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記事2004年6月23日 1937号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
短大の準学士 学位設定が重要課題
大学基準協会の認証で諮問
【大学分科会・制度部会】
 中央教育審議会・大学分科会の制度部会(部会長=岸本忠三・大阪大学長)は、六月十七日、経済産業省別館で第九回会合を開き、今後の短期高等教育のあり方につき、短期大学、高等専門学校、専修学校の関係者三人から意見聴取を行った。
 このうち短期大学の現状と今後のあり方について、日本私立短期大学協会の関根秀和常任理事(大阪女学院短期大学・学長)は「これまでの短期高等教育における学校種別による安定的な棲み分けを抜け出して、ダイナミックに新しい棲み分けに移行する必要があり、学習成果に基づく学位を与える課程としての設定が、制度の再構築をするうえで最重要課題」と指摘したうえで、「短期大学は学位を授与する課程として、すでに基本的な要素を持ち合わせており、ぜひ短期大学を準学士の学位を授与する課程として、位置づけてほしい」と強く主張した。
 高等専門学校のあり方としては、国立高等専門学校機構の四ツ柳隆夫理事(宮城高等専門学校長)が、高等専門学校は、卒業後の進路も多様化し、専攻科修了後に大学院に進学する生徒も増えていることなど、高等専門学校の現状を紹介した。
 全国専修学校各種学校総連合会の中込三郎副会長(学校法人中込学園理事長)は、専門学校への入学者のうち、約一割が短大・大学の卒業生であること、全専門学校卒業生の就職者のうち、九一・五%が関連分野に就職しているという実績を披露した。また三年以上の専門学校が増えている中で、現行制度では、学位授与機構の個別審査によってしか大学院に入学できないが、四年制専門学校卒業生には、制度として大学院入学資格を付与すべきだと主張した。
 これらの意見発表を受けて委員から「四〇%を超える卒業生が進学をするというのが現状なら、早期創造性が本来の特徴である高等専門学校の存在意義はどうなるのか」といった質問や、「資格取得や技術習得に特化したカリキュラムで、教養に関する科目がない専門学校を、四年制だからという時間的な条件だけを見て、大学と同じように扱うのは無理があるのではないか」といった意見が出された。
 また文部科学省が、河村建夫文部科学大臣からの、大学基準協会(会長=清成忠男・法政大学総長)を認証評価機関として認証することについての諮問を行った。審議に先立って文部科学省が示した、法科大学院の評価を行う機関については法科大学院部会、その他の機関別評価機関については制度部会で審議すること、委員が申請機関の関係者である場合は審議には加わらないことなどとした審議の進め方の案が承認され、同協会の概要についてヒアリングが行われた。次回以降の会合で審議したうえで、大学分科会で結論を出し、答申する予定。

市町村教委の在り方検討
財政事情などによる地域格差が課題

【地方教育行政部会】

 中央教育審議会の教育制度分科会・地方教育行政部会(部会長=鳥居泰彦・日本私立大学振興・共済事業団理事長)は、六月十五日、都内のホテルで第五回会合を開き、地方分権時代の教育委員会の在り方について、岐阜県羽島郡四町教育委員会の小島理生教育長らから、共同設置の教育委員会の利点と課題、市町村と都道府県との関係、市町村教育委員会の在り方などについて、意見を聞いた。
 小島教育長は、四町共同設置の教育委員会の利点として、教育長・教育委員の報酬などの費用が四分の一ですむこと、教職員の人事管理や研修を四町で行えることなどを挙げ、課題としては財政力や職員数が異なり、均一的な向上を図れないことや、首長・議長との連携に格差が出ることがあることを説明した。
 埼玉県松伏町長の千代忠央委員は「制度疲労による機能低下から脱却するために、国は教育委員会の在り方にゆるやかな指針を示し、政治的中立性・安定性・継続性を担保しつつ、各自治体に見直しを求めるべき」だとし、制度の見直しにより、住民の関心も集められると指摘した。
 また福島県石川町教育長の吾妻幹廣委員は、教育委員会に学級編成や教職員の任命権限を与えられても、予算編成の権利がないため、少人数クラスにして教員を増員する際に、予算の関係で非常勤講師でしか受け入れられないなど不都合が生じることがあると説明した。こうした意見を受けたあと、委員からは「義務教育は地域に息づく特徴を反映したものが必要である一方で、世界に通用する人材を育てるためにも、地域格差があってはならない」などの意見があった。

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