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記事2004年9月3日 1946号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
私学団体などから意見聴取
教育行政の一元化は問題
私学の自主性損う危険性も
【地方教育行政部会】
 中央教育審議会の教育制度分科会・地方教育行政部会は、八月二十三日、第十回会合を開き、地方分権時代における教育委員会のあり方について、全日本私立幼稚園連合会や日本私立中学高等学校連合会などの団体から、意見を聞いた。また、河村建夫文部科学大臣が私案として発表した義務教育の改革案について、事務局から説明があった。
 全国国公立幼稚園長会会長は、同部会の示した論点の整理に賛同を示しながら「教育委員会の事務局に各教育分野の専門家を配置し、体制充実を図る」などの改善策を提示した。全日本私立幼稚園連合会の田中雅道副会長は、制度が教育の中立性確保に有効であることを認めながら「社会変化に対応するには、本来の中立性を担保する分野と、首長部局と機動的に連携を図っていく分野が考えられる」と指摘した。
 全日本中学校長会総務部長は「公教育の使命を果たすには、首長部局から独立した制度は欠かせない」とした上で、「地方分権の進展に伴って、市町村教委の規模の格差が、そのまま教育の質の格差につながらないよう注意が必要」と述べた。
 また、日本私立中学高等学校連合会の久保田宏明常任理事は、今日の私学志向は、各学校の責任のもとに保護者のニーズや期待に応えてきた現れであるとの考えを示し、「知事を通じて教委と連携を図ることに異論はないが、教育行政を財政事情や行政改革のために機械的・事務的一元化することは、私学の自主性・独自性が失われる恐れ、経営に対する干渉・官僚統制の危険性も考えられる」など、私学の立場からの懸念を示した。
 このほか、全国高等学校PTA連合会、全国公民館連合会、全国公立文化施設協会、全国史跡整備市町村協議会などの代表らが意見を述べた後、文部科学省から、河村建夫大臣が私案として発表した義務教育の改革案について説明があった。この改革案は、三位一体の改革でとかく財政的な面からの論議がなされているが、教育的な視点からの改革案も必要だとして出されたもの。現在、大臣の私的懇談会でも話し合われているが、今後、具体的な事柄について、中教審に諮られる可能性もあると説明した。

助教授を准教授に
助手の職務など法改正必要

【教員組織のあり方委】

 中央教育審議会大学分科会の大学の教員組織の在り方に関する検討委員会(座長=安西祐一郎・慶應義塾長)は、八月二十四日、都内で第七回の会合を開き、若手教員のための職について、現在の助教授を准教授とするなど、事務局が示すたたき台をもとに話し合った。
 事務局が示したたたき台では、現在学校教育法上「教授を助ける」とされている助教授を学校教育法上規定しない代わりに、独立して教育研究を行うという職務に相応する新たな位置づけを行い、名称を准教授とする。また、助手については、基本的に教育研究を支援する業務を行う職として位置づけ、現行の助手の職にある者のうち、独立して教育研究を行うことをもっぱらの職務とする者については、その職務に相応する職名・職務を新たに学校教育法上に設ける。さらに、学科目制・講座制に係る規定は廃止するなどとしている。
 これに対し「現在、助手が行っている職務は、多岐にわたっているので、実態に合わせて、助手と新職に分けるのは賛成」といった意見や、「新職を設けるだけでなく、ジョブディスクリプション(職務の内容)やキャリアパスまでを示さないと意味がない」との指摘、「この機会にそれぞれの職務の英文名称も定めてはどうか」という提案もあった。また、日本が先進諸国と比較して、教員の職全体の中で教授の比率が高い反面、若手教員の比率が低いため、各職位について、比率はどうあるべきかなどについても、話し合った。「日本の大学の高齢化を止めるには、年齢構成などまで定めて、新職を設定しないと意味がない」などの意見があった。
 講座制・学科目制に係る規定を廃止するに当たっては、代わりに大学設置基準上、教員組織の編成に当たっての基本的な方向性について規定することが検討される。

薬剤師養成を六年に
大学設置基準の改正を審議

【大学分科会】

 中央教育審議会の大学分科会は、八月十九日、都内で第三十七回の会合を開いた。薬学教育の改善・充実に関するワーキンググループから審議の報告があったほか、高等教育の将来構想について、これまで行ってきた審議の概要を事務局が示し、それについて、さらに詳しく話し合った。
 平成十八年の四月から、薬剤師養成課程の修業年限が六年に延長されるため、収容定員は年限延長の割合と同じく一・五倍に、専任教員数は現行の二倍とするほか、専任教員のうち一定割合は薬剤師の実務経験を持つもので占めることなどを定める、とした大学設置基準等の改正案が示された。
 さらに、人の命を預かる医療人の養成であることから、改正にあわせて薬学教育関係者の間で取り組むべき事項として「薬科大学・薬学部関係者が中心となって、教育の質を検証し、適正な評価を行うための体制を整備する必要がある」など、五つの提言を答申と一体化した形で提出する予定との説明があった。答申に提言を一体化させるというのは初めての試み。「提言では実施をチェックすることができない」との意見もあったが、自助努力への働きかけとして内容は了承され、この案を示して広く一般の意見を求めることとなった。
 高等教育の将来像については、大学が学生を受け入れる際に理系・文系を分けていることを問題視して、「このような現状にあって、大学に入ってから『幅広い教養教育』を行うといっても無理があるし、早い段階から、理系・文系を分けた教育が行われるなど、初等・中等教育も影響を受けていることに言及すべきだ」という意見や、「大学がつぶれる時代になった。大学がつぶれた時の対策について検討を要するとの記述が必要ではないか」との意見、「民間教育事業の役割について『重要性を増していく』との記述があるが、民間の参入を無条件に認めて促すような書き方をするのは早計」など、活発に意見が交わされた。次回の会合は九月三日の予定。

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