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記事2005年3月3日 1970号 (6面) 
高等教育のグランドデザインテーマに研究会
社会的要請にこたえ、人間性豊かな人材育成
【東京都専各協が教育研究会】
 東京都専修学校各種学校協会(中込三郎会長=東洋美術学校理事長・校長)などは二月十八日、東京・市ヶ谷のホテルグランドヒル市ヶ谷で、「高等教育のグランドデザイン〜中央教育審議会・今後の専修学校教育に関する調査協力者会議より〜」をテーマに、第十一回専門学校教育研究会(文部科学省、厚生労働省、東京都、東京都私学財団など後援)を開催、基調講演とシンポジウムを行った。

人間的・経済的価値
知識や技術習得のなかで

シンポジウム

 パネリストは、基調講演を行った小松氏のほか、山本恒夫(筑波大学名誉教授、専修学校に関する調査協力者会議座長、前中央教育審議会委員)、山野晴雄(桜華女学院高校教諭、同調査協力者会議委員)、久保富美夫(東京都専修学校各種学校協会評議委員、大原学園理事長)の各氏が出席、司会は青山佳世氏(フリーアナンサー)が務めた。
 山本氏は、専門学校が生涯学習を振興していく上での基本的な考え方として、「芸術・文化・スポーツ、趣味、教養、生きがいとなるもの、人間的なつながりなどの人間的価値(人間の持つよさ)を追求する学習と、財やサービスなどの経済的価値を生みだすための職業的知識・技術を習得する学習が調和的に行われる必要がある」と述べた。
 高校の立場から、山野氏は「いまは選択の時代に来ている」とした上で、「専門学校などで行っている教育の特色、教員の質、取得できる資格などについて生徒に正確な情報を提供し、アドバイスする必要がある」と進路指導の点から語った。
 専門学校の立場から、久保氏は大原簿記学校の例を挙げ、職業教育の上で高度化が求められてくると、三年制や四年制の専門学校への進学者が増えていることを示唆し、「高度な知識が必要とされる資格を取る場合は、四年制の専門学校が必要になってくる。特に医療系の分野では多い。また、企業へ就職した場合も評価が高い」と高度な教育を行う専門学校という視点から報告した。

高校と専門学校とが連携
学生の優れた能力を発見


 また、「評価」の点から小松氏は「評価の仕方についてもさまざまあり、各専門学校はこの点が優れているという点を(社会に)明らかにして、働きかけていく必要がある。
 また、職業観という観点から、山野氏は「高校の普通科でもキャリア教育をしっかり行っている。二年生では職業人について観察したり、企業体験したりしている」と報告。これに対し、山本氏は「子供のときから職業体験をさせることが必要だ」と発言、久保氏は「専門学校の授業を高校に開放することが考えられるなど、高校と専門学校との連携が考えられる」と述べた。
 小松氏は「大学の動きに注目し、変えるべきところは変えて、しっかり対応してほしい」と、また、山本氏は「学生の持っている力を専門学校で見つけてやってほしい」と、それぞれ専門学校に期待をかけた。

【高等教育のグランドデザインと専門学校】

基調講演
実践的な職業教育機関
大学院入学資格も付与画期的な評価

小松 悌厚氏 文科省生涯学習政策局専修学校教育振興室長

 基調講演では、小松悌厚氏(文部科学省生涯学習政策局 専修学校教育振興室長)が「高等教育のグランドデザインと専門学校」をテーマに、中央教育審議会答申(平成十七年一月二十八日「我が国の高等教育の将来像」)の専門学校関係のポイントを中心に整理し、今後の専修学校教育に関する調査研究協力者会議の調査研究の方向性などについて言及した。
 小松氏は「この答申で専門学校が正面から受け入れられた」と答申を評価し、二十一世紀は「知識基盤社会」(knowledge based society)の時代で、「高等教育(専門学校を含む)は個人の人格形成上も国家戦略上も極めて重要という考え方に基づいている」と説明した。
 新時代の高等教育の役割については人格の形成、能力の開発、知識の伝授、知的生産活動、文明の継承など、非常に幅広いもので、中等教育後のさまざまな学習機会の柱となり、社会を先導していくものだと、基本的な考え方を明らかにした。
 高等教育の質の保証の中で、評価結果等に関する情報の積極的な開示・活用という視点から、専門学校については、引き続き、各都道府県段階での適切な設置審査の実施と、各専門学校による自己点検・評価や外部検証の努力により、質の保証および向上を図ることを期待しているとした。
 専門学校の教育・研究の質の向上に関する考え方については、「社会的要請にこたえて実際的な知識・技術等を習得した人間性豊かな人材を育成するため、実践的な職業教育・専門技術教育機関としての専門学校の性格を明確化し、その機能を充実することが期待されている」とした。
 また、「専門学校は、今後、一層の個別化・多様化を進める必要がある」としていると報告。
 また、「専門学校のうち一定の要件(例えば、(1)修業年限四年以上、(2)修業年限の期間全体を通じた体系的な教育課程の編成、(3)総授業時数が三千四百時間以上等)を満たすと認められたものを卒業した者に対して大学院入学資格を付与することが適切である」としていることについては、「画期的なことが提言されている」と小松氏は語った。

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