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記事2005年10月13日 1996号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
教職実践演習を新設
教員として最小限必要な能力
教職課程の履修を通じ確認
【教員養成部会教員免許制度WG】
 教員の資質向上、免許更新制について議論している中央教育審議会教員養成部会の教員免許制度ワーキンググループ(主査=野村新・大分大学名誉教授)は十月七日、都内で会合を開き、教員としての資質能力を確認するための科目「教職実践演習(仮称)」を、教職課程に新設する方針を固めた。課程認定大学で、教員として最小限必要な資質能力の全体について教職課程の履修を通じて確実に身に付けさせ、確認することが目的だ。
 新たな科目である教育実践演習は一単位を予定しており、例えば「総合実践に関する科目」などとして最終年次の教職課程のほとんどを履修した段階に置いて実施する。
 内容は教員として求められる(1)使命感や責任感、教育的愛情等(2)社会性や対人関係能力(3)幼児児童生徒理解(4)教科等の指導力に関する事項を含む。
 また最新の教育動向を踏まえ「教職の意義や教員の役割などの再確認」「教員の具体的職務内容や学校現場の実態などの理解」「教科指導や生徒指導などに関する実践的指導力の基礎の定着」なども検討する。
 指導方法は講義形式を極力避け、指導案の作成や模擬授業、場面指導、事例研究、グループ討議、体験活動などの演習を想定している。
 この新たな科目の設置に伴い、既存の「教職の意義等に関する科目(二単位)」を削るとした。会合では「(教員の適格性を判定する)教職課程委員会をつくってやっていくというのではなかったか。なぜ新設しなければならないのか」「教職の意義等に関する科目の二単位は必要なもの。削らずにプラスしたらどうか」などの意見があった。

義務教育国庫負担、一般財源化
意見は平行線、12日、素案提示


【義務教育特別部会】 
 中央教育審議会義務教育特別部会(部会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)は十月三日、都内で会合を開き、義務教育費国庫負担制度の在り方について討議した。負担金の堅持を主張する多くの委員と一般財源化を求める地方代表委員の意見は平行線をたどり、結論には至らなかった。
 今月十二日の会合で答申素案が出され今月中の答申を予定しているが、いずれの結論でも反発は必至だ。
 会合で苅谷剛彦・東京大学大学院教育学研究科教授は、費用負担に関する議論の資料を提出。「中学校八千五百億円の一般財源化における合理性は何か」「市町村や学校の権限拡大と、義務教育費国庫負担金の一般財源化は別の問題ではないか」「分権推進と、国の義務教育費確保は矛盾しないのではないか」などと指摘した。
 これに対し石井正弘・岡山県知事は、平成十六年十一月の政府・与党合意である「三位一体の改革」の中で「費用負担についての地方案を活かす方策を検討」とする文言になぞり、国庫負担金の一般財源化を強調、苅谷教授を「歯車を逆に戻すような意見」とけん制した。
 さらに山本文男・福岡県添田町長は税源移譲対象の中学校分、八千五百億円について「(移譲された)八千五百億が流れ込んでも、(何に使うか)分からなくなることはない。教育は最重要である」と訴えたが、「生活保護にいくかもしれない」と本音ものぞかせた。
 部会では義務教育費国庫負担制度の堅持派委員が多数を占めている。他方で山本町長は「地方案」として資料を提出する方針で答申に盛り込むことを主張する構えだ。
 小泉首相も九月末、文部科学省幹部に「三位一体改革を進めるために、地方の意見を真摯(しんし)に受け止め審議を進めてほしい」と要請していることから、いずれの答申でも紛糾が予想される。

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