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記事2004年5月23日 1933号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 中間報告案まとめる
全日制にも大検受験認める
大検合格で高卒資格付与は見送り

【大学入学資格検定部会】

 社会情勢の変化等に合わせて、大学入学資格検定の見直しを続けていた中央教育審議会の大学入学資格検定部会は五月十一日、東京都内で七回目の会合を開き、これまでの審議結果を「中間報告案」としてまとめた。今後は教育制度分科会や総会で検討する。
 中間報告案は新試験の基本方針や受験科目・水準、受験対象者、社会的認知度を高める方策、業務の外部委託などについて提言している。
 このうち審議過程で大きな争点となった「新試験合格で高校卒業資格を付与すべきか否か」については、職業資格取得のためには高卒資格の付与が望ましいなどの意見があったが、高卒要件の修得単位数と新試験の相当単位数との格差や、高校が知・徳・体の調和の取れた教育を目指すものであることを踏まえ、「高卒と同等以上の学力認定を行うこと」にとどめる方針を決めた。しかし同時に「新試験の合格が実質的に高卒資格取得と同様の効果が得られるよう、各種職業資格等における通用性を高める努力をする」方針で、四月以降、大検の就職等への利活用を図るための取り組み、具体的には厚生労働省や経済界への働きかけ等が始まっている。そのため名称については、学力との文言が取れた「高等学校卒業程度認定試験」が検討されている。
 新試験の受験科目(必受験)は、国語、地理歴史、公民、数学、理科、英語の六教科。
 また問題や合格の水準は現行から大きく変えず、全日制高校生にも新たに受験を認める方針。十八歳未満で合格しても満十八歳まで合格者としない現在の年齢制限は維持する方針。
 この日の部会では全日制の生徒にも受験を認めることで安易な中退が増える懸念などが指摘されたが、高校の魅力づくりこそ先決だといった意見が出され、最終的には原案通り全日制生徒にも受験を認めることになった。経過措置はあるが、最短平成十七年度から新試験に切り替わる予定。

教育委員会の必置規制撤廃
賛否両論、3人から聴取

【地方教育行政部会】

 中央教育審議会の地方教育行政部会は、五月十日、都内で第三回会合を開き、木田宏・元文部事務次官、藤田英典・国際基督教大学教授、森田朗・東京大学大学院教授の三氏から地方分権時代における教育委員会制度の在り方について意見聴取した。
 意見発表後、発表者と委員が質疑を行った。藤田氏と森田氏は同部会臨時委員。
 この中で木田氏は戦後、教育委員会制度ができる過程や、戦前の学務委員制度と戦後の教育委員会制度の違いなどを解説、教育政策に直接かかわってきた経験から当時の実情などを報告した。
 藤田氏は「教育員会制度の意義と改善課題」と題して幅広い角度から現行制度の長所と改善が考えられる点などを指摘したが、現行の教育委員会制度については特に問題があるとは考えられないとし、その上で今後の検討課題として、教育長について資格制を廃止したことの再検討、広域人事単位を中核市・特例市まで下ろすこと、教職員の一定枠を市町村の採用枠とすること、現行の義務教育費国庫負担制度・県費負担教職員制度・人確法を前提に、都道府県と市町村間でも一定範囲で総額裁量制を導入することなどを挙げた。
 森田教授は「行政委員会としての教育委員会」とのテーマで現行制度の抱える内在的矛盾(教育の専門性とレイマン・コントロールなど)を指摘、規制緩和と制度選択の自由等から教育委員会の必置規制は非合理とし、自治体の判断による教育委員会を設置しない自由を求めた。
 委員からは、地方自治体が自分たちでよく考える癖をつけるため選択肢のある枠組みに改めること、その一方で弾力化は必要だが、今の教育委員会制度を大幅に変える必要はないという意見などが聞かれた。

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