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記事2005年1月3日 1965号 (9面) 
第1回JASRAC著作権ゼミナール
楽しく学んで知る著作権
【主催】日本音楽著作権協会
【後援】文化庁、日本私立中高校連合会 【協力】東横学園中学・高校、全私学新聞
 全国の私立中学校・高等学校の生徒・教職員・保護者を対象に、十二月四日午後、東横学園中学校・高等学校において「第一回JASRAC著作権ゼミナール」がJASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)の主催で開催された。著作権を身近なものとして伝えるために、第一部ではじめにきよし≠ウんのトーク&ミニライブ、第二部は生徒と教職員・保護者が二つの会場に分かれ、クイズ形式の著作権講座が開かれた。当日は同校の生徒ら約五百人が参加、同時にその模様がインターネットでストリーミング配信され、参加申し込みのあった全国の私立中学高校六十九校の約二万人の生徒・教職員が視聴した。この著作権ゼミナールは、後援が文化庁および日本私立中学高等学校連合会、協力が東横学園中学校・高等学校(矢島了子校長、東京・世田谷区)と全私学新聞運営委員会。

学校現場で著作権教育必要
つんく♂さんも呼びかけ


 この著作権ゼミナールは、学校への情報教育の導入によって、一段と著作権等の知的財産や情報モラルの重要性が増してきていることから、JASRACが、著作権の重要性や必要性を体験してもらいたいと開催したもので、三年間継続して開催する予定。今後、この成果をまとめて学校現場での著作権教育のためのカリキュラムや教材への活用も考えている。当日は午後一時半から開催されたが、それに先立ち、JASRAC文化事業委員で作詞家のいではくさんがあいさつ。「日本は資源のない国、知的財産立国を目指して世界に出ていかなければならない。日本の将来を担っているみなさんに、著作権の大切さをしっかり身につけていただきたい」と話した。続いて矢島校長が「平成十六年一月の著作権法の改正に伴い、教育活動においても、知的財産の保護や著作権についての正しい理解と運用について、基本的な知識やルールの教育が急務とされている。きょうはしっかりと勉強したい」と述べた。

【第1部 トーク&ライブ】
 いよいよトーク&ライブが始まり、アコースティックデュオはじめにきよし≠ウん(サキタハヂメさんと新谷キヨシさん)が登場。会場に歓声が上がった。ハヂメさんはギターとのこぎりで、キヨシさんはピアニカとピアノを使い、「つめと太陽」「サニーサイドステップ」「フラワニア」「埴生の宿」「やさしい気持ちで」「満天の星を見上げながら」「スプリングスプリング」「今夜はカレー」「オリーブグリーン」といった曲を次々に演奏した。生の音楽の素晴らしさを体験してもらい、著作権の重要性を身近なものに感じてもらうトーク&ライブが行われた。のこぎりをバイオリンの弓で鳴らして演奏した時は、横笛のような高音の音色の美しさに、会場から大きな拍手がおくられた。軽妙なトークに笑いも起こり、楽しいライブとなった。終わりにインターネットを介して大画面で、音楽家・総合プロデューサーのつんく♂さんが出演すると、生徒たちは大喜び。つんく♂さんはミュージシャンになったいきさつや音楽CDの違法コピーについての質問に対して分かりやすく回答し、第一部が終了した。

音楽CDの作成過程を説明

【第2部 著作権講座】
 続いて行われた第二部の著作権講座は、生徒と教職員らとは別々の会場となり、生徒たちは本会場(体育館)で「音楽界講座」「音楽著作権講座」が、教職員と保護者は第二会場(短大教室)で「学校現場での音楽著作権講座1」「学校現場での音楽著作権講座2」がクイズ形式で実施され、クイズに答えながら著作権の必要性や重要性について分かりやすく学んだ。
 「音楽界講座」
 本会場で行われた生徒たち対象の「音楽界講座」では著作権博士として、キャピタルヴィレッジ代表取締役の荒木伸泰氏が、販売されている音楽CDが作成される過程や音楽コンサートが開催されるまでについて現場の話を楽しく説明した。音楽CDを作るときは、アーティストや作詞家・作曲家などのほか、レコード会社やスタジオで働く人、CDジャケットをデザインする人など、さまざまな人がかかわっていることや、音楽CDにはそういう人たちの仕事の料金や著作権料等も含まれており、CD作成にかかわっている人たちやミュージシャンはそのお金で生活していると語った。音楽コンサートも多くのスタッフが携わり、一年以上前から準備して行われているものもあると話した。
 「音楽著作権講座」
 続いて行われた「音楽著作権講座」は、著作権について楽しく学ぼうとクイズ形式の「音楽著作権博士ジュニア決定戦」がトーナメント方式で行われた。トーナメント戦に出場したのは、会場から抽選で選ばれた十六人の生徒たち。著作権法に定められている著作権に関するさまざまなことが、三択式問題や○×式問題として出題され、予選と決勝が行われた。生徒たちに正しい理解を深めるために、答えを発表したあと、著作権博士としてJASRAC広報部の長江庸子さんが解説した。

クイズで著作権の重要性

 「音楽著作権博士ジュニア決定戦」の問題と答え、解説は以下の通り。

 問題=「レンタルCDを借りてきてMDにコピーしてウォークマンで聴くようにした」
 答え=自分のMDにコピーして聴くのは許されている。
 解説=著作物は著作権を持っている人に許諾を得て使うのが基本原則。ただし、学校の授業で使う場合や、自分が個人的に楽しむためにコピーして使う場合に例外的に許諾を得なくてよいケースがある。ただし、多くの友人にコピーしてあげるなどは許されていない。

 問題=「家族で外国に行き海賊版のCDを買って持ち帰り、コピーして友達にプレゼントした」
 答え=海賊版であることを知りながら、それを買ったり、コピーしたりすること自体が問題である。
 解説=音楽CDには、作詞家、作曲家の権利と、アーティストや音源をつくったレコード会社の権利があり、それぞれがそれを収入源としている。海賊版を買うことやそれをコピーして友人にプレゼントすることにより、そういう人たちは権利を侵され、収入がなくなることになる。その結果、新しい音楽が生まれなくなり、創造のサイクルが壊れてしまう。海賊版は持たない、持ち込まない、作らないこと。
 
 問題=「好きなアーティストのCDを自分のホームページにアップした」
 答え=アップするには、レコード会社とJASRACなど著作権者の事前の承諾が必要。
 解説=個人のホームぺージであっても、不特定多数の人がアクセスできる。この場合、作詞家、作曲家などの著作権者の権利を預っているJASRACとレコード会社に事前の許諾を得る必要がある。

 問題=「複数の市販のCDを一枚のCD―Rに編集して体育祭で使用した」
 答え=○
 解説=学校の授業で使う場合は、必要と認められる限度内で著作権者の許諾を得なくてもよいという例外規定が定められている。体育祭は学校の授業の一環にあたると考えられ、この場合は使用してよい。ただし、体育祭が終われば、そのCD―Rは処分するのが望ましい。

HPにアップでも事前に許可が必要

 問題=「部活のデジカメ写真とアイドルの写真、市販の音楽CDからコピーした曲を学校のホームページにアップした」
 答え=×
 解説=学校のホームぺージといっても多くの人がアクセスできるわけで、やはり事前にレコード会社とJASRACの許可が必要。部活の写真は、先生や仲間の顔が写っている場合、本人の許可をとること。アイドルの写真は経済的価値があるため、所属事務所等に許可を得る必要がある。音楽にとどまらず、小説、マンガのキャラクターも同じで、権利者の許可が必要。

 問題=「楽譜を借りてきて一部コピーし、部員全員に配付した」
 答え=×
 解説=授業であっても部活動であっても、教材用の楽譜として市販されたものは、全員が購入すること。

 問題=「放送部が校内放送で、最近のヒット曲をCDからCD―Rに編集して流した」
 答え=×
 解説=体育祭は授業の一環であるためよいが、放送部の活動は授業のカリキュラムとは考えられていないため、JASRACとレコード会社に許可をとること。編集せず、市販のCDの音楽をそのまま放送で流せば問題はない。

 前述の問題をクリアしながら決勝戦に勝ち残り「音楽著作権博士ジュニア」となったのは、上岡英美子さん(中二)と原里奈さん(高二)。上岡さんと原さんには、認定証と賞品のほかに、つんく♂さんと、はじめにきよし≠ウんのサイン入り色紙が贈られた。

【学校現場で直面する音楽著作権問題】

著作権には財産権と人格権
コピーの範囲や引用にも注意


 「学校現場での音楽著作権講座1・2」
 教職員・保護者対象の「学校現場での音楽著作権講座1・2」もクイズ形式で実施された。同様に「音楽著作権博士シニア決定戦」も行われ、回答とその集計は、携帯電話でインターネット上のウェブページにアクセスして行われた(MILS)。こちらは、全問正解の東横学園中学校・高等学校の忍頂寺恭子教諭と跡見学園中学校・高等学校の土岐康裕教諭が「音楽著作権博士シニア」に認定された。
 出題されたのは、学校現場で直面する問題。教職員は教育現場で著作権の問題に直面していることから、著作権博士のJASRAC広報部の石川惠美さんが解説した。これに対し参加教員から質問も出て、細かな点で判断に迷うなど教育現場が混乱している様子がうかがわれた。解説や質問の答えなどをまとめ、概要を紹介する。
 〔二つの著作権〕
 著作権には二つあり、一つは財産権としての著作権である。これは著作者が使用料を請求する権利を擁するもので、他人に譲渡することもできる。もう一つは著作者人格権で、著作者の気持ちや考えを尊重すること、また著作者の名誉が傷つけられないよう保護する権利である。著作者人格権は他人に譲渡することはできない。
 〔コピーの範囲〕
 学校の授業で使う場合は、著作権者の許諾をとらなくても一定の範囲(クラスの人数分等)でコピーすることができる(著作権法第三十五条)。ただし、そのテキストを買うことができたり、借りてきたりして代用できるもの、例えば計算ドリルやパソコンのソフトウエアなどをコピーすることは許されていない。
 〔引用〕
 作文やレポートなどに、他人の文章を引用する場合は、引用部分を明確にし、出典を明らかにすること。引用は、報道や批評、研究などのためであること。自分の書いたものが主で引用部分は従であることなど。

楽譜の複写・番組の録画
自由利用の範囲も厳格に

 〔著作権使用料〕
 演奏会などの催し物の場合、著作権は著作者が死亡してから五十年間保護されるため、保護期間の曲または歌の場合は主催者が著作権者もしくはJASRACに許諾申請をする必要がある。
 著作権使用料はその催しが黒字か否かに関係なく、会場の広さと入場料によって決まる。これは学校公演でも同じ。
 ただし、著作権法第三十八条により非営利入場料無料で、出演者報酬も支払わない場合であれば、許諾の必要はない。
 〔ホームページとサンプル音楽〕
 サンプル音楽をフリーウエアとして、自分のホームページに張る場合、そのサンプル音楽が著作権フリーになっているかどうか確認する。基本的に、無料といっても自分のホームページに、他者の著作物をアップロードすることはいっさい認められていない。
 〔楽譜〕
 授業に使う場合にはコピーが認められているが、教材用の楽譜などには、購入して使わなければならない(著作権法三十五条)。
 どうしてもコピーが必要な場合は、JASRACに許諾手続きをし、交付された許諾番号を記載すれば適法に使える。
 定期演奏会や発表会のために練習用として楽譜をコピーする場合でも、自分が購入した楽譜をコピーするのであれば許されている(著作権法三十条)。
 〔学校の芸術鑑賞会〕
 プロの演奏家を招いて鑑賞会を行う場合には、(1)営利を目的とせず、(2)入場無料、(3)出演者への報酬はないという三つの条件のうち(3)に該当しないため手続が必要となる。
 〔放送番組〕
 NHKや民放のテレビ番組を録画して授業に使うことは問題ないが、それをコピーしたり、他人に貸したり、ライブラリーとして保管することはいけない。

インターネットで視聴
1月以降はオン・デマンド配信


 今回の第一回JASRAC著作権ゼミナールは、開催当日もインターネットでストリーミング配信されたが、この映像は、今年一月(日程はホームページで紹介)以降はオン・デマンド配信し、JASRACの著作権ゼミナール・ウェブページから視聴できる。ログインには、学校参加用ログインIDとパスワードが必要。参加申し込みをしていない学校は、今後も申し込みができるので、ウェブで申し込みを行い、参加用のログインIDとパスワードを取得し、ウェブ内の掲示板またはMOVIESをクリックし、表示された入力画面から入力する。トップ画面からの入力では認証されないので注意する。問い合わせはeメール、info@jasrac-semi.jpまで。
 第一回JASRAC著作権ゼミナールホームページアドレス=http://jasrac-semi.jp
 ◇参加申し込み方法=学校別の申し込み用のログインIDとパスワードが必要。昨年十月に各学校に案内状とともに送付済み。不明の場合はメールで問い合わせする。
 info@jasrac-semi.jp
 ※申し込み用と学校参加用のログインIDとパスワードは、セキュリティーの関係で異なっているので注意する。


いではく氏のあいさつ


デュオはじめにきよし≠フ演奏




音楽著作権博士ジュニア決定戦

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