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記事2005年4月13日 1974号 (1面) 
経営困難な学校法人への対応方針 文科省発表
私学の経営破綻を回避対応マニュアル
在学者の就学機会確保
経営改善へ指導・助言を充実
少子化による就学人口の減少等が続く中で、今後、私立大学等の経営悪化・破たん、それに伴う在学者への影響が懸念されているが、文部科学省の「私立大学経営支援プロジェクトチーム」(主査=金森越哉・高等教育局私学部長、ほか関係課長らで構成)は、三月三十日、「経営困難な学校法人への対応方針」を発表した。

学生転学支援プログラム創設へ

 この対応マニュアル≠ヘ、経営破たんを回避するための指導・助言体制や、在学生の就学機会の継続確保などについて同省の基本方針を示したもの。「私立学校の自主性の尊重」を対応の基本の一つに据えながらも、「在学者の就学機会の継続確保」を最優先課題に掲げ、法的手続きの活用も視野に入れた、より抜本的な対応策の検討を学校法人に促していく考えを示しており、状況によっては同省が私学の経営改善に積極的な関与を果たしていく姿勢を示唆している。
 また最悪のケースとして、学生が在学したままの状態で学校を存続できなくなった場合、関係機関の連携の下に、主として近隣の大学等の協力を求め、学業の継続を希望する在学生の他大学等への転学を支援する「学生転学支援プログラム」創設の提案も行っている。
 ただし転学については、「専門分野等が合致しない」「カリキュラムや国家資格の取得・受験資格に係る要件が合致しない」「施設・設備が不十分」「既修得単位の認定や授業料の扱い等について調整がつかない」などさまざまな問題があり、対応方針の中でも「いわば最後の最後に残る止むを得ない手段であるということを、関係者は十分認識しておくべきである」と強調している。
 少子化の影響から就学人口の減少が続いており、平成十六年度現在、私立大学の約三割が、また私立短期大学では約四割が定員割れを起こしており、さらに単年度だけをみると、帰属収入で消費支出を賄うことができない学校法人も平成十五年度で全体の約三割に及んでいる。
 今回の対応マニュアルは、段階的な対応を定めており、(1)経営の悪化した学校法人に対しては日本私立学校振興・共済事業団の協力を得つつ、経営分析を踏まえた指導・助言を通じて学校法人の自主的な経営改善努力を促す(2)改善に向けた取り組みの早急な着手が必要な学校法人に対しては、状況に応じ経営改善計画の作成を求め、より詳細な分析や指導・助言を行う(3)これらによっても尚改善が不十分で、さらに踏み込んだ対応が必要と考えられる学校法人に対しては、在学者の就学機会の継続確保を最優先に法的手続き等の活用も視野にいれた、より抜本的な対応策の検討を促す(4)仮に近い将来、学校の存続が困難となると判断される場合でも、まずは在学生が卒業するまでの間、学校を存続し授業を継続できるよう、最大限の努力を促す(5)最終的に学生が在学したまま学校を存続できなくなった場合には、「学生転学支援プログラム」により、近隣大学等の協力を求め、転学を支援するとしている。
 (3)の段階以降の対応としては、事業の縮小、債権者・債務者の合意に基づく私的整理、他の学校法人との合併、事業譲渡、民事再生法に基づく再生手続き、破産法に基づく清算手続き、自主解散等の選択肢も含めた検討を指導・助言することもあり得るとしている。

支援者の紹介・合併の仲介など
私学事業団も積極的に


 また、私学事業団では、支援者を求める学校法人に対しては支援者の紹介や、学校法人の合併などの仲介などを積極的に行うこととしている。
 さらに「学生転学支援プログラム」については、経営破たんに陥った学校法人から要請を受け、近隣の大学等に転学できるよう支援を行うもので、実際の運用にあたっては、個々の事例に応じて柔軟に対応するとしており、また同プログラムは随時見直しを行うとしている。
 転学支援の仕組みは、まず経営破たん法人による学生らへの説明が行われた後、破たん法人から文科省への支援要請で関係機関と連携しつつ対応を協議、近隣大学等への協力要請と受け入れ可能性の確認を行い、近隣大学長らで「学生転学支援連絡会(仮称)」を構成し受け入れ可能性等を協議、可能であれば受け入れ条件等を協議するなどして学生を転学させ、その後、破たん法人が文科省に結果を報告する、といった流れとなる。
 また、転学を円滑にするため文科省では、転学生を受け入れた大学等に対して、入学金等の減免、既修得単位の認定等について配慮を要請。奨学金については、転学後の大学等でも奨学金の継続を可能とする。また経済困窮学生に対しては緊急採用奨学金制度により対応する。定員については一時的増員等を措置し、定員増加に伴う一般補助を増額し、さらに特別補助を加算する。授業料の減免等を実施した大学等に対しては経常費補助金を増額する―などの施策を講じるとしている。
 経営が悪化した学校法人への国費投入に関しては、「現時点では国民の理解は得られないと考える」として経営困難法人への財政支援は難しいとの考えを示している。
 また今回の方針は大学等に関してだが、私立高校等に関しても同方針を参考としつつ、必要に応じた方策等の検討を各都道府県に求めている。

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