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記事2005年5月23日 1977号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
学級編成基準引き下げ
30人程度の少人数学級導入へ
田村理事長来年度から第8次定数改善を要望
【義務教育特別部会】
 中央教育審議会義務教育特別部会(部会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)の第八回会合が四月二十八日に、第九回会合が五月十日に東京都内で開かれた。学級編成基準を現行の四十人から引き下げる方針を固め、これを受け文部科学省は協力者会議を設置し来月中旬までに報告書をまとめる。八月の概算要求に関係予算を盛り込む予定で、早ければ来年度から少人数学級の導入が始まる。部会では、このほかにも教育委員会の在り方や教育費などについて議論した。
 第八回の会合では、教育委員会の存続、活性化について討議した。片山善博・鳥取県知事は「知事就任後、権限の分散を行ってきた。あまりにも権限が多すぎ、すべて知事部局にきたら大変なことになる。(教委は)抑制均衡の領域にあるべき」などと述べた。これらの意見に対し増田昌三・香川県高松市長は「教委は形骸化している。職務を首長部局に移す選択があっても良いと思う」などと強調した。
 一方で部会では田村哲夫・渋谷教育学園理事長が、教育支出の国際比較などの参考資料を提出した。資料をもとに田村理事長は、平成七年から十三年の六年間で多くの国が教育費を伸ばす中、日本の教育公財政支出が微増であることを指摘。さらに六年間で日本のGDPは八%上昇しているのに、初等中等教育費の公財政支出は五%増にとどまっていることなどを説明した。田村理事長は「教育費の充実を具体的にどう実現していくか明確な議論がみえてこない。各国は経済活動の成長に合わせ、教育費をできる範囲で増やしていくという統計が出ているが、我が国ではそれが見当たらない」などと批判した。
 また第九回の部会では一クラスの上限を四十人に定められていた「第七次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画」の今年度終了に伴い、学級編成や教職員定数などを中心に審議を行った。冒頭、中山成彬・文部科学相があいさつに立ち、「本年度で終了する第七次定数改善計画後の教職員配置等の在り方について議論していただきたい」と要請した。
 部会では、「分かる授業をやっていくためには少人数学級」「伸びる子供を伸ばせることができる」などといった理由で、三十人程度の学級編成基準に踏み切るべきだ、との意見が相次いだ。
 だが、「三十一人だった場合は、十六人と十五人の二クラスに分けるのか。その場合、クラスとして機能するのか。上限だけでなく下限も示すべき」(角田元良・東京都千代田区立麹町小学校長)「勉強だけやるのなら少ないほどよい。しかし協調性、集団性を身に付けるためにも運用の工夫が必要」(梶田叡一・兵庫教育大学長)などといった意見のほか、少人数学級を導入する対象学年や、学級数増加に伴う施設面での対応などが課題に挙げられた。
 ほかにも教職員定数改善計画の第四次(昭和四十九年度〜五十三年度)から第五次(昭和五十五年度〜平成三年度)、第五次から第六次(平成五年度〜十二年度)について、田村理事長は「改善計画の中で(移行する間に)一年休む年がある。休まずやってもらいたい」と指摘した。
 鳥居会長は少人数学級導入について「定数を改善すべき。柔軟で新しい改善計画のため工夫が必要」などと部会の意見をまとめた。
 これらの要請を受け、文科省は今月中にも、有識者による調査研究協力者会議を設置。来月中に報告書をまとめる方針だ。

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