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記事2006年1月23日 2010号 (8面) 
ユニーク教育 (150) ―― 開智中学・高等学校
地道な改革で進学校
感謝の心、人間教育重点に



 開智中学・高等学校(西下博通校長、和歌山県和歌山市)は平成五年開校以来、一貫して「家族や友達をはじめ、自分を生かし、支えてくれているすべてのものに感謝する」という人間教育を最も大切にしている。「本校は大正十二年に女子高校として出発しましたが、平成五年に校名変更はじめ、男女共学にし、中学も開校し、すべてを変えました。そして、『和歌山大学に一名合格を』を合言葉に進学校を目指すことからスタートしました」(土井和正・法人本部長)。
 この改革は成功し、十年足らずで、同校は県内でも有数の進学校に成長した。「何よりもよかったことは、地道な改革を行ってきたことです」と、土井本部長は振り返った。成果は国公立大学および著名私立大学への合格者の増加という形で表れてきた。平成十六年度の国公立大学合格者は百四十六人(私立大学合格者数を含めて合格者総数は七百九十四人)となった。国公立大学合格者の現役合格率は九二%を誇る。しかも、クラブ活動や文化祭などの生徒会活動に対しも、生徒たちは前向きに取り組んでいる。「本当の学力をつけさせると、生徒は自分の将来について、真剣に考えるようになります」(土井本部長)。
 このような地道な改革成功の秘訣は、教育の中身を変えるために、教師、教科書、カリキュラムなどを一変させ、進学校のノウハウを取り入れたことが、一つの要因だ。
 同校の中高一貫教育のシステムは、中学一、二年の二年間が基本的な生活習慣および学習習慣の確立期とし、規律を重んじ、自ら学習する態度を養う指導を徹底している。四年(高校一年)から文系クラスと理系クラスに分かれるが、中学三年から五年修了時までは、大学入試合格に必要な基礎的学力を効率よく身につける学習指導を徹底的に行う。六年(高校三年)では演習中心の授業を行っている。
 また、二期制を導入し、加えて土曜日三時限授業を実施したことで、年間授業数を大幅に拡大できた。年間を通じて、毎日の学習リズムや、勉強する緊張感を大切にし、確かな学力を身につけさせるため、月曜日から金曜日までは一日六限の授業(一限六十分)、土曜日には三限の授業を行っている。このように授業時間を増やす一方で、人間教育や情報教育にも力を入れて「心のゆとり」の時間をつくっている。授業では分からないところを時間をかけ、難しい問題に対しても主体的に解決できる能力を育てるために、授業時間数を十分確保しているのだ。その結果、スポーツや芸術などに挑戦できるゆとりを生み出している。
 同校のさまざまな取り組みは保護者にも指示されている。「例年行われる、保護者を対象とする説明会(平成十七年秋実施)は、今までより多くの保護者が参加していただきました。教員が説明をした後に保護者から拍手が起きましたが、こんなことは今までありえませんでした。最も大事なのは、日々の教育をしっかり行っている毎日の努力だと思います。この努力が保護者にも理解していただいているのだと思います」(土井本部長)。
 「今後は教師を育てる態勢をつくっていくことが大事だと思います。そして、毎日が改革という気持ちで、新しい伝統をつくり上げていく」と土井本部長は語る。同校は全国に誇れる品格ある進学校として、確実に伸びている。



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