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記事2005年5月3日 1976号 (4面) 
学生の就職支援に力注ぐ短期大学 (1)
学生のやる気引き出す
 長引く経済不況から短大卒業生の就職環境は、いまだに好転したとはいえない。学生自身も職業に就くことに対しての意識が薄いなどの問題があると言われている。加えて、少子化など短大を取り巻く環境は厳しい。しかし、その中で、就職支援体制を整え、学生に対しては社会人となるための教育や職業に就くことの意味を考えさせるといった就職支援を行い実績を上げている短大も多い。紙面では、そうした短大の取り組みを連載として紹介していく。

授業終了後コミュニケーションアワー設置
資格取得目指しキャリアアップ講座


【東京富士大学短期大学部】
 東京富士大学短期大学部(岡村一成学長)は、今年四月から、授業終了後の午後四時十分から同六時十分までの時間帯をコミュニケーションアワー≠ニし、ここに就職支援体制の一つとしてキャリアアップ講座を置いた。同短大は現在、経営学科に販売・接客を中心としたサービス職を目指す「セールス・ビジネスコース」と、企業の一般事務職を目指す「オフィス・ワークコース」を設置する共学校だが、従来、こうした講座は通常授業の空き時間に設置されていたため、受講できない学生もいるといった悩みがあった。しかし、コミュニケーションアワーという時間帯を設けることによって、学生がより受講しやすい体制が整ったことになる。
 設置された講座は十一講座。ほとんどの講座が資格取得を目指している。
 「就職・公務員試験基礎講座」は就職・公務員試験対策と基礎学力のアップを図ることを目的としている。
 「ファイナンシャル・プランニング技能士講座」は、ファイナンシャル・プランナーの仕事をする場合に必要な金融関連分野を学習する。目標はファイナンシャル・プランニング技能士三級資格だ。
 「カラーコーディネーター講座」は、接客・販売における色彩提案や、インテリア・ファッションに関するアドバイスをするカラーコーディネーターを視野に入れ、検定試験三級が目標。
 「販売技術講座」は、流通・小売業における販売技術・商品知識・販売事務管理・接客マナーなどを学ぶ。目標は販売士検定試験三級。
 「秘書技能講座」は秘書の仕事に就きたい人が対象だが、一般的なビジネスマナー等も習得できる。検定二級および準一級合格を目指している。
 「ビジネス実務法務講座」は企業活動の国際化・複雑化に対応する実務・法律知識を養成する。目標は検定三級。
 「簿記技能講座I・簿記技能講座U」は金融関係企業または経理部門への就職を考えている人のための講座。講座Tは日商簿記検定三級を、講座Uは二級取得を目指している。
 「就職ガイダンス」は短大一年生の参加を促している。また「就職ガイダンス・番外編」はインターネット就職ナビの活用方法、業界・業種研究などとなっている。
 「就活直前講座」は十二月に開設され、就職を希望する短大一年生向けに実施される。自己分析、エントリーシートの書き方、履歴書の書き方、模擬面接などが行われる予定だ。
 「インターンシップ(事前研修・事後研修)」は、同大で実施されているインターンシップを希望する人のための講座。説明会および事前研修・事後研修が行われる。企業実習は、八・九月に二週間以上の日程で実施されている。
 このうち、販売技術講座、ビジネス実務法務講座、秘書技能講座、簿記技能講座I・簿記技能講座U、インターンシップには二単位があてられている。
 開講日は前期のみ、後期のみ、前後期通してなど、さまざまだ。受講料はすべての講座が無料となっており、学生の負担は教材費のみ。
 コミュニケーションアワーでのキャリアアップ講座は今年初めてだが、四月から既に講義が始まっている講座もあり、いずれも募集定員以上の学生が集まるなど、非常に好調だ。例えば、カラーコーディネーター講座には六十人、ファイナンシャル・プランニング技能士講座も六十人、就職・公務員試験基礎講座は五十二人の受講生がいる。
 同短大は卒業生の約六割が就職するが、大多数は一般企業に就職する。
 しかし、近年、就職に際して学生たちは「自分が何をしたいか分からない」「どんな職業に向いているのか分からない」という傾向がある。今回のこのコミュニケーションアワーのキャリアアップ講座は、こうした学生たちが、自己を発見し、適性を考え、付加価値を付けることができるようにとの意図で設けられた。やる気を引き出すきっかけになればとの思いがある。

各学科から参加して就職委設置
学生の個性、適性みて指導


【小田原女子短期大学】
 小田原女子短期大学(小舘静枝学長)の平成十六年度卒業生の就職希望者の就職率は、家政学科で約九五%、幼児教育学科で約九八%だった。
 今春の卒業生で就職した者のうち、栄養士の資格を生かして就職した学生は五割を超える。幼児教育学科の卒業生も幼稚園教諭・保育士の資格をとって幼稚園・保育園等へ九割以上が就職する。就職先の所在地は例年、地元神奈川県内が最も多く、次いで静岡県内である。小田原短大の場合、卒業生のほとんどが就職するが、就職率は例年九割台だ。この好調さは、学生一人ひとりの適性・個性を見ながら、個人面談をいつでも、丁寧に、担当の教職員が行っていること、あくまで本人の意志を尊重してアドバイスするなど、きめ細かい対応によるものだ。
 学生をサポートするのは同短大に設置されている就職委員会である。家政学科の教員四人、幼児教育学科の教員三人、事務局職員三人の合計十人が就職委員として一体となって学生の就職活動をサポートする。
 もちろん、各種資格の取得に力を入れている。家政学科食物科学コースでは栄養士免許が、同生活科学コースでは秘書士の資格が、また幼児教育学科では幼稚園教諭二種免許と保育士資格が取得できる。就職指導も一年間の夕イムテーブルを作成し、一年次から就職活動プログラムと就職行事スケジュールが実施される。ガイダンスから始めて、少しずつ学生の就職意識を高めていくようにしている。
 その一つが一年次の就職講座である。一単位をあて、より実践的な内容を授業として実施している。例えば、家政学科には「職業と社会」という講座が置かれ、週一時間の授業が行われる。内容は、@進路について考えようA就職活動=夢を勝ち取るための活動B自分を知ろう1(なぜ自分を知ることが必要なのか等)C同2(自分はどんな性格なのか)D同3(自分はどんなことをやりたいのか)E同4(自分はどんな能力を持っているのか)F効果的にPRしよう(話すPRと書くPR)G企業へのアプローチ(エントリーって?)H提出書類の書き方(履歴書)I同(エントリーシートってなに?)J就職マナー&エチケットの習得K面接基礎知識L面接の流れ習得、などだ。
 講師は、外部講師に一貫した講義を依頼している。週一回の授業では、毎回小テストが実施され、レポートが課される。同時に、二年生の就職内定者を呼んで、授業内容に即した就職活動体験談を聞かせる。全十三回の授業が終わるころには、約三十例ものさまざまな就職活動のハウツウを学習することになる。これは非常に効果があるという。幼児教育学科は家政学科とは少し形が違うが、「あいさつ・マナー、エチケット」「筆記試験ガイダンス」「面接の心構え」「表現・自己PR」「文章表現・構成」「園・施設内定者報告会」「採用筆記試験対策講座(三日間)」などの就職対策講座が設けられている。内定は、企業に就職する者が二年生の夏ごろまでに、栄養士として仕事に就く者は十月ごろまでに、幼児教育学科の学生は十月以降三月ごろまでに決定する。昨年度末になって急に金融機関の求人が増加してきたとのことで、これまで新規採用を控えていた金融機関の求人が今年度は活発に見込めるようだという。


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