こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2005年4月3日号二ュース >> VIEW

記事2005年4月3日 1973号 (2面) 
教員分野の大学等の設置・定員増抑制で報告 調査協力者会議
教員需要は増加傾向
教員採用者数が急
国の抑制方針撤廃して対応
教員養成系学部等の入学定員の在り方に関する調査研究協力者会議(主査=村山紀昭・北海道教育大学長)は、三月二十五日、「教員分野に係る大学等の設置又は収容定員増に関する抑制方針の取扱いについて」(報告)を文部科学省に提出した。その中で、今後、教員需要の全国的な増加が見込まれること、特に一部地域ではすでに教員の採用者数が急増していることから、いまだに抑制されている教員養成分野の大学等の設置・定員増について、国の方針を撤廃し、各大学が平成十八年度入学から対応できるよう所要の措置を講じることを求めている。

 教員養成分野の大学等の設置・収容定員増については、「大学等の設置・収容定員増に関する抑制方針が撤廃」(平成十五年度以降)された後も例外五分野の一つとして抑制されたままとなっており、一月の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」の中でも「必要に応じて個別に検討を加えていく必要がある」としたことを受け、文部科学省は同協力者会議に諮問し、このほど「教育分野に係る大学等の設置又は収容定員増に関する抑制方針」は撤廃することが適当であると報告された。
 報告によると、抑制方針撤廃の理由として次のような事由を挙げている。
 まず、(1)全国の公立小・中学校教員の年齢別構成を見ると、平成十七年三月現在、六十歳が八千人、以下徐々に多くなっており、五十六歳は一万五千人、四十六歳は二万五千人と最大となり、その後は少なくなっているものの、これが、将来の教員需要に大きな影響を及ぼすこと。
 (2)特に大都市圏など一部の地域では、平成十二年度から十六年度にかけて公立学校教員の採用数が急増しており、都道府県・指定都市において質の高い教員の確保が困難になっていること。
 (3)児童・生徒数については、全国的な年齢別人口統計を見ると、十五歳以下の年齢はほぼ横ばいであり、これまでのように急激な少子化が進展して教員採用減につながるとは考えられないこと。
 (4)質の高い教員を確保するためには、毎年一定数の採用枠を確保する必要があるだけでなく、現状を見ると制度改正に伴い常勤教員とともに非常勤講師を採用する例が増えていること。
 以上のことなどから、文部科学省調査によれば平成十七年度以降、向こう五年間で公立学校全体の教員採用見込み数は全体で二万千人から二万四千人と予測され、地域によっては減少傾向のところもあるものの、大都市圏を中心に大幅な増加が見込まれ、さらに退職者数の増加に伴い、ここしばらくは教員需要は増加あるいは現状と比較して高い水準で推移していくとみられる。
 このため、国に対して、教員分野の大学等の設置・定員増の抑制方針を撤廃し、平成十七年度の申請分「十八年四月入学(編入学)」から各大学が対応できるよう所要の措置を講じることを求めている。
 また各都道府県・指定都市の教育委員会に対しては、将来の採用見込み者数の見通しや採用方針についてできるだけ中長期的にかつ継続的に情報提供してほしいとしている。
 報告は、抑制方針が撤廃された場合の留意点として、全国一律に養成規模の量的拡大を促すものではないとの基本認識を示しながら(1)各大学においては質の向上を図ること、その際、現在、中央教育審議会で審議されている教育養成における専門職大学院についての議論を踏まえること(2)所在する都道府県・指定都市等教育委員会と連携を図り地域のニーズに即して養成規模を検討すること(3)新学部・学科の設置にあたっては適切な評価を受けられる名称とすること――を挙げている。
 報告は、最後に、平成十六年度から大学等への認証評価制度が導入されたが、教員養成に関してはさらに質の維持・向上を図るため、認証評価に加え「教員養成に関する分野別評価が行われることが有効と考えられ、そのための団体が育成されることを期待する」と結んでいる。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞