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記事2005年3月23日 1972号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
財政論より教育論を
財政悪化しても義務教育保障を 地域格差発生に憂慮
初会合でフリートーク
二月二十八日に開かれた中央教育審議会義務教育特別部会は、初会合のためフリートークで行われ、委員からはさまざまな意見が出された。その中で、日本そのものに対するビジョンが議論されていない、地域間格差を発生させるのではないか、どのように財政が悪化しても義務教育を保障すべきだなどと、財政論ではなく教育論を求める意見が比較的多く出された。

【義務教育特別部会】
 委員からは、議論が財政論に傾斜しがちだが、教育全般の問題について議論すべきだとし、幼小連携や学力向上など実際に学校現場で発生している問題にどのように取り組むのか、などと中教審としての答えを求める意見もあった。
 また、教育は五十年、百年の視野にたって議論をすべきだとの意見もあり、「義務教育費国庫負担の問題も、国・地方の財政が今厳しいからという理由だけで議論が進むことは不安」、また、「今回、三位一体改革を推進する人は『教職員定数の枠、地域住民の監視の目があり、首長は選挙の洗礼も受けるから大丈夫』と言うが、財政状況がますます悪化した後、日本の義務教育はどうなっているのか不安だ。どのように財政が悪化しても、義務教育を保障する必要がある」といった意見や、「地方の独自性を発揮させる改革は賛成だが、地域間格差を発生させるのではないか」と懸念する委員もいた。
 「すべてが三位一体改革からスタートしているが、それが問題。義務教育国庫負担金が一般財源化されたら四十の都道府県でマイナスとなるデータがあるが、これで義務教育が成り立つのか」との指摘や「最初の段階で、こうしたデータを明らかにし、三位一体改革からスタートするのではなく、実態をきちんとしなければならない。財政論・教育論関係なく、教育のお金がどこから出るのかは重要だ。また、義務教育は十五歳までだが、その後の高校に相当する年代で、ニートになる人が八万人というデータがあり、このような現状を踏まえ、義務教育改革を考えてほしい」と述べる委員もいた。地方自治体からの委員は、教育問題はもちろん、財政についても国がもっとしっかりと支援してほしい。地方に任せる話だけでなく、財源も措置すべきであり、これについても議論しないと、地方自治体を預かる身として対応できないと話した。
 「義務教育の問題を考える際、将来も考えるべきだが、現在の義務教育がサステイナブル(持続可能)かどうか問題となっており、今後十五年間で大量の教員不足が現実化する」として「ここでいくら理想的な議論をしても、教育を支えるインフラ部分のサステイナビリティー(持続可能性)をどうするかを議論しないといけない」などと将来を見越して教員がどうなるかの議論が必要との声もあった。また、「これまでの教育改革にどこに問題があったのかを、中教審という場を含めて検証すべきだ。なぜなら教育論の議論のベースになる部分でもあり、しっかりと分析すべき問題だからだ」という意見や「制度論も教育論もエビデンス、論拠を持ってやってほしい。ラディカルな制度改革が進んでいるが、現在進んでいる改革についても、改革自体が矛盾した形で進んでいることが不安を与えている。財政論にしても、教育論にしても、社会のビジョンにかかわる話。『希望格差社会』と言われるが、格差が日常生活の中にどう入り込んでいるのか、義務教育にどう影響を与えているのかきちんと考えるべきだ」と社会格差という観点から考えるべきだとの意見もあった。

瀕死の地方交付税移譲に疑問
日本のビジョン論議を


 さらに、三位一体の改革のポイントは、実質的な地方分権ができるかどうかにかかっているとして、「財源が全国で確保できるか、また地方に裁量が与えられているかである。義務教育費国庫負担金については、半分は現金で国が負担しており、また総額裁量制が導入されているにもかかわらず、瀕死の地方交付税に移すことは疑問である。中教審でも、地方交付税の将来を見通した実証的な議論をしていけばよい」と言う委員もいた。
 「義務教育そのものについて議論すべきだという話が出てくること自体、わが国は病んでいる。また、日本はどういう国になりたいのかというビジョンが議論されていないことが問題だ。三位一体改革については、これからは地域間で競争していくことになり、われわれはそのような競争ができるマネジメント能力を持つ者を選挙で選んでいこうと考えているが、義務教育の分野が競争すべきものであるかどうかは疑問だ」など、教育を競争原理の中に巻き込むことへの懸念を表明する委員もいた。

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