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記事2005年3月23日 1972号 (7面) 
2005年首都圏私立中学の入試 影響少ない公立の私学化
公立中学への不安濃く 私学志向明確に
史上最高の受験率
昨年より高く15.5%、6人に1人私学受験
今年の入試は、昨年よりもさらに厳しい戦いがかなりの学校において繰り広げられた。ここ数年、公立中学に対する不安感が顕著になり、今年はそれがさらに色濃く出た入試であったといえるだろう。受験者数は昨年の約四万三千三百人に対し、約二%上昇し、約四万五千人程度であったと推測される。一人当たりの平均出願校数も昨年同様の五・五校程度で、延べ人数で二十四万七千五百人となり、史上最大規模の受験となった。受験率は小六卒業生数(二十八万九千六百人・関東一都四県)に対し、中学入試の受験率は一五・五%となり、昨年一五%の受験率がさらに高くなった。六人に一人の小学六年生が受験をする時代に突入したといえる。

児童数減でも受験者増
 今年の入試についての特徴をまとめてみると、次のような特徴が挙げられる。
 児童数は減少。しかし受験者総数は三年連続の増加
 児童数の減少にもかかわらず受験者総数が増加した背景には、昨年公表されたOECD(経済協力開発機構)やIEA(国際教育到達度評価学会)による日本の子供たちの学力低下に関する報告や平成十四年以来の公立校における学習指導上の問題点のほかに、校内暴力やいじめの問題、さらにはフリーター、ニートなどの社会問題があり、ますます私学志向が強まった。今年もまた私立・国立中学校受験を目指す受験生が昨年以上に増え、入試状況が緩和されるどころか一層厳しいものとなった。また、今年は埼玉県に三校、東京都に一校の私立の新設中学校が誕生した。受験チャンスが拡大することになり、受験者総数の増加に一層拍車をかけたものと思われる。
 四教科受験生の拡大傾向
 このところ、二教科・四教科選択校の増加に加え、四教科のみへの変更も目立っている。特に女子受験生の四教科へのシフト替えが猛烈な勢いで行われている。
 今年も、共学校では、開智、春日部共栄、土浦日大、男子校では、芝浦工大、高輪、立教池袋。女子校では、大妻、国府台女子学院、東京女学館、桐光学園女子部が四教科入試へ変更された。さらに、今年新設された東京農大第一や淑徳与野も四教科での実施となった。
 今年新設された東京農大第一は、男女ともにかなりの応募者を集め、同じく今年新設された淑徳与野も四教科生に支持されてかなりの応募者があった。また、今年二教科のみから二教科・四教科選択へ変更した学校もあった。共学校では、青稜、常総学院。女子校では、大妻中野、聖セシリア女子、星美学園、捜真女学校、玉川聖学院、東京女子学園、八雲学園、和洋九段女子など。また、今年新設された大宮開成、浦和実業学園も二教科・四教科選択で実施された。
 一月入試(千葉・埼玉)の増加傾向
 千葉県・埼玉県でも受験生が増加傾向にあり、今年も多くの学校で昨年以上の応募者を集めた。それに加えて、今年は東邦大付属東邦、市川、専修大松戸、栄東など合格者数を絞った学校があり、全般的に一月入試は厳しかったようだ。男子では、一月入試で合格を確保して、強気で二月入試に突入しようとする流れにややブレーキがかかった。
 千葉県・埼玉県のどの地域でも、受験者は増加傾向にある。寮のある学校の東京入試も含めて、一月中の入試回数の増加に伴い、受験期間も延長されて複数校併願できる状況が生まれてきたからだ。つまり、一月中でも難度に段差をつけた併願パターンが組め、入試チャンスも拡大してきた。二月校を本命とする受験生にとっても、ゆとりを持った併願パターンが組み立てられるようになったからだ。

意外に少ない都立一貫校 応募
私学への期待依然強い


 都立中高一貫校の参入に伴う影響
 今年初めての都立中高一貫校入試は、当初はかなりの応募者数になるものと予想され、今年の首都圏の中学入試への影響が懸念されたが、もともと私学志向の強い保護者にとっては、ややブレーキがかかったくらいで、応募者は二千百十三人にとどまった。今年の新設都立一貫校は白〓高校附属中学校一校だったが、来年から両国高校、小石川高校や九段高校を母体とした中高一貫校が誕生する。また、平成二十二年度にかけて北多摩高、都立武蔵高、大泉高、富士高、三鷹高、南多摩高などを母体とした都立中高一貫校が続々と開校する。今後、これらの公立中高一貫校と私立中学校とを併願する受験生も考えられ、来年度以降の入試で大きな影響をもたらすかもしれない。

2回入試で併願者増加

 複数回入試へ変更の影響
 今年度は学習院、立教池袋、学習院女子など、従来は一回のみの入試を行ってきた著名校が二回入試に切り替えた。二月二日に新設された学習院では、四百九十八人の応募者があり、従来から実施されていた三日の入試と合計すると千二百九十四人となり、昨年の応募者を三百人も上回った。二月一日の併願校では、慶應普通部、早稲田、早稲田実業などが多かったようだが、二月三日の併願校では、やはり学習院中等科がかなりの割合を占めていたようだ。二月一日の併願校は、やはり、学習院女子が多かった模様だが、ほかに女子学院、雙葉、早稲田実業、桜蔭などの難関校の併願者も多かったようだ。

堅実な実績と指導
基本姿勢アピールが奏効


 どうしても私学という志向も
 このところ、私学の間でも格差が生じ、いわゆる二極化が進み、大学の合格実績が堅調な学校や面倒見の良い学校、学校説明会などで学校の基本的な姿勢が十分にアピールできた学校などに応募者が集中する傾向にあったが、今年は、学力低下への危機感が強かったためか、全体的に応募者の増加傾向が見られた。
 一見安全志向にも見え、学校選択が多様化したともとれるが、それは、どうしても私学でなければという意気込みの表れともいえる。総じて言えば、平成十七年入試は、学力低下の不安が強い学年だっただけに、どうしても私学へという保護者の強い意志が感じられた入試だったといえる。
 また、ここ二、三年の進学実績が良好である学校に人気が集まる傾向も見られた。開成、栄光学園、桐朋、巣鴨、逗子開成など。やはり、男子校では、学校選択の上で、大学合格実績が女子校以上に重要なファクターとなっている。
 また、難度はそれほど高くはない学校でも、堅実な大学合格実績や面倒見の良さが評価されて、昨年よりも応募者を増やした学校も目についた。
 共学校では、国士舘、実践学園、淑徳、順天、城西大附属城西、聖徳学園、多摩大目黒、帝京八王子、東京成徳大学、明星、立正など。男子校では、足立学園、京北、佼成学園、明法、安田学園など。また、女子では、二月一日校、二日校に関しても大学の合格実績が堅調な学校に志望者が集中する傾向がより顕著になっている。二月二日校を見てみると、豊島岡女子学園、鴎友学園女子、光塩女子学院、鎌倉女学院、吉祥女子、湘南白百合学園、大妻、大妻多摩、江戸川女子、桐光学園、神奈川大附属、共立女子、捜真女学校、富士見、湘南学園、山脇学園、日大第三、十文字、和洋九段女子、武蔵野女子学院、神奈川学園などの学校が一昨年の応募者を上回った。


年々、私立中学入試の受験率は増加傾向

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