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記事2004年9月13日 1947号 (1面) 
補助金廃止、税源移譲された場合の税収試算 文科省私学助成課
国庫補助廃止は私学助成厳しい事態に
大半の県で税源移譲額が国庫補助下回る
都道府県間に大きな不均衡 東京、大阪、福岡など落ち込み大
 文部科学省私学助成課はこのほど、三位一体改革で国庫補助である「私立高等学校等経常費助成費補助金」が廃止、個人住民税により税源移譲された場合、各都道府県が得る税収額を試算した。それによると大半の都道府県では税源移譲額が国庫補助額を下回り、大きく落ち込む県も少なくないことが分かった。地方自治体で税源移譲額の落ち込みを埋めるものとして期待の高い地方交付税に関しては三位一体改革論議の中で早くも抑制を求める意見が出ており、国庫補助が廃止、税源移譲されても私学助成は後退させないとの知事の発言は財源面からみると根拠に乏しく、甘い見通しといえそうだ。(2面に都道府県別比較一覧表)

 試算に当たっては平成十五年度の国庫補助金確定額と個人住民税の平成十三年度確定額を使用した。政府の骨太方針二〇〇四では、税源移譲は所得税から個人住民税への移譲を通じて行うとされている。私学助成課では「私立高等学校等経常費助成費補助金」が十割税源移譲された場合と八割税源移譲された場合を試算した。政府の三位一体改革論議で国庫補助負担金改革の叩き台となっている地方六団体の改革案では、義務教育費国庫負担金(中学校教職員分)等と並んで私立高等学校等経常費助成費補助金が廃止・税源移譲リストに挙げられている。また税源移譲に当たっては義務教育費など義務的経費については十割の税源移譲額を、私学助成など奨励的補助金については八割の税源移譲額を求めている。
 そのため平成十五年度私立高等学校等経常費助成費補助金約九百八十八億円の税源移譲額(八割)は、総額約七百九十億円となる。都道府県別では税源移譲額が国庫補助額を下回る自治体が三十六都道府県と大半を占め、国庫補助額を上回る自治体は十一県だった。
 税源移譲によって最も大きく減額するのは東京都で国庫補助金と比べ約四十億三千万円のマイナス。次いで減額幅の大きいのが大阪府(約二十六億円)、福岡県(約十七億五千万円)、北海道(約十四億九千万円)など。
 福岡県に対する国の私学助成は約四十三億円だから福岡県の場合、税源移譲で約四割がなくなる計算だ。
 このような都道府県間の不均衡は、税収の格差に加え、私学自体の偏在や現在の各都道府県ごとの助成水準に差があることなどによるものだ。

不均衡補てんの交付税も減額の方向で見直し対象

 地方六団体の改革案では廃止を提案しない国庫補助負担金の一類型として、「特定地域の特別の事情により講じられているもの」を挙げているが、今回の試算結果から判断する限り私立高等学校等経常費助成費補助金もその類型に該当するものとして存続すべきものとの意見が出てくる可能性もある。一方、こうした税源移譲に伴う落ち込みや都道府県間の不均衡を、ある程度補てんするのが地方交付税だが、三位一体の改革では地方交付税も減額の方向で見直し対象となっている。三位一体の改革を検討している政府の経済財政諮問会議では八月三十一日、谷垣財務大臣が、「地方交付税の財源保障機能は、歳入と歳出の差額を補てんするので、歳出拡大に対する地方の負担感を希薄化し、国への財政的依存と地方歳出及び交付税の肥大化を招いている」としたうえで、「財源保障機能については、まず地方財政改革における歳出を見直すことを通じて縮小し、将来的には廃止する」ことを要求。また同会議で大きな影響力を持つ民間議員(奥田碩・トヨタ自動車会長や本間正明・大阪大学大学院経済研究科教授ら四人)も同日、「地方財政計画について、国が真に財源保障するべき義務部分≠精査する作業に着手し、地方財政計画は義務部分≠フみを対象とする」とし、私学助成など奨励的補助事業の地方負担分については、地方の自主財源で行い地方交付税の対象としないよう求めている。こうしたことから考えると、一般財源や都道府県独自の税収では現状の私学助成水準を維持するのは極めて難しいといえる。また地方六団体の国庫補助負担金改革案では、文教・科学振興関連や公共事業関連が大きく削られる半面、今後支出が膨らむと予想される社会保障関係費は大半が温存されている。また子ども関連の国庫補助負担金が数多く廃止され、高齢者関連の国庫補助金が多く廃止リストから外されているのも特徴の一つだ。

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