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記事2005年6月13日 1980号 (2面) 
義務教育国庫負担存廃で論議 (中教審)
中央教育審議会の審議動向
地方団体全額一般財源化主張
交付税の将来に危惧も、6月中に中間報告
【義務教育特別部会】
 中央教育審議会の義務教育特別部会が都内で開かれ、最大の焦点となっている義務教育費国庫負担金制度存廃についての議論が五月二十五日会合より本格的にスタートした。地方六団体の代表として石井正弘・岡山県知事は、地方が自主的な教育を実施するためにも国庫負担金の全額一般財源化を主張。委員からは現行の制度で対応が可能だとする意見が相次いだ。五月三十日の部会では、総務省からのヒアリングを行い、同省担当者は地方交付税で財源が保障できると説明。しかし片山善博・鳥取県知事は「交付税に危ぐを持っている」などと批判し、地方団体の足並みも乱れ始めている。同部会は今月中に中間報告をまとめる。
 二十五日の部会では、まず石井知事が、地方の改革案の背景として昨年六月「骨太方針二〇〇四」に基づき、概ね三兆円規模の税源移譲の前提として、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう政府から要請を受け、地方六団体として提案したものであると説明。その上で、改革案は義務教育費国庫負担金の全額一般財源化により、地方が自主的・自立的な教育を実施することができるとしている。
 具体的には、児童・生徒の実情に応じた学校配置、弾力的な学級編成や教員配置が可能になるほか、外部人材の活用、教材の購入・開発などに配分できるとしている。
 この意見に対し小川正人・東京大学大学院教授は「現在の地方交付税制度をどのように認識しているのか。現行の負担金制度の中でもできる取り組みばかり」と批判した。
 さらに市長会に属する土屋正忠・東京都武蔵野市長からも「市長会でも徹底した議論は行っていない。国庫負担金制度が財政的に極めて安定する」と述べるなど、制度維持を求める委員が相次いだ。一方、地方団体側である増田昌三・香川県高松市長は「地方分権反対論者ばかり」と部会委員を強くけん制した。
 また、五月三十日には地方団体の要望で、総務省による義務教育費の財源保障について解説が行われた。総務省によると、現在も義務教育費の大半は地方財政措置で財源を保障しており、標準法による定数が決まっているので、機械的に計算でき、地方交付税で確実に財源保障が可能だとしている。自治省(現総務省)出身である片山知事は「交付税に危ぐを持っている。かつて(国は)景気対策の一環で、交付税上乗せで面倒みるから、借金をしろ、貯金なんかするなという時代があった。今は返済のピークだが、現実は上乗せどころか大幅削減ということだ」などと批判した。
 六月五日の部会でも意見は平行線をたどり、地方団体は、国は学級編成や教科書、学習指導要領で基準を示せばよいと主張している。今月十八、十九日には合宿集中審議を行い、今月中に中間報告をまとめる。

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