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記事2004年7月13日 1942号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
人社系大学院の機能強化
研究活動の充実必須
高等教育への資源投入少ない

【大学院部会】

 中央教育審議会大学分科会の大学院部会(部会長=中嶋嶺夫・国際教養大学長)は、六月二十二日、都内で第二十一回の会合を開き、主に人文社会系の大学院の機能強化について、一橋大学大学院・商学研究科の伊丹敬之教授から意見を聞いた。伊丹教授は、「実学の象牙の塔」という一見矛盾する概念を示して、「実はここに真実がある。実学をきちんとするには研究が不可欠」と説明。人社系大学院の教育機能を高度化させるには、研究活動のさらなる充実が必須であると主張した。
 また、日本の高等教育への資源投入は、人社系に限らず全体的に少ないと意見を述べ、大学院の国際競争力強化のためには、資源投入の抜本的強化が必要であると強調した。その際、伊丹教授がセンター長を務める、日本企業研究センターに交付されているCOE研究費のことに触れ、「その予算額が通常の研究活動予算総額をかなり上回るという異常さを深刻に受け止めるべき」と指摘した。さらに修士課程と専門職学位課程の関係について意見を述べるにあたっては、一橋大学大学院商学科で行った研究者養成コースと経営学修士コース(高度専門職業人養成)の同一組織内完全分離の試みを説明した。
 これは、修士課程定員七十八人を研究者養成三十五人と経営学修士四十三人に分離し、入試も授業科目も別にしたもの。組織を分けずに、一つの組織で二つの種類の教育を行うことに意味があると説明した。
 同部会では、このあと数回の会合を行い、八月以降はワーキンググループを設置して分野別の審議を実施する予定だ。

答申案をとりまとめ
全日制教員には新大検PR

【大学入学資格検定部会】

 中央教育審議会教育制度分科会の大学入学資格検定部会(部会長=田村哲夫・渋谷教育学園理事長)は、七月六日、都内で第八回会合を開き、大学入学資格検定の見直しに関する答申案をまとめた。大検部会としては最終の会合。今後、教育制度分科会、総会で審議され、答申として文部科学大臣に提出される。
 答申案は、中間報告案とほぼ同じ内容。大学入学資格付与の機能を維持、より広く活用される試験、就職等においても活用されるよう社会的通用性を高める――を基本方針としている。受験科目については、実技的要素の強い教科を削減して国語、地理歴史、公民、数学、理科、英語の六教科を必修とし、問題水準は現行と同程度とした。高校全日制の生徒にも受験の道を開く。新試験の名称は「高等学校卒業程度認定試験」となる見通し。
 この日の会合では中間報告に関して教育団体や一般から寄せられた意見が紹介されたほか、今年四月から五月にかけて文部科学省が実施した大検合格の取り扱いに関する調査結果が報告された。
 それによると一部市町村で大検の認知度が低く、職員の採用試験でも高校と同等に扱われていない状況がみられた。委員からは地方自治体関係者への積極的なPR、全日制の高校教員に正確に認知してもらう取り組みの必要性が指摘された。

校長への権限移譲で4委員が意見発表
教員の意識改革こそ重要

【地方教育行政部会】

 中央教育審議会教育制度分科会の地方教育行政部会(鳥居泰彦部会長=日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、七月一日、都内で第六回会合を開き、学校と教育委員会との関係などを討議した。この日は四人の委員が意見を発表した。この中で経済同友会代表幹事の北城恪太郎・日本アイ・ビー・エム会長は、学校長に教員の任命権、勤務評定・給与査定・校内人事、予算編成、カリキュラム策定などの権限を与える一方で、管理能力に関する研修や意識改革、学校運営協議会や第三者による評価の必要性を指摘。大澤正子・板橋区立常盤台小学校長は、安全管理など学校の仕事が増えていることから管理職や学級担任外教員の増員などを求めた。門川大作・京都市教育長は、市の学校裁量の拡大などの取り組みを報告し、最終的には教員の意識改革こそが大切と強調した。池端雅世・奈良県PTA協議会長は学校評議員制度が十分機能していない点などを指摘した。
 その後、委員による自由討議では佐賀県教委の新任教頭に対する一年間の企業研修などの事例が報告された。

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