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記事2005年9月3日 1990号 (6面) 
ユニーク教育 (146) ―― 奈良育英中学・高等学校
キーワードは「不易流行」
育英誓願、中学からコース制
奈良育英中学・高等学校(和田融校長、奈良市)は大正五年、藤井高蔵、ショウ夫妻によって創立され、その理念を表す「育英誓願」は同校の精神的な支柱となっている。
 私達は常に意を誠にし 完全の道を篤く信じ 世界四聖の心を慕い 問学修行に精を尽くし 家を敬愛し国を敬愛し 凡ての隣を敬愛して 万事に完全を期せんことを 誓願いたします
 同校の教育方針は、すべてこの「育英誓願」に集約されている。
 「この誓願を、『他者への誠実な敬愛の念』と『ひたむきな向上心』を大切にして、常に勉学に励み、不断に人格を高めていくという意味に解釈しています」(和田校長)。
 和田校長は今年四月に校長に就任した。この一年目が、同校が一層発展するための貴重な一年と考え、「不易流行」をキーワードに掲げた。
 「伝統ある私学としての持ち味としての『不易』の部分を生かしながら、変動の激しい現代社会から要求される『流行』の部分をいかにクリアしていくか」という目的意識を常に持っていくという。
 「創立者の一人である藤井ショウ先生の『教育は口先の問題ではなく、人格が人格を導くのである』という言葉には、誓願の理念が、単に生徒だけではなく、本学園すべての教職員にとっての目標となることを示しています」と、不易の部分である人格教育の重要性を説く。
 一方、流行の部分に私学としての発展のカギがあると考えているのは言うまでもない。進学に対して一層力を入れていく準備も整えた。従来、中高一貫校としての利点を生かしきれていなかった面もあったが、進学に備えたカリキュラムを学習指導の中核に据え、生徒一人ひとりの第一志望合格を目指す中高一貫体制を強化した。
 中学では徹底した基礎学力の習得を図り、今年は中一から「文理特進コース」を導入した。このコースでは国語・数学・英語の主要三教科に重点を置き、七限授業、八限補習や各種検定試験指導などを行っている。
 高校では、難関校を突破できる力を養成する。一年では必修科目の徹底理解、二年では文系・理系に応じた選択授業を実施、三年では多様化した受験に即した科目選択ができるカリキュラムを採用した。
 「文理特進コース」は国公立および難関私立大学合格を目指す。七限授業のほかに、0限(早朝)、八限で進学補習を実施している。「総合進学コース」はAO入試や特技による推薦入試など、大学の多彩な入試制度に対応できる力をつけている。
 また、六月にモンテ・カセム立命館アジア太平洋大学学長を招き、「人や自然にやさしい社会づくり」をテーマに、高校生を対象にした文化講演会を開催した。同校が高大連携の一環として行ったもので、生徒にとっては新鮮な体験となった。
 知育・徳育・体育のバランスの取れた教育を行うために、「勉強もクラブ活動もきちんとやることになっているので、生徒には厳しい面があると思います」と和田校長。サッカー、ソフトテニス(女子)、柔道(女子)、陸上競技、なぎなた、情報技術、囲碁・将棋などのクラブは、全国レベルの実績を残している。
 同校に奉職して二十九年目になる和田校長は「校長職はコーディネーターとしての要素が強い」と話す。そして、「全校生徒に話す場合には、生徒の心に火をつけるような、生徒を揺さぶるような話がしたい」と抱負を語る。
 来年で創立九十周年を迎える。和田校長は「私学が危機感をばねに、どれだけ生まれ変われるかをアピールしていきたい」と力を込める。

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