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記事2005年2月3日 1967号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
高等教育の将来像答申
多様化し機能分化
幼児教育の在り方でも答申
中央教育審議会(鳥居泰彦会長=日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、一月二十六日、東京都内で第四十六回総会を開き、今後、十年から十五年先までの高等教育のグランドデザインとその実現に必要な施策を盛り込んだ答申「我が国の高等教育の将来像」と、これからの幼児教育のあり方などを示した答申「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について――子どもの最善の利益のために幼児教育を考える――」をとりまとめた。両答申は一月二十八日に、中山成彬・文部科学大臣に提出された。

 答申「我が国の高等教育の将来像」は、二十一世紀を「知識基盤社会」の時代と位置づけ、高等教育は、個人の人格形成上も国家戦略上も極めて重要とし、国は将来にわたって高等教育に責任を負うべきだとしている。
 その上で「高等教育計画の策定と各種規制」の時代から「将来像の提示と政策誘導」の時代に移行すること、国の今後の役割としては、高等教育の在るべき姿や方向性等の提示、制度的枠組みの設定・修正、質の保証システムの整備、高等教育機関・社会・学習者に対する各種の情報提供、財政支援等が中心になるとしている。
 将来像の主な内容としては、高等教育の量的側面での需要はほぼ充足している中で、分野や水準の面においても、だれもがいつでも自らの選択で学ぶことのできる高等教育の整備(ユニバーサル・アクセスの実現)が重要な課題とし、経営状況の悪化した機関への対応策の検討の必要性も指摘している。
 また新時代の高等教育は、全体として多様化して学習者のさまざまな需要に的確に対応するため、学校種ごとの役割・機能を踏まえた教育・研究の展開、各学校ごとの個性・特色を一層明確化する方向を示している。
 各大学は自らの選択により、世界的研究・教育拠点や総合的教養教育など緩やかに機能的に分化していくとしている。
 高等教育機関の在り方に関しては公共的役割・社会的責任を担うこと、学位を与える課程中心の考え方に再整理すること、大学の教員組織の在り方の見直しを行うことを求めている。
 そうした高等教育の発展を支える財政的支援については、国内的・国際的競争環境の中で、各高等教育機関が持つ多様な機能に応じた形に移行すべきだとしている。
 その上で早急に取り組むべき重点施策として世界トップクラスの大学院の形成、多元的できめ細かなファンディング・システムの構築などを提言している。
 一方、幼児教育の在り方に関する答申では、(1)すべての幼児に対する幼児教育の機会の提供(2)発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実(3)幼稚園教員の資質向上及び専門性の向上(4)幼稚園等施設による家庭や地域社会の教育力の再生・向上(5)生涯学習振興策や働き方の見直し等による家庭や地域社会の教育力の再生・向上(6)地域の人材等の積極的活用(7)幼児教育を地域で支える基盤等の充実・強化――を七つの重点施策としている。
 また平成十七年度から試行、十八年度から本格実施する幼稚園と保育所を一体的に実施する新しい「総合施設」については、親の就労事情等に関係なく、幼児教育・保育の機会を与えることを基本に、子育て家庭への相談、助言、親子の交流の場を提供することが重要としている。
 対象者や設置主体などの制度設計の面ではできる限り弾力的なものとしているが、将来的に総合施設を文部科学省、厚生労働省のどちらが所管するかなどは示していない。今後、両省間で協議していくことになる。

高等教育と社会との関係
教員組織など修正案承認

【大学分科会】

 中央教育審議会大学分科会(佐々木毅分科会長=東京大学総長)は一月二十四日、都内で二年間の任期の最後となる第四十七回会合を開き、一月二十六日の総会に提出する「我が国の高等教育の将来像」の答申について、最終確認を行った。
 一月十二日の会合で出された答申案から変更されたのは、主に第三章と第五章。第三章の「新時代における高等教育機関の在り方」には、助教授を准教授とし、現在の助手を職務内容の違いによって助教と助手に分けるのが適当とするなど、教員組織の在り方検討委員会での審議結果が書き込まれた。
 また、第四章までで示した高等教育の将来像を実現するために必要な施策を示す第五章「『高等教育の将来像』に向けて取り組むべき施策」は、前回の会合でその位置づけの再確認が行われ、それに沿った表現に修正された。提示された修正案は異議なく了承され、二十六日の総会での審議を経て、その後答申される予定。
 この日の大学分科会は、第二期中教審としての最後の会合となったため、審議終了後、佐々木分科会長、石川明高等教育局長、鳥居泰彦会長が、それぞれあいさつした。佐々木分科会長は高等教育の将来像の審議について「審議しているさなかにも、さまざまな改革が進行し、現実を整理しながら、同時に将来のことを考えるという難しい審議だった」と感想を述べたうえで「知識基盤社会における高等教育と社会の関係に、より多くの関心を呼び、議論を喚起するための答申となるだろう」と話した。
 石川局長は、二年間で開催された会合が、分科会三十三回、部会七十回と、異例の多さであることを示し、「国立大学の法人化、第三者評価の義務化など、高等教育の激動期・転換期の中で、意義の大きな審議をしていただいた」と感謝の言葉を述べた。
 鳥居会長は「第一期の教養教育や専門職大学院などについての答申に続き、第二期では高等教育の将来像。この四年の足跡は大きい」と振り返り、「三つのワーキンググループに分かれて審議を行っている大学院部会は、今後、日本の大学院の抜本的改革へ導く可能性がある」と示唆した。


第二期中教審で最後となった第46回総会

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