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記事2005年6月3日 1979号 (9面) 
ユニーク教育 (144) ―― 吉祥女子中学・高等学校
商店会と連携地域の活性化に一役
チャレンジ精神と自立性教育活動の一環に
吉祥女子中学・高等学校(臼井勝校長、東京都武蔵野市)の高校二年美術コースの生徒たちが、「デザインの学習」を通じて、地域の商店会と連携し地域の活性化のために一役買う試みが始められている。この試みは、一年間の前半が「CIプロジェクト」、後半が四〜五歳の幼児のための「遊具制作プロジェクト」からなるデザインの学習の前半に当たるもので、いずれも社会貢献にかかわる試みだ。
 同校はチャレンジ精神と自立性、そして、協調性あるバランス感覚豊かな人間形成を目指して教育活動を展開しているが、この試みはまさにこの教育活動の一環の表れといっていい。
 「高校二年生という時期は、商店会の人たちと会って地域のことをどのように考えているかという社会的な視点に目を向けさせて、考え方に広がりを持たせるにはいいタイミングだと思います」と、語るのは美術科の徳山高志教諭だ。
 きっかけは商店会でイベントが行われたとき、ポスターや新聞などを作成して広報活動し、商店会の人たちと交流したことから始まった。生徒たちはグループに分かれて、担当する商店の店主に直接会い、商店の現在の様子、商店会の状況についての考えを取材する。暖簾(のれん)やシャッターをどうしたらいいのか、商品に貼るシールをどのようにしたらいいのかなどについて聞く。生徒たちはその取材に基づき、店のイメージを考え、パソコンなどを使ってデザインを作っていく。そのデザインを店主に提案する。このやり取りを何回か行う中で、調整していくのだ。デザインがまとまると、生徒は自分たちで創作したり、できない場合は地元の業者に頼んで作ったりしてもらう。ただし、店主が完成品を気に入らなければ採用しないという条件付きだ。
 昨年一回目が行われ、一グループ六人で五班に分かれて、五店で行った。いよいよ九月の吉祥祭(文化祭)でのプレゼンテーションの日、商店会長、杉並区議会議員、デザインのプロの人たちを招待し、評価してもらった。
 「生徒は家庭では親、学校では教師と接していますが、この両者の間にいる大人と話をする機会はあまりありません。大人と接し、緊張感を持ち、義務や責任を感じると思うのですが、コミュニケーションをとる努力をしながら、乗り越えることで、自信がつくのが大きいと思います」と、徳山教諭はその成果を語る。
 今年は一グループ六人で三店について行い、一店を二グループで担当する。この日は、徳山教諭から店主にインタビューをする場合の注意事項をしっかり聞き、各グループに分かれて酒店や和菓子店で取材を始めた。
 生徒は自己紹介をし、取材の目的を説明した後、「どのようなサービスを心掛けているのか」「客の来る時間帯はいつが最も多いのか」「店を明るくしたいのだが、どのようなこと(暖簾、シャッターなど)をしたらいいのか」「店の内装でどこが一番凝っているのか」「イメージするカラーは」など、さまざまな質問をした。店主はそれらの質問に、一つ一つ笑顔で、時折冗談を交えながら生徒に答えていた。
 美術コースの生徒はデザイン関連の職業に就く場合が多い。「将来の職業を考えた場合、この試みは店のためになるということを考えると同時に、自分のことも考える一つの手がかりになると思います。また、総合的学習と情報科をセットにしたものが「デザインの学習」だと考えています。さまざまな人と会い、交渉をすることは将来的に大きな意味があると思います」と、徳山教諭はこのプロジェクトに期待をかけている。


店の店主に取材している生徒たち

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