合など、それぞれの将来を考えた自分のドリカムプランをいよいよ実践する。
 例えば、文系大学進学なら「国際・カルチャー」、理系大学進学なら「環境・サイエンス」、また専門的な知識・資格を身につけて就職を目指す場合は「経営・ビジネス」「福祉・スポーツ」「機械・テクノロジー」「自動車・エンジニア」が適している。昨年度で言えば、進学先として京都女子大学、就職先としてトヨタ自動車など、それぞれの系列にあった進路を決めている。
 三年次になると、大学生として、社会人として将来、役に立つ幅広い知識を取得するための「学校設定教科」を受講する。これには生活に役立つ「くらしの豆知識」、郷土岡山の歴史などを学ぶ「地域文化」、環境問題やIT(情報技術)などを学ぶ「社会知識」、および、くらしを豊かに彩る趣味を体得する「趣味」――の四分野がある。
 「総合学科制を理解してもらうのに時間がかかり、試行錯誤を続けてきましたが、ようやく慣れてきました。学校の押し付けの時間割ではなく、自分が作った時間割だから、なんとか実行しようという気持ちがあるようです」(大月教頭)
 このような自主性を重視し、しかも地域に開かれた学校を目指そうとする考え方は、生徒会を中心にして小学生に算数・理科実験教室を開放したり、児童館で学童保育を手伝うボランティアを行ったりするところにも表れている。
 同校が取り組んでいることで特徴的なのが、高大連携教育の一環として、近畿福祉大学や徳島工業短期大学といった県外大学との提携を行っていることだ。生徒たちは、長期休暇を利用して体験授業を大学で受けたり、進学・就職につながる実践的なスキルを身につけたりることができる。また、株式会社岡山木村屋の協力により、学校の敷地に一般向けに、「キムラヤのパン屋さん」を開設している。経営ビジネスの生徒はここで店頭陳列、販売など、学校では学ぶことができないことを現場で体験している。高校卒業後を見据えた体験学習は、生徒たちにとっては卒業後の人生をより豊かに彩ってくれるはずだ。

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