こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2005年10月23日号二ュース >> VIEW

記事2005年10月23日 1997号 (3面) 
学生の就職支援に力注ぐ短期大学 (4)
大阪女学院短期大学
学ぶこと働くこと科目設置
大阪女学院短期大学(関根秀和学長、大阪市中央区)は、開学以来、毎年就職内定率が一〇〇%だという。設置学科は英語科と英語専攻科のみ、優れた英語教育で知られるが、進路支援では、まず動機付けが大切だとして、七年前から「学ぶこと、働くこと」という科目を設置し、学ぶことの意味や働くことの意味を考えさせる授業を開講している。

開学以来 就職内定率一〇〇%
設置学科は英語科と英語専攻科


 例えば、平成十六年度の授業は以下のような題で開講された。「学ぶということ」としては、「国際的均衡関係日本の置かれている状況」「同日本に求められている状況」「海外から見た日本の学生開発途上国から見れば」「五つのミル(視点の転換)」「疑いと探究」が開講され、「働くということ」では「ジェンダーの視点」「可能性の追求」が開講された。このほか、「大阪女学院史」「フォーカシング 女性」「選択」というテーマも開講された。十二月には「まとめ」の授業を行い、学生にはレジュメの提出を課し、「レジュメのフィードバック」を行い、翌一月に「個別指導」が行われた。
 この授業における学習項目・達成目標としては「自己存在の意味を理解する」「問題意識と批判精神を養う」「差別や人権を損なう社会構造について認識する」「性差別に気づく」「新しい男女関係・男女共生社会の実現を考え、行動する」「自分の考えや感じていることを文章で表現する」等。「学ぶこと、働くこと」は現在、授業科目群「自己の確立群」の中に置かれ、一年次二単位の必修科目となっている。
 「自己の確立群」の中には「自己の発見」「身体への気づき」「キリスト教学」「大学と自己形成」などの科目も開講され、「学ぶこと、働くこと」とあわせて、学ぶこと・働くこと・生きることを、自分の意思で始めることができるよう、多彩な講座が置かれている。並行して、就職に関する窓口となるキャリアガイダンスセンターでは、一年次の秋からキャリアガイダンスを開催する。全十二回のガイダンスでは、就職活動体験座談会や新聞の読み方、エントリーについて、応募方法、企業研究、適性検査、面接対策などを行い、このほか個人面談や面接ロールプレイもスケジュールに組み込まれている。
 卒業生のここ三年の就職実績を見ると、「資本金十億円以上または従業員千人以上」の巨大・大企業への就職内定率は六〇%強である。業種別では、金融業が約一三%、卸・小売業が約二三%、製造業約二二%、サービス業・その他約三三%、運輸・通信業約八%、公務員約一%などとなっている。
 求人者総数も、卒業者数約二百人(進学者も含む)に対して千四百人以上と非常に多い。求人数が多いだけでなく、同一企業から長年にわたって継続的に採用される例もあり、企業等からの評価の高さの表れといえよう。学校推薦を受けられる企業もあるが、学生はこれまでの学習の中で推薦に頼ることなく、その企業の中で自分はどんな仕事をするのか、そこで自分を生かしていくことができるのかを見ながら、就職先を選ぶ傾向が最近は特に強く、企業から選ばれると同時に学生も企業を選択しているとのことである。

キャリアガイダンスセンター
希望に即した新規企業開拓


 こうした学生のために、キャリアガイダンスセンターでは、学生の主体性を尊重しながら、希望に即した新規企業を開拓すると同時に、求人を申し込んできた企業が学生にとって働きがいのあるところかどうかや業務そのものに評価基準を置いている。逆に、大学から企業に要望を提案するなど、女性が働くことに対する理解を深める努力をしている。
 また、学生の企業選びの参考のために、できるだけ客観的かつ総合的な同短大独自の「企業評価」を行っている。今年は卒業生を採用している中堅企業六社にヒアリング調査も実施。これらは、就職指導の際にフィードバックしている。
 卒業生に対するアンケート調査では、九七・七%の人が大阪女学院短大を「卒業するのは難しい」と言う。すべての授業で、レポート提出やプレゼンテーションなどが課され、宿題も非常に多く、学生は課題の作成に追われるからだ。ちなみに図書館の年間平均貸し出し冊数は同短大生一人当たり五〇・一冊と、短大平均七・一冊、四大平均八・一冊に比べて群を抜いている。また、授業への出欠も厳しく、授業に三分の一以上欠席すると、当該学科目の受験資格を失う。
 しかし、「卒業が難しい」という回答は大学にとってうれしい評価と思われる。そこに、大学教育への満足感が感じられるからだ。社会人となった卒業生が集まるとよく出る言葉の一つが、「仕事がきついといっても短大時代に比べれば、どうってことないよね」。「ほんとうに死にそうなぐらい勉強した二年間だった。いい成績をとるだけが目標なら、人のモチベーションはそう続かない。社会の中で、何をしたいか、何ができるか、そのために新しく生まれかわるための大阪女学院短期大学の二年間だった」と言う。企業の中で中堅となったOGは、「女性が自立することの大切さを学んでいたことが苦境を打開する原動力となった」「気がつくと他の業務にも挑戦したいと考えている自分がいる。『失敗を恐れて立ち止まるな。変化をチャンスととらえよ』、大阪女学院のこの教えが常に私のチャレンジ精神を刺激する」と言う。



記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞