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記事2005年6月23日 1982号 (3面) 
地域振興に貢献 (2) ―― 中央工学校
大学や専門学校が地域と連携
店舗リニューアルを支援
実践を重視し地域振興に
中央工学校(大森厚理事長、須郷進校長、東京都北区)で、若者から見て魅力的で、親しみのある商店街≠目指し、産・学が連携して、各商店の店舗の店舗リニューアルを支援する試みが始まっている。同校がある北区内の商店街には老舗(しにせ)が多く、最近、商店の老朽化が進んでいる。同校はこういった実情を近くに見て、それぞれの店が自助努力によって、だれの目から見ても魅力的で入りやすく、親しみやすい店舗を目指す必要性があり、今後の店舗改装など商店街の役に立ちたいと考えていた。学生たちの体験型実地学習が始まった。

 その第一歩として平成十六年度から産・学が連携して、協力してくれる商店の店舗リニューアル計画を後押しするとともに、地域の活性化を目指そうというものだ。
 同校は明治四十二年、工業技術を目指す当時の政策に応え、工業技術のスペシャリストの育成を目的に、建築・土木・機械・電気の四学科を有する工業専門学校として出発した。現在では、「建築」「土木測量」「創造・デザイン」の三学科体制を導入し、「一人の天才よりも、千人の健全な技術者」の育成を目指し、「正しく・速く・美しく」を校訓とする「実践を重視した教育」を実施している。同校の、店舗のリニューアル支援は、まさに実践を重視した教育に基づいているといえる。
 教務部・建築学科の岡部公一主任は「建築学科の卒業生にはさまざまな店舗のプロデュースを手掛け活躍している卒業生たちが多いといえます。建築学科の勉強は机上だけの勉強になりがちなので、本校ではカリキュラムも実践的な授業をできるだけ多く取り入れ、より実践的なものにしようという体験型実地学習です」と、商店リニューアル支援の狙いを語る。
 建築室内設計科の学生たちが同校周辺の王子の商店街や店を訪問し、各商店が抱えている問題点を整理分析した上で、学生が自由な発想で特定の店舗の改装計画を行う課題を設定するという試みだ。最終的には飲食店や物販店を中心に十一店舗が、これに協力してくれた。課題作成期間は五月中旬から七月中旬までのうち週一日だった。参加した学生は二年生の約七十人で、一グループ三〜四人に分かれて行った。
 まず、東京商工会議所北支部と連携を取るとともに、授業における課題制作の協力依頼アンケート「王子の商店計画」の配付を商店街の会長にお願いした。アンケートには、企画に協力してもらえるかどうか、一時間程度の現場調査をさせてもらえるかどうかなどが内容になっている。このアンケートの回収まで商店街の副会長が行ってくれた。この企画に賛同した十一店舗には、飲食店には喫茶店、酒屋、カレー屋、トンカツ屋などが、物販店(サービス業)には古着屋、宝石屋、床屋、時計屋などが含まれている。
 学生たちは現地調査をするに当たって、その店のコンセプトやレイアウトなどを考える。その後、学生たちは分析・検討を行い、学校内で発表会を行うという流れとなる。発表会には東京商工会議所北支部や北区商店街連合会の人も招いた。ここで、いろいろな講評をしてもらい、一週間のうちに店に提出できるまでに課題を仕上げるのだ。その後は各店でプレゼンテーションをし、店の経営者から批評してもらうのだ。
 「店の経営者からは内容的にかなり厳しいことも言われたグループもありましたが、学生たちの取り組みについては経営者からは好意的にとらえられました」(岡部主任)
 学生たちにとってもかなり勉強になった。特に現地調査での店主との聞き取り調査は学生たちにとっては、新鮮であったが、店主の求めているものを設計するには難しい面もあった。ちょうど店が忙しいときに当たってしまい、再度、現地調査を行うグループもあったという。学生たちの苦労の甲斐があって、店主からも「ここまでできるとは思わなかった」という評価をもらったグループもあった。
 「この試みは、グループワークとしてチームワークを取る勉強にもなったし、学生たちが将来、社会に出て企業に就職した後、クライアントと交渉からプレゼンテーションまで行う場合とほとんど同じ過程をたどりますから、いい勉強になると思います」(岡部主任)
 この店舗リニューアル計画は、商店街のさまざまな会合でピーアールしてもらっている。その後「うちの店もリニューアル計画を立ててほしい」といううれしい反応もあった。また、業者から「うちの材料などを使ってほしい」という問い合わせもあった。
 「北区には百を超える商店街がありますが、今後も少しずつ増やして、店舗リニューアルを目指していきたいと思っています」と教務部・建築学科の浜野和孝学科長は期待を寄せている。

店主の前で作品のプレゼンをする学生たち

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