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記事2005年10月3日 1995号 (1面) 
株式会社による学校設置の全国展開で、構造改革評価委と文科省が意見交換
政府の構造改革特区推進室は、九月二十七日、評価委員会教育部会を、同三十日に親組織である評価委員会を開き、文部科学省の樋口修資・政策評価審議官や片山純一・私学行政課長らから、平成十七年度下半期に評価を行う「学校設置会社による学校設置事業」や「校地・校舎の自己所有を要しない大学等設置事業」「構造改革特別区域研究開発学校設置事業」など、教育分野では六つの特例措置について同省の今後の調査計画やこれまでの検討状況などを聴取した。調査方法や項目、基本的考え方などについて評価委員会から厳しい意見が出された。

評価委、解禁迫る
文科省は実態調査へ 年明けに結論


 このうちいわゆる構造改革特区における株式会社による学校設置事業に関して文部科学省は、十月から設置会社等に対し書面調査、実地調査等を開始、十一月に調査結果を整理・分析、十二月に評価委員会へ報告するスケジュールを説明した。同省が実施を予定している調査は、学校経営面の観点からは、株式会社としての利潤の追求と、学校としての公共性、継続性・安定性との両立に関して収容定員の充足状況や一年間の収支決算、学校部門収支の中期的見通し、学校部門と非学校部門の会計区分、学校部門が不採算・低収益になった場合の株主の意向、経営状況に関する情報公開などを調査する。
 教育研究面からは、教育課程の編成・実施状況や教員の配置・勤務条件、収益に結びにくい分野(問題行動への対応や道徳・特別活動等)の実施状況、自己点検・評価の体制整備・実施状況などを調査する。そのほか経営と教学のバランス、特区自治体におけるセーフティネットの措置内容など関係事務の実施状況も調べる計画だ。
 評価委員会には学校法人と学校設置会社の資産状況、校地校舎に対する担保設定等の状況も同省から報告された。

総負債比率や流動資産比率
設置会社と学法で相違


 それによると、学校法人の総負債比率(総資産に占める総負債の比率)は、大学法人で一六・一%、短大法人で一六・三%、高校法人で一七・二%といずれも一〇%台にとどまった。一方、十六年度中に学校を開設した四つの学校設置会社については、総負債比率が八三・七%で、両者間に顕著な違いが見られた。
 また流動資産比率については、学校設置会社が五六・六%だったのに対し学校法人(大学法人一六・九%、短大法人一七・六%、高校法人一三・三%)は一〇%台と、この点でも際立った違いが分かった。
 校地校舎の担保設定等の状況に関しては、土地・建物いずれかについて担保設定がされている学校法人(大学・短大法人)は六七・一%だった。日本私立学校振興・共済事業団に融資相談を行った学校法人からの抽出調査(大学・短大高校法人)では、校地全体に占める担保設定の土地の面積は平均で二〇・二%、建物では三六・四%で、借用している面積は、大学・短大法人の場合、土地で一四・四%、建物で一・三%だった。
 高校法人の場合は、担保設定面積は、土地で全体の一八・七%、建物で八・五%、借用の面積は土地で三・五%、建物の借用は見られなかった。

評価委員会も独自に調査実施

 こうした同省の調査結果の報告に評価委員会委員からは、「利便性が高い場所に学校をつくるには借用の方が合理的」「借用の方がむしろ(財政状況は)健全」「固定資産を抱えることは足かせになる」「担保設定も賃貸も違いはない。世の中の常識からかけ離れている」などの厳しい意見が相次いだ。
 また評価委員会の八代尚宏委員長(国際基督教大学教授)も「(株式会社立学校と学校法人立学校の)どちらが継続性・安定性を担保できるのか学校法人にも株式会社立学校に行うものと同様な調査を行い比較すべきだ」「土地を持っていれば安全という考え方は古い。評価委員会に言われる前に時価ベースで資産状況を公開すべきだ」などと注文をつけた。
 これに対して文部科学省は両者は設置形態が違うことから単純に比較できないことなどを説明した。
 今後、評価委員会も文部科学省とは別に調査を行い、同省の調査結果等と合わせ検討、来年一月下旬に株式会社立学校の、設置を全国的に解禁するか、さらに特区での同事業の弊害を検証するかなど小泉総理への意見をとりまとめる。
 二月には全国化する特例措置が政府で正式に決定される。

構造改革特区による株式会社立学校一覧
(既に認定された構造改革特区計画によるもの)
【T 開校しているもの】        
株式会社東京リーガルマインド
LEC東京リーガルマインド大学
○総合キャリア学部 総合キャリア学科
(16年4月開校:東京都千代田区、大阪府大阪市)
・学部のキャンパス拡張(通信制)
(17年4月開校:札幌市、千葉市、新宿区、横浜市、静岡市、神戸市、岡山市、広島市、松山市、福岡市)※福岡市の本科生受入れは18年4月予定
(18年4月開校予定:宇都宮市、北九州市)
○高度専門職研究科 会計専門職専攻(専門職大学院)
(17年4月開校:東京都千代田区)
▼デジタルハリウッド株式会社
デジタルハリウッド大学(17年4月名称変更(大学院大学→大学))
○デジタルコンテンツ研究科 デジタルコンテンツ専攻
(16年4月開校:東京都千代田区)
・サテライトキャンパスの開設(17年4月開校:大阪府大阪市)
○デジタルコミュケーション学部 デジタルコンテンツ学科
(17年4月開校:東京都千代田区)
▼株式会社朝日学園
朝日塾中学校(16年4月開校:岡山県岡山市)
▼株式会社アットマーク・ラーニング
アットマーク国際高等学校(広域通信制)(16年9月開校:石川県白山市)
▼株式会社ハーモニック
ウィザス高等学校(広域通信制)(17年4月開校:茨城県高萩市)
▼株式会社麗光学園
代々木高等学校(通信制)(17年4月開校:三重県志摩市)
▼株式会社ビジネス・ブレークスルー
ビジネス・ブレークスルー大学院大学
○経営学研究科 経営管理専攻(専門職大学院)(通信制)
(17年4月開校:東京都千代田区)
▼株式会社ふりーだむ
くまもと清陵高等学校(広域通信制)(17年4月開校:熊本県南阿蘇村)
▼株式会社清風学園
勇志国際高等学校(広域通信制)(17年4月開校:熊本県御所浦町)
▼株式会社ウィッツ
ウィッツ青山学園高等学校(通信制)(17年9月開校:三重県伊賀市)
【U 設置準備中のもの】        
▼株式会社ワオ・コーポレーション
WAO大学院大学(専門職大学院)
(18年4月開校予定:東京都杉並区)
▼株式会社日本教育工房(広域通信制高等学校)
(18年4月開校予定:北海道清水町)
▼株式会社コーチング・スタッフ(広域通信制高等学校)
あぶくま学園高等学校(18年4月開校予定:福島県川内村)
▼株式会社エデュコジャパン(広域通信制高等学校)
日々輝学園高等学校(18年4月開校予定:栃木県塩谷町)
▼株式会社愛郷舎(広域通信制高等学校)
創学舎高等学校(仮称)(18年4月開校予定:埼玉県深谷市)
▼伸学会株式会社(広域通信制高等学校)
(17年10月開校予定:長野県上田市)
▼TAC株式会社(専門職大学院(会計))
TAC大学院大学(18年4月開校予定:東京都千代田区、大阪府大阪市)
▼株式会社グロービス(専門職大学院(MBA))
グロービス経営大学院大学
(18年4月開校予定:東京都千代田区、大阪府大阪市)
▼株式会社LCA―T(専門職大学院(MBA)
LCA大学院大学(18年4月開校予定:大阪府大阪市)
▼株式会社栄光(専門職大学院)(教員養成)
日本教育大学院大学(18年4月開校予定:東京都千代田区)
▼株式会社朝日学園
朝日塾高等学校(19年4月開校予定:岡山県岡山市)
▼株式会社還元溶融技術研究所
 日本新エネルギー環境大学(宮城県大郷町、高知県北川村)
▼株式会社栄光(専門職大学院(翻訳)
日本翻訳大学院大学(東京都千代田区)

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