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記事2005年4月13日 1974号 (3面) 
中央教育審議会の審議動向
民間人校長が活性化指南
地域の人材を活用した学校運営発表
義務教育は国が責任
義務教育費国庫負担金の在り方などを討議する中央教育審議会義務教育特別部会(部会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)の第四回部会が、三月二十九日、東京都内で開かれた。会合では藤原和博・東京都杉並区立和田中学校長によるボランティア組織を活用した自校の学校運営などの事例発表が行われた。藤原校長は「マネジメントが分かる人が入ると学校はまだまだ活性化できる」などと訴えた。また小松郁夫・国立教育政策研究所教育政策・評価研究部長が英国での義務教育費全額国庫負担の取り組みなどを紹介した。
 会合ではまず、平成十五年度より都内公立中学校で初めて民間人校長となった藤原校長が、自校で取り組んでいる「地域本部」の取り組みを発表。
ボランティア組織で構成する地域本部では、積極的に地域の人材を活用していることを紹介した。
 例えばPTAによる読書振興や学校ホームページの作成のほか、土曜日に教員養成大学に在籍する学生十人程度が生徒に英語、数学、国語の補習指導や塾の宿題などの指導に当たっている。藤原校長は経費を削減しながら学校の環境整備や学習指導を実践していることを報告した。
 藤原校長は「法律、条例を破ることなくおよそ百の改革を行ってきた。
従来型の校長は、学校に眠る資源に気付かない」などと指摘した。
 また委員からの「現実に企業はこれだけつぶれている。システムさえつくればすべてうまくいくのか」との質問に対しては、藤原校長は「企業マネジメントといえばリストラと数値目標が言われがちだが、教育におけるマネジメントは子供とのコミュニケーション能力と時間の管理ができること。よりよい教員採用を命がけでやってほしい」と訴えた。
 その後、小松部長が十八年度より義務教育費の全額国庫負担が決まっている英国の事例について発表した。具体的には(1)教育技能省から地方に対して、義務教育費の全額国庫負担金(教職員給与費と運営費)を交付(2)全公立学校の三年間の予算を事前保障することで各学校は中期的な予算計画が可能(3)既存の個別補助金を統合し地方の補助金事務を簡素化することで予算用途の裁量を高める―の三点を紹介。その上で小松部長は「義務教育に関しては格差などを解消するため国が全面的に責任を持つべき」などと主張した。
 この発表に対し、地方団体からの代表委員である増田昌三・香川県高松市長は「なぜ格差はだめなのか。短絡的すぎる」などと強くけん制した。
 今後、同部会ではこれまでの会合の論点整理を行う。さらに教育委員会制度などについて議論した後、本格的に義務教育費国庫負担金制度など財政面の議論を行う方針だ。これからの義務教育の在り方として、一定の方向性を示し、今秋にも答申する。

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