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記事2004年7月23日 1943号 (10面) 
ユニーク教育 (132) ―― 育英西中学校・高等学校
国際社会に貢献できる女性
英語力、異文化理解に力を
 四季折々の変化を日々の生活の中で実感・感動できる自然環境に恵まれている育英西中学校・高等学校(辻本信孝校長、奈良市富雄)は、「国際社会に貢献できる女子の育成」を建学の精神に掲げ、一九八三年に奈良育英学園創立七十周年を記念して開校された県下唯一の中高一貫の女子校である。
 国際理解のための手段として、具体的には英語教育に力を入れている。ALTとのティームティーチングはもちろんのこと、LL教室やIT機器の利用、海外英語研修の実施、英語集中講座の導入、韓国修学旅行(事前指導中の半年間程、英語での文通を現地高校生と行う)やオセアニア方面への中学研修旅行(二〇〇六年から実施予定)、交換留学制度の活用等。
 語学研修は中高連主催(当時)のハワイセミナー時代から今のオーストラリア研修まで二十年近い歴史を持つ。
 現在の研修では、NSW州とQLD州との境、ゴールドコーストの南端近くにあるLindisfarne−Anglican Schoolをスタディーセンターにホームステイによる英語研修・異文化理解、そしてシドニーでの一泊二日の観光が行われている。わずか二週間余りの短い期間だか、英語への関心の高まり、学習への動機付けという点でかなりの成果を上げている。
 英語集中講座は昨年からの導入だが、五日間にわたって朝の九時から三時まで英語のシャワー≠浴びて、やはり強い動機付けになっている。この講座の成果の確認のため、参加した生徒全員に事前テストと事後テストを課すが、TOEFL換算で平均三十点以上の伸びが見られた。
 広義での国際理解教育あるいは人権教育の集大成としての、高校での韓国修学旅行も重要な意味を持つ。慶州では日本文化の源流ともいえる朝鮮文化を実感することができるし、ソウルでは「日帝時代の侵略の爪(つめ)あと」にも触れる。
 そうしてソウル市内の塩光女子高等学校の生徒たちとの現地での交流会に臨むわけだが、それに先立つ半年間の文通も含め、同年代の若者たちの意思の疎通の進展に日韓関係の新しい流れを確実に読み取ることができる。
 同校では「祈る心、感謝する心」を持てるように「宗教」を授業に取り込んでいるが、その原点は藤井長治前理事長が掲げた育英誓願の中の「世界四聖の心を慕い」にさかのぼることができる。釈尊も孔子もソクラテスもイエスも、彼らが生きた時代には受け入れられなかった。いわば、自らの理想を生きるために逆説的に世俗とかかわった人たちである。彼らの生き方は、現代の混迷の中で、純粋に生きようとするからこそ、悩み、時には傷つき、さまざまな問題に翻弄(ほんろう)されかねない若者たちに、何らかの肯定的なメッセージになるのではないか、との強い信念のもとにこの授業は実践されている。
 最後に、確かな学力保証があっての私学である。同校の六カ年の成果としての大学合格実績の中身は、小規模校のため、数の競争にはなじまない面があるが、現役率の高さから、そして合格率の割合から見る限り、かなりの成果を上げているといえる。今年も百二十九人の卒業生たちは、神戸大、大阪外大、大阪府立大、京都府立大、奈良女子大、東京芸術大などの国公立大や、慶應義塾大、国際基督教大、東京理科大、関西学院大、関西大、立命館大、同志社大、大阪薬科大、京都薬科大などの有力私大へ合格した。
 クラブや生徒会活動も活発だが、これらの進学実績からもわかるように、出口がしっかり保証されている限りでの「両立」が基本であることは言うまでもない。

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