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記事2004年7月3日 1939号 (1面) 
中高連、緊急協会長・事務局長会議開く
国庫補助堅持を要請
振興助成法の精神に基づき不退転の決意
強い三位一体改革への危機感 私学の確固たる主張を知事に
 日本私立中学高等学校連合会(会長=田村哲夫・渋谷教育学園理事長)は、六月二十九日、東京・市ヶ谷の私学会館で「緊急協会長・事務局長会議」を開催した。政府の三位一体改革の中で私立高等学校等に対する国庫補助が廃止の瀬戸際に立たされていることから、その対応策のために開いたもの。この中で田村会長は各都道府県の私学協会長らに改めて知事に直接会い、私学の思いを伝えてほしいと要請、また厳しさを増す状況を説明、国庫補助堅持への不退転の決意を明らかにした。

 政府が六月四日に閣議決定した、いわゆる「骨太の方針二〇〇四」では「三位一体の改革」に関して、秋に全体像を明らかにすること、国庫補助負担金の廃止縮減については全国知事会を始めとする地方自治体団体に具体案づくりを要請することを決めた。
 全国知事会では昨年十一月、平成十六年度における三位一体の改革に関する提言をまとめているが、文部科学省関係で廃止すべき国庫補助負担金の筆頭に「私立高等学校等経常費助成費補助金」を挙げており、早ければ七月十五日の全国知事会議で、遅くとも八月二十日までにまとめられる見通しの国庫補助負担金改革の具体案では、私立高等学校等経常費助成費補助金の廃止を提言するのは必至の状況だ。また同会が今年五月二十五日にまとめた「平成十七年度における『三位一体の改革』に関する提言」でも私学助成を含む奨励的補助金は優先して廃止すべきとし、また日本経済新聞は六月二十八日、各都道府県知事のアンケート結果として私立高校等向け補助金を今回の具体案に盛り込む点でほぼ一致と報じている。
 中高連では私学に対する国庫補助金が廃止された場合、地方交付税も減額は必至と見ており、すでにある公私間の公費支出の格差に加えて都道府県間の私学助成の格差が拡大するおそれが極めて大きくなり、全国的な教育条件の水準の維持など望むべくもないとしている。平成十四年度の都道府県間の私学助成額(高校生一人当たり)の最大格差は一・六倍だが、私立学校振興助成法に基づく国庫補助がなかった昭和四十七年度には格差は五・五倍にも開いていた。
 また私学教育の危機は、わが国の公教育の多様性、健全性の確保という観点からも由々しき事態を招くとしており、さらに国庫補助は国の私学振興の姿勢を端的に示すもので、高校等の私学教育は精神的な支えを失うことになるとしている。
 私立学校振興助成法に基づく国庫補助が始まって以降、私学教育は全国的に多様な特色ある教育を花開かせて、国民の大きな信頼を得たという経緯がある。
 この日の会議でも、同連合会の吉田晋・私学振興部会長・副会長は、「(私学は県を越えた広域募集だが)県外から来ている生徒への補助金がさらに厳しくなる」との懸念を明らかにし、また村瀬忠雄副会長は「地方の考えだけで中等教育が絶えずグラグラしたら、(質という面で)大学教育も大きな影響を受ける。国全体の問題だ」と指摘した。

9月22日に全国大会

 文部科学省も私立高校等に対する国庫補助の廃止については危機感を強めており、国庫補助が万一なくなれば、地方でも私学助成削減の流れができる可能性を強く懸念しており、また地方財政も厳しいことから、知事の教育を大切する気持ちを実現する財政状況ではないことも指摘している。
 中高連では知事に直接こうした実情を訴えることで国庫補助の廃止をくい止めたい意向で、九月二十二日には国庫補助制度の堅持を求める緊急全国大会を、全国から私学関係者や父母ら約二千人を動員して都内の東京都日比谷公会堂で開催することにしている。

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