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全私学新聞

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記事2005年6月3日 1979号 (1面) 
第19回全私学教育サロン開催 5月27日昭和女大
私学教育振興に新機軸打ち出す
大学経営に多大な示唆
心の教育、特色教育にも
全私学新聞運営委員会(浅田敏雄代表)は五月二十七日、昭和女子大学(東京・世田谷区)で第十九回全私学教育サロンを開催した。今回は私学各校種を代表するリーダー的存在である三人が登壇し、二年後に控えた大学全入時代を見据え、清成忠男・前法政大学総長が大学経営の在り方について指南したほか、高橋系吾・全国幼稚園教員養成機関連合会会長が幼少時代からの心の教育の重要性について、加藤丈夫・開成学園理事長・学園長が私学の特色教育について講演した。会場には私学の学長や教職員、企業関係者、文部科学省職員など約二百五十人が訪れた。(近く詳報)

清成、高橋、加藤氏 講演

 全私学教育サロンは全私学新聞の改題創刊十周年を記念して始められた。毎回、第一線で活躍している人に社会的関心事について講演してもらい、過去には現首相の小泉純一郎氏も講師を務めている。講演の第一部では、三月に認証評価制度導入後、初めて大学評価結果を公表した大学基準協会会長だった清成氏が、法政大学での九年間の理事長経験を基に、「少子化時代における大学経営の在り方」をテーマに話した。清成前総長は十八歳人口の減少に伴い、学校法人、国公立大学法人、株式会社の法人間競争に移行してきていることを説明。東大を例に挙げて、名門大学は卒業生による寄付金が高額であり、さらに文科省の「21世紀COEプログラム」などを行い補助金が交付されることから、「基盤が強化し、強いところがますます強くなるというポジティブフィードバック現象が起きている」と指摘。そこで強化策として、トップマネジメント・チームによる経営とリーダーシップの発揮を提言。
 清成前総長は「経営とはトップダウンでなければならない。教育サービスの質的向上を図り、明確なビジョンを持たなければ変革の時代を乗り切れない」と強調した。
 その後、高橋会長が「心を育てる心育学と伝承玩具」を演題に、紙で作った昔ながらの玩具や、子供たちが書いた作文を紹介。高橋会長は「心を育てることが教育の中心である」と訴えた。
 一方、第二部では加藤理事長が「私学の特色教育とリーダーシップ」と題して講演した。開成学園の近年の志願者数は、少子化の逆境の中、史上最高レベルを更新し続けているという。
 その理由の一つとして、加藤理事長は学費をなるべく低く抑えていることを挙げた。一年間の学費は授業料がおよそ五十万円。入学時は授業料のほか、入学金・施設拡充費などのおよそ五十万円で、合わせて約百万円にとどめている。学費を上げると家庭環境が均一化してしまうため、学費を低く設定し、広域から多様な生徒に来てもらい、切磋琢磨してもらうことを目的としている。
 加藤理事長は公立学校による中高一貫校の設置などについて触れ、「私学が五十年かけて作り上げてきたものを公立が取り入れ、改革に乗り出している。これは私学にとって驚異になる」などと警鐘を鳴らした。
 開成学園についても「東大進学率トップが一つの『売り』ではあったが、かつての日本社会の構造はこれから必ず崩れていく。『どこの大学を出たか』から、『何ができるのか』、ゼネラリストよりスペシャリスト育成の時代になり、新しい価値にこれからの私学がどう対応するかが重要」などと述べた。


全国から約250人が参加した第19回全私学教育サロン (5月27日・昭和女子大学)

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