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記事2005年7月23日 1987号 (2面) 
医学教育の改善・充実協力者会議 文科省設置
地方医療の現状で意見聴取
義務付けを求める意見が圧倒的
へき地などの地域医療の在り方について検討する文部科学省の設置した医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(座長=高久史麿・自治医科大学長)は七月十二日、三田共用会議所(東京・港区)で第二回会合を開き、地域医療の現状などについて委員や関係者四人からヒアリングを行った。発表者からは地域医療の義務付けを求める意見が相次いだ。
 地域中核病院の院長である邉見公雄・兵庫県赤穂市民病院長は、「都市部の内科医、心臓外科医などは足りているという意見もあるが、全体として医師は足りていない」と強調。原因として仕事の拡大などを挙げた。
 また、都市型集中の医療体制については、大学入学定員に「地域枠」を設けることなども例示しながら、医師の偏在是正を訴えた。
 次に村瀬久子・福島県保健福祉部長は、医師不足の現状について発表した。北海道、東北地域が医療施設に従事する医師数が、中国、四国、九州地方に比較してかなり少なくなっていることを説明。特に地元大学医学部卒業医師の大都市圏の流出、独立行政法人化および、臨床研修義務化などの大学を取り巻く環境の変化により、専門医療における医師不足も、郡部の自治体病院を中心に深刻になっているという。
 福島県はへき地医療対策として「アクションプラン」を掲げ、(1)県ホームページを通した医師の公募(2)医療情報誌への医師募集広告の掲載(3)県内の医師に対する意向調査(4)へき地医療医師確保修学資金貸与制度の創設などに取り組んだ。
 さらに福島県の政府要望として先月、へき地医療を確保するために「医師不足地域の医学部や自治医科大学の入学定員の増員」「医師を一定期間へき地に勤務させる制度の創設」など、新たな医師確保対策を講じることを求めている。
 大橋俊夫・信州大学医学部長は自校での取り組みを紹介した。国立大学法人化後、地域に唯一存在する医療機関として、大学間で役割分担が顕在化し、地域性を勘案せずには存在できなくなったという。同大医学部では、県内枠推薦入試を導入し、学部長自ら高校を訪問して将来の医師希望者に出前講座を実施したり、知事や高校長会、市町村長会などに趣旨説明と協力を依頼した。
 本年度は長野県内高校から同大医学部への進学状況は十一人で、うち現役は五人。地域への定着については長期的視点から当面は見守ることにした、としているが、「入学者の成績は抜群、医療へのモチベーションの高い学生が確保できた」(大橋医学部長)という。
 最後に佐藤慎哉・山形大学医学部脳神経外科講師が、山形大学の医学部教授会、関連病院会、教室員会等の構成員で成る「山形大学蔵王協議会」の取り組みを発表した。同会では三つの部門を設け、人材養成と地域医療の向上を目的としている。具体的には「関連医療施設部門」では地域の実態調査を行い、適切な医師の配置等について検討する。
 「研修部門」では卒後臨床研修・専門教育・生涯学習についてのニーズをくみ上げ、教育カリキュラムの作成を行う。「医療政策・企画・広報部門」では情報の提供、生涯学習セミナーの開催をしている。
 佐藤講師は「地方大学で何かできることはないか、活性化策で取り組んでいるのが現状。国全体としての支援はもちろん重要」などと指摘した。
 同部会では今後、およそ月一回のペースで会合を開き、地域医療を担う医師養成の在り方を中心に議論していく予定。さらに大学付属病院や、卒前・卒後教育についても検討していく。来年三月下旬を目途に中間報告をまとめる。

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