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記事2005年6月13日 1980号 (4面) 
京都府私立高校経営改革の推進
トップのリーダーシップとサポート体制
京都府私中高校経営改革委が提言
積極的な情報発信・公開が必要
理事会と教職員が危機的状況を共通認識


 京都府私立中学高等学校経営者協会(小野山利雄会長=共栄学園理事長)はこのほど京都私学の課題と今後の方向性についてまとめた「京都府私立高等学校経営改革の推進について」と題する提言を発表した。この提言は同協会が設置した「二十一世紀の京都府私立高等学校教育の在り方懇談会」の提言を受けて、京都府私立高等学校経営改革推進委員会が検討したもの。提言では、私立学校は今まで以上に自助努力、自己責任、説明責任が強く求められ、教員の資質の向上とともに、積極的な情報発信・情報公開の必要性を強調している。また、理事会と教職員が情報を共有し、危機的状況を共通認識とし、それぞれの責任と役割を明確にすることが重要であると指摘した上で、今こそトップの強いリーダーシップと、それをサポートする体制の整備が必要であると指摘している。「課題と現状打開のための方策」として、「学園への提案」と京都府私立中学高等学校経営者協会への提案」とに分けて、それぞれ提案している。

【学園への提案】

 一、理事会の責任と権限の強化
 理事者の強いリーダーシップの発揮が求められているとともに、「理事会は、学園関係者のみでなく、改正私立学校法(平成十七年度四月施行)にも明記されたように、大局的な視野に立った新しい発想からの提言を期待して、外部の新しい血・有能な人材を積極的に登用した構成とする必要がある」としている。
 また、学園は、学園の将来構想・運営方針を策定し、それらを所属教職員に速やかに伝達・徹底を図ることが重要であり、労使の合意のもと学園全体が一丸となって、経営改革に邁進する必要性があるとする。「そのためには、まず、学園の現状を十分把握することが重要である。理事会とは別に外部委員を加えた評価機関を設置し、学園運営や教育方針・内容等について、外部の目を通して定期的に点検・評価を受ける、更にその結果を公表し、改革に活かしていくことが重要である」と提言している。また、仮に人件費抑制を求める場合でも教職員すべての協力を得られやすくするために、財務諸表等の公開が学園経営改革の必須条件としている。

 二、教職員の意識改革
 教職員一人ひとりが、組織の一員としての責任と自覚を持つ強固な帰属意識を持ち、自ら広く府・市民から選ばれる学校づくりの中核であるという使命感と日々の実践が求められている。
 また、学校現場は閉鎖的な存在となりがちであると指摘した上で、「学校間の人事交流や外部講師の導入等により新しい発想や考え方に触れる機会を与え、教職員の向上心を刺激することも必要である」とする。

 三、経営改革推進
 経営改革の意識の醸成という視点から、私立学校は、在校生、卒業生、保護者、地域社会にとっても、信頼され、誇りとされる存在でなければならないとし、私立学校の社会的責任の自覚をうったえている。
 一方、校長には特色ある教育の創造や経費の節減等に努力することが求められているとし、「教育内容や方法について、抜本的に見直すことを躊躇してはならない」と強調している。
 また、経営基盤の確立という視点から、収入の確保については、(a)生徒の収容増対策(b)マーケティング調査の実施(c)特色ある教育内容の推進(d)中退対策の充実による生徒確保(e)納付金の抑制(f)奨学制度の充実(g)寄付金の確保(h)その他の収入確保の検討――を挙げている。支出の抑制については、(a)消費収支比率の改善(b)人件費の抑制(c)余剰教職員対策――挙げ、(d)大量採用した「団塊の世代」が退職する時期を若返りにつなげる改革の好機ととらえ、新規採用に当たっては、優秀な人材の確保がカギとなると指摘している。

 四、教育改革推進
 教育目標の明確化、社会のニーズに応える魅力ある授業の創造、および建学の原点に立ち返った教育の創造が求められているとした上で、魅力ある教育内容の創造として、次の七点を挙げている。(1)国際化教育の推進(2)国語力向上の推進(3)情報教育の推進(4)福祉・環境教育の推進(5)道徳教育の振興(6)伝統文化・工芸教育の推進(7)職業体験・大学との連携等による進路指導の推進――。
 指導力の向上として、(1)魅力ある教師の育成(2)教科指導の向上(3)幅広い教養と豊かな人間性あふれる教師の育成(4)産業界・大学等との連携などを挙げている。

【京都府私立中学高等学校経営者協会への提案】

 経営改革推進のための研修の実施、指導力向上のための研修、生徒募集のための協力体制について、提案が行われている。

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