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記事2004年6月23日 1937号 (10面) 
羽衣国際大学新設の放送・メディア情報コース
デジタル時代のメディア教育の実践
情報化、国際化に対応 産業社会学部放送・メディア情報コースを設置
―――斎藤教授に戦略的位置づけを聞く


情報化社会の進展とともに放送、出版、新聞などのメディアも情報発信の態様が大幅に変化しつつある。とくに情報処理技術の急速な進歩によって電子化された情報が各分野で活用されるようになり、インターネット上のホームページや電子メールなどでも、動画を手軽に扱えるようになるなど、映像処理技術者に対する社会的ニーズが高まっている。国際的な視野に立った実学教育で知られる羽衣国際大学(山田浩之学長、大阪府堺市)では今年度から産業社会学部に「放送・メディア情報コース」を新設し、デジタル時代のメディア産業を担う人材の育成に着手した。本紙では同コースの責任者である斎藤努教授に「放送・メディア情報コース」の戦略的位置づけと教育の内容、設備機器などについてお話をうかがった。
「放送・メディア情報コース」設置の背景と目的
 本学は平成十四年に短期大学から四年制大学へ改組転換し、変革の時代を担う大学として再スタートを切りました。その際に、従来から指向していた国際的視野に立った実学教育をより一層推し進め、情報化、国際化へ向かって突き進む社会の要請に応えうる人材育成という観点から設置されたのが「産業社会学部放送・メディア情報コース」です。
 このコースの教育目標は総合的な人間教育を踏まえながらマスコミやメディアで活躍できる人材の育成と、総体的にメディアを俯瞰する視点からコンテンツの作成を行えるスキルの養成です。
 特に総体的な観点からのコンテンツ作成スキルは、いわゆるメディア産業に限らず一般の企業においても日常的に必要とされるものになろうとしています。その意味で「放送・メディア情報コース」の学生は今後の企業社会において貴重な戦力となることを確信しています。
 別の観点からも本コースの設置は大きな意味合いを持っています。それは地域の産業社会への貢献という観点です。
 関西地区において北部地域はバイオ産業、南部地域はナノテクという産業分布になっていますが、現在のところ堺市などが立地する中部地区は特に軸となる産業がありません。
 一方日本におけるコンテンツ産業は、今後大きな成長が見込まれながらもまだ立ち遅れた存在となっていますが、本コースの設置を契機として地元の企業や行政からコンテンツ作成ができる人材を要望する声も強く出ています。
 本コースではこのような状況を踏まえた地元企業との協力関係を築き、関西中部地区をコンテンツ産業の中心とする地場産業育成に貢献できるのではないかと考えています。

基礎的教養と基本的実習
制作実習、専門分野学習

 教育内容

 本コースは今年四月から開設された新しい学科なので現在は一年生のみの講義です。現在実施している授業内容は、基礎的な教養教育としての総合メディア論とスタジオワークの基本的実習、編集ソフトに慣れるための基本操作などです。履修している学生は大変積極的で、昨年実施した入学前のオープンキャンパスの時点から興味の持ち方に深みがありました。オープンキャンパスでは昨年七月の時点ですでに納入されていた設備機器の操作も可能であったため、学習のイメージがわいたのか応募者数も多数に上り、入学後の出席率も大変優良です。二年次以降の教育についてはスタジオでの制作実習や取材した素材を編集して作品を制作する活動、企画や編成に関する理論、放送やジャーナリズムの研究などをはじめ、ゼミを通じた専門分野の学習に取り組む予定です。
 メディアの影響力は今後ますます強大なものとなると予想されますので、これを担う人材には機器操作のスキルや作品生成のセンスに加え社会性や倫理性など高い資質が要求されます。教員はこれらの要請に応えるべく、企業出身のスタッフを中心に技術面と理論面をきちんと押えられる人材配置をしています。

 編集機器選定のポイントと使い勝手
 メディアに関連したプロを目指すためには映像コンテンツの制作を避けて通ることはできませんが、その際に重要になるのが映像編集技術の習得とセンスの養成です。いうまでもなく素材の編集いかんで作品のレベルが大幅に変化するので、編集機器とソフトウエアを使いこなすことがコンテンツ制作の大前提となります。
 現在、映像はデジタルデータの時代に入っているので、本コースでも学生が使いやすく、教員が教えやすいことを基本とし、かつ先端的なテクニックの使用が可能なプロユースのデジタル編集機器を基準に、海外の製品を含めて選定を行いました。
 その結果学生用としてカノープス社のCWS−30、教員用として同社のCWS−100に決定しました。選定のポイントとしては前述の各要素を満たしていることに加え、各機能の表示が日本語である点、学生用の機器がノートパソコンで済み、取り扱いに優れる点などを評価しました。
 CWS−30とCWS−100は四月から、本格稼動していますが、期待した機能を十分に発揮して学生の評判も上々です。教員サイドでも本格的な放送に耐えうる機器として、その機能と使い勝手に満足しています。

遠隔教育やオンデマンド講義
学生の作品も配信

 今後の展開

 本コースで整備した設備機器は前述した通り、放送局でも使用できるレベルの高いものですが、同時に大変使いやすい機器ですので、今後は他の教科の教員にもどんどん使ってもらい、授業や研究に活用してほしいと考えています。
 大学においてもデジタル化された教育資源を活用した遠隔教育や、オンデマンド講義などが開始されており、本学も校内LANの整備を行うなかで、学生の作品を配信して在校生や教員に見てもらうようなことも考えていきたいと思っています。その際はカノープス社が多数の教育機関に納入している映像配信システム「MEDIAEDGE」を検討の対象とする予定です。
 また、企業においても広報や営業部門における映像処理技術者のニーズが高まるなど、産業界からの要請に加え、高等学校における新教科「情報」の実施による入学希望者のレベルアップが見込まれる点など本コースの将来性は非常に有望であると考えています。
 現在の新一年生のなかにも既に有望なセンスを示している学生も複数存在しています。これらの学生を中心に各種のコンテストなどで受賞できる作品を早期に生み出していきたいと思います。

スタジオ、編集室などを一体化
自前のコンテンツ作り

 施設・設備の概要

 コース開設に当たっては施設設備の整備が必要でしたが、本学では既設の校舎を改修して本格的なスタジオと編集室、実習室、教員室を一体化した施設を作りました。この施設整備に伴って導入した放送・編集用機器はテレビ局でも使用している本格的なものですが、産学協同研究や放送、映像処理のプロを育成するためには必要な機材であると考えています。特に映像編集装置はカノープス梶i本社=兵庫県神戸市)製のもので、同社がNHKに納入しているものと同等の非常にレベルの高いものです。
 これからの企業側ニーズとして、これまでのようにプロダクションにコンテンツ制作を依頼するのではなく、自前のコンテンツづくりができる人材の要望があります。このような新しいニーズが現れる背景としてはデジタル家電や地上波デジタル放送に象徴される映像コンテンツのデジタル化と情報処理テクノロジーの飛躍的発展があります。私は毎日放送で長く放送業界に携わってきましたが、今回導入した編集機器のように映像編集をノートパソコンで行えるなど、少し昔には考えられませんでした。また、コンテンツの制作・流通面においても、放送局などのメジャーなメデイアのみならずインターネットを中心として個別企業や個人でさえコンテンツの制作・流通が可能な時代となっています。
 このような状況において教育・研究活動を行っていくには最先端のテクノロジーを前提とした設備機器を用意する必要があるでしょう。

映像配信システム
校内LANやネットも利用し各所で表示
カノープス(株)

 カノープス(株)では本特集で取り上げた映像編集システムのほか、映像を校内LANやブロードバンドネットワークを利用してさまざまな場所で表示できる映像配信システム「MEDIAEDGE」も取り扱っており、文教マーケットに多くの実績を持っている。
 「MEDIAEDGE」は、教室内や図書館での映像ライブラリや資料の検索・再生のほか、校内映像放送をIPネットワークで行うことにより多チャンネル化への対応や細かな制御を可能とするなど、校内LANを活用した映像配信やインフォメーションを低コストで実現できるシステムとなっているので、すでにLANを構築済みや計画中の教育機関には好適なソリューションといえよう。また、カノープス社では映像編集システムおよび映像配信システムについて実演を交えた説明を行うセミナーを今夏に予定している。
 セミナー及び製品の詳細は、同社ホームページを参照。
http://www.canopus.co.jp

新時代のメディア教育に力を注ぐ羽衣国際大学


放送・メディア情報コースの授業出席率は良好


教員用編集機器


学生用編集機器


プロユースの機器を備えたスタジオ

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