こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2005年3月23日号二ュース >> VIEW

記事2005年3月23日 1972号 (6面) 
ユニーク教育 (140) ―― 日本橋女学館中学・高等学校
伝統行事で感謝の気持養う
針供養・文房具供養・流し雛など



 「うそをついたり、親や友達とけんかをしたりした場合など、いつも平常心でいることは難しい。否定的感情を抱えていると、成長が止まってしまうような気がする。今日この機会にお雛さまに汚れをたくし、また、病気や災いがこれ以上ひどくならないようにという願いを込めて雛流しをしてほしい」
 服部一枝校長は、流し雛に二つの意味があることを丁寧に生徒たちに説明し、「なぜ、このようなことをするのか、その意義をしっかり学んで、この行事と取り組んでほしい」と生徒に呼びかけた。
 日本橋女学館中学・高等学校(東京都中央区)は二月十七日、同校で春季伝統行事「針供養・文房具供養・流し雛」(生徒会・修養委員会主催)を実施した。同校は「質実穏健」を建学の精神に掲げ、明治三十七年、日本の商業・経済の中心である東京・日本橋の地に開学した。「質実穏健」とは「真面目に学習に取り組み、優しく思いやりの心を大切にして、身体だけでなく心の面も、すなわち、心身ともに健康であることを目指していく」ことを意味している。
 心身ともに健康を目指すという精神は、同校が実施しているあらゆる行事に現れている。特に伝統行事である「七夕まつり」(七月)と「針供養・文房具供養・流し雛」(二月)に、その精神が受け継がれている。
 同校は昭和三年から「針供養」を行っており、現在では文房具も一緒に供養している。講堂には祭壇をつくり、お供え物をし、修養委員会の生徒たちが作った豆腐が飾られた。服部校長や修養委員会代表や生徒会代表が次々と、折れ針や使い切った、また壊れた文房具を豆腐に刺していく。物を大切にすること、感謝の気持ちを養うことが目的だ。それは後に浅草の淡島神社に納められた。
 クライマックスは、修養委員や生徒会役員たち約六十人が屋形船に乗って行う「流し雛」だ。同校の横を流れる神田川に、クラスごとに生徒たちが作ったお雛さまを載せた雛台を流すのだ。雛台は生徒たちそれぞれの思いを載せ、神田川をゆっくりと下っていった。橋の上では、一般の人たちも珍しそうに眺めていた。
 この日、講堂では同時に短歌・俳句優秀作品表彰や流し雛優秀作品制作クラス表彰、そしてこの行事に協力した参加団体(華道部・茶道部・琴部・書道科)への感謝状贈呈も行われた。「人形の吉徳」が募集した俳句コンクールで賞に輝いた作品は次の二句。
 ひなまつり年に一度の夢見る日(高二の三・佐藤里紗さん)
 雛出すと去年のことを思いだす(中二の一・野口沙織さん)
 「校内コンクール優秀賞」十六句はどれも女性らしさが表れているものだった。「流し雛コンクール」では最優秀賞と優秀賞の発表が行われ、「今回は自分たちの似顔絵を作ったクラスが多いのが特徴で、素晴らしかった」との講評が服部校長からあった。
 最後に全員で歌った「雛まつりの歌」は大正時代に作られた伝統あるもので、同校で歌い継がれている。
 「皆さんは一人ひとり個性という宝を持っています。その個性を大切に伸ばしていきましょう。一人ひとりがここでは主役です。皆さんの成長を楽しみにしています」と服部校長は生徒たちにメッセージを送った。
 同校は今年、創立百周年を迎える。伝統を大事にし、自立して社会に貢献できる人材の育成を目指し、次の百年に向けて飛躍する。



記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞