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記事2004年9月13日 1947号 (5面) 
短期大学パイオニア (10) ―― 宮崎女子短期大学
2000年FD宣言を発表
保育科、人間文化学科、初等教育科、音楽科と2つの専攻科
入学者全員に満足感与える教育
全学的にFD活動

 
宮崎女子短期大学(大坪孝雄学長)は平成十年から「入学者全てに満足感を与える教育で日本一をめざそう」という趣旨の「二〇〇〇年FD宣言」を発表して学内外に公開、FD活動を全学的に進めている。
 同短大は昭和四十年に保育科を設置し宮崎県内初の短期大学として発足して以来、学科の増設や改組を重ねて、現在は保育科、人間文化学科(文化ビジネス・国語国文・英語コミュニケーションの三コース制)、初等教育科、音楽科の四学科と専攻科福祉・音楽療法の二専攻を擁する学園に発展、「礼節と勤労」を重んじる学風によって「就職の宮崎女子短大」と評価される就職実績を挙げている。
 教育サービス日本一をめざすFD活動は、自己点検評価の一環として平成十年七月に行った授業改善のための教員研修会で打ち出され、この研修会の実行委員会が継続的な活動を模索することになり、学長の任命によってFD推進委員会に生まれ変わった。
 当初は自発性を重視したボランティア的サークル活動の色が濃く、あまり成果があがらなかったが、同年九月の拡大教授会で全員参加のFD活動方針が決定された。平成十二年度からは学生が卒業時に「ここに入って良かった」と思う入学満足度九〇%を数値目標として設定した。
 平成十二年にはこの入学満足度は七九・七%だったが、平成十五年には八五・六%まで上がって目標達成への期待が現実感をもって語られるようになった。
 全学FD活動の具体的な取り組みは次のように行われている。
 (1)FD月目標=毎月初めにFD推進委員会からその月の実践目標が示される。
 目標は二種類あって、学生とのコミュニケーション面では四月には「学生の名前百人覚えよう」、五月には「学生百人と話そう」、授業における目標としては四月には「教室ルールを確立しよう」、五月には「学生の良いところをほめよう」といった具合。
 その手助けとしてFD推進委員会は毎年新学期に全学生の氏名入りグループ写真を撮影し、教員に提供している。

FDミーティング 学内掲示板に教員FD宣言

 (2)全学FDミーティング=毎月一回の定例で、放課後全教員が集まり、FD推進委員会が提案した。例えば「学生とのリレーションを深めるための私の提案」などといったテーマで、二人の教員が提案を行い、それについて意見を交換する。また夏休みや冬休みにもその時々の課題に応じた教員研修会を行っている。
 (3)各教員のFD宣言=各教員は年度初めに自分の教育実践で努力したい事項を三項目設定し、学内掲示板に「教員FD宣言」として学生に向けて公表している。
 (4)教員相互授業参観=平成十四年度には一年のうち二カ月を授業研究月間とし、週に一回は他の教員の授業を参観し「参考になった点」「改善に関わる意見」をその授業者と授業者所属学科長に提出した。
 そして最終的に「参観して参考になった授業方法」「参観者からの参考になった意見」「授業改善に向けて」をまとめた。FD推進委員会はそれを冊子として印刷配布し、授業改善の話し合いの材料とした。
 (5)学生による授業評価=平成十四年十二月には全教員の全授業で学生による授業評価を実施した。
 集計結果は各授業者が把握するとともに、学長、学科長、FD推進委員会や自己評価委員会が把握し、改善策を考える資料にしている。一月には各授業ごとに学生の声をまとめ、それに担当教員の感想を記したものを冊子に作り図書館などで学生にも公開した。
 (6)ガイダンスアワー=学生指導の充実を図るため月二回程度、九〇分の時間をFD推進委員会の提案で設定した。
 全学生を対象に全教員が参加して、学生生活への適応や学生の自己実現を支援するテーマを設定し、その都度、全学・学科別・クラス別と編成を変えながら、学生の全人形成をめざした指導を行っている。
 (7)FDニュース=FD推進委員会が提言や事例紹介を掲載した機関誌を編集し、毎月全教職員に配布している。
 (8)各学科授業研究会=毎月一回学科ごとに教員が集まり、授業満足度九〇%を達成するために研究協議している。
 (9)各学科教育カンファレンス=毎月一回学科ごとに教員が集まり、学科の一人ひとりの学生に注目し、語り合うことで、学生への理解を深め、適切な指導・支援の在り方を研究している。

FD・TIPS集 授業の細かな計画など

 こうした取り組みの中で授業改善に関する教員の工夫が積み重ねられ、それが「FD・TIPS集」としてまとめられている。
 例えば「授業の準備と計画」では、学期初めに科目ごとの予定表作成▽授業の細かな計画、評価の仕方、到達目標の資料を最初の講義で配布。「演出面の工夫」では、プロジェクター活用▽関連ある新聞記事の紹介▽福祉原理など学生が興味を示さない科目では児童虐待や女性晩婚化などを取り上げた新聞記事活用▽講義の中に「豆知識タイム」を設け、食生活や生活習慣に関する時事的なニュースを話題にする▽学生に発問、資料を読ませたりする▽学生全員に授業中一回は発言させる▽居眠り防止に指名して質問する▽毎回小テスト実施▽英単語一万語のフリーソフトでゼロ段から百段までの段位を認定し教師(現在七一段)を超えたら「優」をつけると約束▽九十分授業の中に三回くらい五分の雑談、質問時間を入れる▽就職後の心得について話すなど。工夫情報はお互いに参考にされプラスになっている。

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