こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2005年8月3日号二ュース >> VIEW

記事2005年8月3日 1988号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
義務教育費国庫負担堅持
制度堅持支持が多数
一日中教審を水戸市で開催
【一日中央教育審議会】
 国民に義務教育について直接意見を聞こうと中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)は七月二十三日、茨城県の水戸市民会館で一日中央教育審議会を開催した。
 会場には教員や保護者ら約八百人が訪れ、参加者からは、義務教育費国庫負担制度の堅持を求める意見が相次いだ。
 今回の一日中教審には鳥居会長のほか、田村哲夫・渋谷教育学園理事長、角田元良・聖徳大学附属小学校長、梶田叡一・兵庫教育大学長、井上孝美・放送大学学園理事長が出席した。まず、鳥居会長が平成十六年十一月の政府・与党合意である「三位一体の改革」の中で、義務教育制度については今秋までに中教審で結論を得るとなっていることなどを説明。その中に「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する」という文章と「費用負担についての地方案を活かす方策を検討」とする文章に触れ、鳥居会長は「真反対のことを言っている。大きな宿題を出された」などと会場の参加者に話した。
 質疑応答では「都市部では私学など選択肢があるが、国庫負担金が地方に移譲されたとき、きちんとした教育が受けられるのか」「国庫負担金は国でカバーし、その上で地方の工夫があるべき」など、制度の堅持を求める意見が相次いだ。
 参加者の意見を受け、田村理事長は「欧米と比べても、日本は優秀な人材が教員になっている。義務教育というのは、教育のインフラを支える大切なもの。その制度に手を付けるには、相当慎重にやらなければならない。制度が良くできていたから安住していたということもあったのではないか」などと話した。
 「一日中教審」は平成十四年に教育基本法の改正をめぐる問題で、東京、京都、福岡などで開催して以来。今回は茨城県のほか二十四日には高知県でも開催した。

第三期スポーツ・青少年分科会スタート
フリーター対策含め多岐に検討


【スポーツ・青少年分科会】
 第三期中教審スポーツ・青少年分科会が七月二十日、都内で初会合を開いた。六月の諮問事項「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策」を検討する。来年六月に中間報告をまとめる方針だ。
 分科会長には、松下倶子・独立行政法人国立少年自然の家理事長が選任された。
 同分科会では、生活習慣・体力関係、自然体験活動、スポーツ活動のほか、青少年を取り巻くメディア関係などの在り方について審議する。さらに、社会問題となっているフリーターやニート対策についても検討する。
 具体的には青少年の意欲を高めるため、@重視すべき視点についてA方策について―の二つに分けて議論。当面の予定として、十一月項まで重視すべき視点について審議し、意欲に関する研究者からのヒアリングや、青少年の生活、情報メディアとの関係などについて意見聴取を行う。十二月以降は方策について検討し、意欲向上に関する取り組みについて有識者からのヒアリングを予定している。子供の生活習慣をみてみると、平日二十四時以降に就寝する割合は、小学四年生が五・一%、中学三年生になると六四・四%にまで達している。体力・運動能力は文部科学省の調査によると、調査開始(昭和三十九年)から昭和五十年頃までは向上傾向が顕著だったが、昭和五十年頃から六十年頃まで停滞傾向が続き、およそ昭和六十年以降から体力・運動能力ともに低下傾向にあるという。
 一方、フリーターとニートへの対応策も検討課題に含まれている。フリーターは約二百十七万人となっており年十万人ペースで増加。ニートは十年前の四十万人から六十四万人に増えていて、特に年齢が高い層(二十五歳から三十四歳)での増加が目立っている。
 初会合の自由討議では「大きなテーマなので省庁を横断、官民合同で新しいシステムの再構築が必要」(岡島成行・大妻女子大学教授)、「保護者の年収の多さや地域の格差といった格差社会が、これから青少年に影響を及ぼしてくる。子供の集団の育成力ということを考えてみるとよいのでは」(明石要一・千葉大学教授)などの意見が挙がった。

学習活動とニートの実態を探る調査報告も

【生涯学習分科会特別委員会】
 中央教育審議会生涯学習分科会の下に設置された国民の学習活動の促進に関する特別委員会(委員長=山本恒夫・筑波大学名誉教授)は七月二十一日、都内で初会合を開いた。
 同委員会では学習活動の促進に関する実態調査と、ニートに関する実態調査を実施する。
 ニートに関する実態調査では、ニート本人に加え、家族や支援団体、学識経験者らへのヒアリングを行う。具体的には、これまでの学習歴や家庭環境、家族や周りの人との関係などを分析し、どのような支援策・学習機会が必要か考察する。両調査とも、今年六月より調査を開始していて、秋頃に調査報告の予定となっている。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞