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記事2004年4月3日 1929号 (1面) 
学校法人会計基準見直しへ 文科省検討会
基本金の取り崩し弾力化
有価証券の積極的評価替えも
 昨年八月以来、学校法人会計基準の見直しを続けていた、文部科学省の「学校法人会計基準の在り方に関する検討会」(主査=大橋英五・立教大学教授)は、三月三十一日、基本金の取り崩しの弾力化や有価証券の積極的評価替えなど経営状況をさらに正確に判断するための基準の在り方などを提言した検討結果をまとめ、同省の加茂川幸夫・高等教育局私学部長に提出した。早ければ今年夏にも必要な省令改正等が行われる見通し。

 学校法人会計基準は、私学の経常的経費に対する補助制度創設に際し、補助を受ける学校法人の公共性が一層高められ、適正な会計処理が行われるよう、統一的な会計処理の基準として昭和四十六年に制定されたもの。
 学校法人(私立学校)は極めて公共性が高く、安定性・継続性が特に強く求められることから、企業のように利益優先ではなく、長期にわたる収支の均衡を目指す制度設計となっている。
 しかし近年、財務情報の公開が進む中で、学校法人の財務書類や基本金制度が分かりにくいとの声があるほか、公益法人に企業会計の考え方を取り入れる動きがあり、また私立学校法の一部が改正されて、私立学校についても来年度以降、財務情報の公開が義務付けられることへの対応がもとめられていることなどから見直しとなったもの。
 今回の「検討のまとめ」では、学校法人会計基準制度の大きな特徴の一つといえる「基本金」に関しては、これまで学校等の廃止や定員の縮小等に限られていた基本金の取り崩しを、今後は、@諸活動の見直しや教育設備の取替え更新等に伴う資産の減少等がある場合A将来計画や事業の見直しに伴い、その計画等を中止、縮小する場合も基本金の取り崩しができるようにし、実態をより正確に表すように改める。
 具体的には「学生寮を廃止・除却し、以後の建設予定もない」「施設設備計画を大幅に見直したことにより、計画規模が縮小した場合」「奨学事業を維持することが困難となったため、奨学事業を見直す(中止または縮小)の場合」などが想定される。ただし第四号基本金(恒常的に保持すべき金額として文部科学大臣が定める額=一か月分の経常経費の額)の在り方については結論が出ていないことから引き続いての検討を提言している。
 また様式および記載事項等の在り方については、財務書類において必要に応じて偶発事象や後発事象等、学校法人の財政状態および経営状況を判断するための重要な事項を注記等により記載できるようにすることを求めている。具体的には採用している会計方針の変更、外貨建て資産・負債等の外貨の金額および円換算額、役員との取引などを挙げている。また金融資産である有価証券については、時価情報を貸借対照表に注記するか、または積極的に評価替えし価額状況をより正確に表示すべきだとしている。


加茂川私学部長に検討結果を手渡す大橋主査:左 (文部科学省)

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