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記事2004年7月3日 1939号 (3面) 
大学の国際化、質保証 国際交流委員会が研究集会
私大連盟
 日本私立大学連盟の国際交流委員会(委員長=笠島準一・上智大学副学長)は、六月一日、文京区の東京ガーデンパレスで、大学の国際化と質保証についての研究集会を開催した。私立大学の国際交流センター長など、約七十人が参加した。

 立命館アジア太平洋大学のモンテ・カセム学長、法政大学の清成忠男総長、国際協力機構(JICA)の小野修司・社会保障グループ長の三人が、国際協力、質保証などについて講演を行い、後半は講演者と参加者が講演内容を踏まえた意見交換を行った。
 第一の発題者、カセム学長は、文部科学省の国際的な大学の質保証に関する調査研究協力者会議に委員として審議に参加していた立場で「基本的には日本の高等教育の質を高度化して、国際的に行動範囲を広げようということ」と結論を説明し、それを実現するにあたっての課題として、@日本の大学が海外に展開する場合、海外の大学が日本に進出する場合、質をどのように保証するかA教育の海外進出に伴う一つの手段として、e―ラーニングをどのように扱っていくかB教育交流の環境を支援するためには、国際的に質保証に関する情報ネットワークをどう構築していくかの三つを挙げた。
 そのうちe―ラーニングについては、日々その手法が進化していることから、質保証が困難であり、継続的な審議の場が不可欠であるとの意見を述べた。またBの教育交流の環境支援については「日本の高等教育の国際的プレゼンスを高める機会だと認識し、積極的に臨むべき」と語った。
 続いて清成総長は、高等教育サービスの提供に市場重視の考え方が進む中で、大学行政も事前規制から事後チェックへと移行し、それに伴って、設置後に大学自らが質を保証し、市場(志願者)や第三者がそれを評価するというあり方に変化しつつある現状を解説。さらに、改革が想像以上に進んだ結果、株式会社立大学の参入も含めて設置バブルが起き、今まさに、「大学とは何か」が問われていると述べた。
 清成総長は、国際的な質保証についても、ネットワーク化が進んでいる欧州の事情などを交えて、「日本も米国と同じように、大学設置を届け出で」という主張もあるが、大学の設置を届け出で行っているのは、米国一部の州だけであり、市場の評価も完璧とは言えない中では、事前規制と事後チェックのバランスが必要であると主張した。また、教育がサービスとして国境を越えた展開に進んでいる中で、AACSBなど、国際的に実績を持つ評価機関を排除する必要はないのではないか、と疑問を投げかけた。
 小野グループ長は、国際協力の一環として、JICAが文科省の協力を得て作った途上国の工学系のネットワークについて解説した。これは、日本とASEAN(東南アジア諸国連合)諸国の大学と結んで、人の交流を密にしようという計画。現在、国立七大学・私立四大学が協力しており、日本の幹事大学は、専門分野を一つ持ち、分野ごとにASEAN諸国からメンバー大学を募り、メンバー大学、幹事大学、ホスト大学の中で、さまざまな交流を持とうというもの。修士取得を目的の留学生を年間五十五人受け入れるほか、長期研修で研究者も受け入れており、このプロジェクトを工学系以外にも展開していきたいと語った。
 講演終了後は、講演した三人と参加者が、教育が国境を越えて提供される時代に、質保証をどうすべきか、などについて、文部科学省の職員も交じえて活発に意見を交わした。

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