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記事2005年9月23日 1992号 (6面) 
ユニーク教育 (147) ―― 京華女子中学・高等学校
毎週土曜EHD、豊かな心育成
体験学習、校外学習を重視
京華女子中学・高等学校(東京都文京区、廣瀬和昭校長)が実践している心の教育の中で、大きな地位を占めているのが、中学生を中心に取り入れているEHD(Education for Human Development)だ。
 「このEHDは中学高校の六年間という心の変化がかなり激しい時期に、豊かな心を持って生きることができるようにとの思いを込めて、年間を通してさまざまな角度から試みています」と、山上誠子教諭は導入の経緯を語る。
 毎週土曜日をEHDの日とし、体験学習・校外学習を通して社会を実際に見る機会を多く取り入れたカリキュラムを実践している。
 同校は校訓に「清・慎・勤」を掲げる。この校訓の下に、二十一世紀に活躍する自立した女性の育成を目指し、今年度の強化点として、(1)中学は基礎基本の学びを重視した女子教育の徹底、高校はキャリア教育を重視した存在価値を高める教育の徹底(2)質の高い授業で達成感を重視した教育(3)女性としての人間力向上プログラムの重視(EHD)――の三点を挙げている。EHDはまさに自立した女性を育成するプログラムの一つだ。
 中学のEHDの柱は「ボランティア・プログラム」「礼法・茶道・華道」「ミュージックフェスティバル」「総合学習(自然環境・国際理解・情報基礎)」「特別企画」からなる。
 「ボランティア・プログラム」は三学年を縦割りにし、手話講習、点訳講習、老人ホーム訪問に分かれて実施する。手話・点訳講習は専門の講師を招き学ぶ。生徒は「手話を通して耳の不自由な人とコミュニケーションが取れてとてもよかった」と感想を口にする。また車イス体験もする。老人ホームでは近くのホームを訪問し、本を読んであげたり、ハンドベル演奏をしたり、童謡を歌ったり、また切り絵作りをしてお年寄りと交流する。お年寄りの中には感激して涙する人もいる。
 「礼法・茶道・華道」は同校の卒業生である各流派の師範を招き指導を受ける。日本の伝統を通し、人とのつながりや思いやりを学び、礼法では立ち居振る舞い、食事の作法、浴衣の着付けをやる。
 「ミュージックフェスティバル」は、毎年二月に行う中学最大の行事。クラスごとの合奏や合唱、個人発表、有志が集まって合奏などが行われる。「生徒は自主的に練習をし、練習の過程で団結心や協調性、責任感、リーダーシップが養われると思います。発表後は涙をながして、達成感を分かち合っています」(山上教諭)。
 「総合学習」の中で「自然環境」は、地球環境について学ぶことで正しい自然観を養う。植物の「ケナフ」を栽培し、それを利用して「紙すき」に挑戦した。また七月には上野の国立科学博物館を見学した。「国際理解」では自分の好きな国の歴史、経済や子供の遊びなどを調べる。六月にはブルガリアからの留学生を講師に招き、ブルガリアの生活や日本文化との違いなどを聴いた。生徒たちは異文化に対する興味を持ったようだ。
 「特別企画」の一つに社会で活躍している卒業生に来てもらい、懇談会を通じ職業を理解するキャリアガイダンスがある。生徒にとっては、将来の職業について考える絶好の機会となっており好評だ。
 EHDは授業によって三学年を縦割りにする場合があるので、三年生がリーダーシップを取って各学年をまとめることも期待している。EHDは生徒一人ひとりが社会の一員であることを理解する上で、貴重なプログラムとなっている。


点訳講習で熱心に学ぶ生徒

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