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記事2005年7月23日 1987号 (1面) 
私学助成は削減リストから除外(全国知事会・全国会議)
全国知事会が徳島で全国会議
一兆円の税源移譲リスト作成
七月中に政府へ提出
全国知事会(麻生渡会長=福岡県知事)は、七月十三・十四の両日、徳島市内で全国知事会議を開き、政府の平成十八年度「三位一体の改革」に向け、総額約一兆円の「国庫補助負担金等に関する改革案」をまとめた。昨年に次ぐ二回目の国庫補助負担金削減案で、他の地方団体と調整のうえ、七月中に地方六団体の改革案として政府に提出、十七年度までの二年分と合わせ総額三兆円の税源移譲の獲得を目指す。このうち昨年、削減リストに上がった私立高等学校等経常費助成費補助金と幼稚園就園奨励費補助金は今回、廃止・税源移譲リストから除外された。

 政府の進める三位一体の改革では、改革一年目と二年目に当たる十六・十七年度予算で三兆円規模の税源移譲が実現せず、合わせて約二兆四千億円にとどまり、最終年の三年目に残り六千億円の税源移譲実現が課題となっていた。このため知事会では昨年、政府に要望したものの、税源移譲とならなかった国庫補助負担金について改めて廃止・税源移譲を求めた。地方六団体が当面、要求する税源移譲額は残り六千億円だが、余裕分を含め約九千九百七十三億円の削減リストを作成した。
 知事会が作成した「平成十八年度に優先して税源移譲すべき国庫補助負担金」リストには、「社会保障」関係では児童保護費等負担金(児童入所施設措置費等負担金)など二十八項目の補助・負担金・交付金が、「文教・科学振興」関係では公立学校施設整備費負担金など七項目の補助・負担金(別掲)が、「その他」(施設整備)では公営住宅建設費等補助など四項目の補助・交付金が、更に「その他」では公営住宅家賃対策等補助金など二十三項目の補助・交付金が挙げられている。
 このうち文教・科学振興関係の削減リストに文部科学省の国庫補助金である「私立高等学校等経常費助成費補助金」を今回加えなかったことについて、今回の削減リスト原案を作成した知事会の地方分権推進特別委員会・増田寛也委員長(岩手県知事)は、「公立の保育所については一昨年の暮れの決定で一般財源化されたが、その際の政府・与党合意の文書で民間の保育所(約二千八百億円)については、国が責任を持って措置すべきとして、一般財源化が明確に否定された。そのため民間保育所の措置費をあえて(削減リストに)入れることは得策ではないと考えた。高校以下の私学助成(約一千億円)についても、過去の経緯から民間保育所と同じように取り扱われている」と、私学助成をリストから除外した背景を説明した。
 これについては他の知事からは全く異論はなく、高校以下の私学助成を税源移譲リストから外すことが確定した。

義務教育費国庫負担金改革
国と地方の協議で決定必要


 また全国知事会議では、現在、中央教育審議会で地方団体の委員も加え検討が進められている義務教育費国庫負担金の問題について、今回の知事会改革案で、三兆円規模の税源移譲に確実に結びつく改革となるよう、義務教育費国庫負担金等の個別事項についても、最終的には「国と地方の協議の場」において協議・決定すること、としている表現がきつ過ぎるとの意見が加戸守行・愛媛県知事らから出された。その後、改めて義務教育費国庫負担の問題が議論されたが、義務教育問題は昨年の新潟会議で決着済みで、全国知事会の目的はあくまで税源移譲との意見が相次ぎ、義務教育費国庫負担に関する議論が打ち切られた。
 このほか全国知事会では、昨年、要望していなかった国民健康保険国庫負担金が政府によって唐突に廃止・一般財源化されたとして、強い不満を持っており、十八年度に関しては、知事会が要望していない、生活保護費の税源移譲については地方の自主性の拡大に繋がらないとして断固反対姿勢を貫いていく方針。
 また知事会では十九年度以降も法制定化等によりしっかりとした国と地方の協議の場を設け、第二期改革として税源移譲を更に求めていく方針だが、税源移譲の機運が低下していることを懸念、「第二期改革へのスプリングボードがない。世論に訴え、追い風を受けないといけない」(藤田雄山広島県知事)、「第二期改革では交付税が中心になる。(税源移譲できずに)残った事業も大変なものばかり。国と地方のあり方を改めて検討しないとだめ」(岩手県知事)などの意見が出された。
 さらに昨年十一月二十六日の三位一体改革に関する政府・与党合意で今年秋までに中央教育審議会で結論を得るとされた義務教育の費用負担のあり方についても、結論によっては三年目の税源移譲を根底から揺さぶることになりそうだ。



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