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記事2004年4月3日 1929号 (3面) 
中央教育審議会の審議動向
総合施設の管理運営など
可能な限り柔軟な制度に提案

【幼児教育部会】

 中央教育審議会幼児教育部会(田村哲夫部会長=渋谷教育学園理事長)は、三月十二日、都内の会館で十回目の会合を開き、前回に引き続き総合施設の在り方、特に総合施設の設置主体・管理運営・評価、利用形態の在り方について検討した。
 このうち総合施設の設置主体・管理運営・評価等の在り方に関しては、事務局(文部科学省)から、「民間の能力を活用しながらすべての地域の子供たちに幼児教育の機会を提供する。地域や保護者のさまざまなニーズに対応した多様な機能を提供する柔軟な制度とする。設置主体や管理運営の委託先は、教育・保育の質の向上を図る仕組みを整備して、可能な限り柔軟な制度とする」との基本的考え方が提案された。
 こうした問題について委員からは、「一つの施設にすべての機能を持たせるのは不合理」「ゼロ歳児から二歳児(の受け入れ)に向かう私立幼稚園ばかりではない。三歳児から五歳児(の枠の中)で(教育を)きちんと行うという幼稚園にも支援が必要で、その場合、在宅育児手当てを検討すべきだ」「総合施設はゼロ歳児からでなくてもいい。三歳未満児は毎日通園しなくてもいい」「多様な保育形態を提供するにしてもカリキュラムを崩してはいけない」「多元化する時は幼稚園教育要領が譲れないガイドライン。国は保障すべきだ」といった意見が出された。
 評価に関しては、「幼稚園は小規模のところが多く自己評価は難しい。第三者評価は不可欠」「第三者評価の義務付け、結果の公開も必要だ」「公費の使われ方も評価すべき」等の意見が聞かれた。
 一方、総合施設の利用形態に関しては、事務局が、▽保護者の就労形態等にかかわらず、希望するすべての幼児に教育の機会を提供する▽保護者の事情等により選択可能な保育時間や入園年齢等の設定▽幼児の健全な心身の発達という観点から望ましい育成環境を確保▽地域の実情に合わせた合理的・弾力的な施設の設置・運営の方向性を提案した。これに対して委員からは「保育時間については禁欲的に考え、入園対象者については原則三歳から五歳とし、ゼロ歳から二歳児は例外と位置づけるべきだ」などの意見が出された。四月中旬にも行われる次回会合ではこれまでの意見を整理した資料が提示され、費用負担の在り方などが議論される見通し。
 この日の部会では審議に先立ち幼稚園の中に保育所を併設している、あけぼの幼稚園・あけぼのっこ保育園の安家周一園長から幼稚園と保育所の連携の実情や総合施設に対する考えなどを聴取した。安家園長は既存の幼稚園や保育所、認可外施設、総合施設、どの施設に通っても、利用する機能によって、負担するコストが同じようにすべきだなどと強調した。
首長と教委との関係
制度の改善など自由討議

【地方教育行財政部会】

 中央教育審議会教育制度分科会の地方教育行政部会(鳥居泰彦部会長=日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、三月二十五日、東京都内の会館で第一回会合を開いた。この日は、諮問事項の「地方分権時代における教育委員会の在り方」にそって全委員が知事や市長など首長と教育委員会の関係や、教育委員会制度の改善点などについてそれぞれ問題意識を披露、自由討議を行った。この中で県知事を務める委員は、「教育は教育委員会が行うということでもどかしさを感じるし、互いに遠慮してお見合い現象≠ェでる。教育委員は住民の信託を受けていないのでモチベーションが低い」などと問題点を指摘、別の委員からは「教育委員より教育長の方が問題。どういう形で選ばれているのか」「地方の裁量の余地を縛っている教育委員会の必置規制を見直したらいい」との意見も聞かれた。また教育委員会が抱える問題は制度から来るものではなく、運用上の問題だとする意見が複数委員から出されたが、その中では戦後、教室の中にまで政治的な対立が持ちこまれた歴史を振り返りながら、教育委員会が首長から独立した執行機関となっている体制は必要で、きちんと機能すればうまくいくとの意見も出された。さらに教育委員会の原則としている「レイマンコントロール」(素人管理)に関しては、レイマンを素人と訳すのは問題で、「予断や偏見を排して事柄に望む人」「一般常識の人」と訳すべきだとの意見も聞かれた。このほか「教育委員会だけを検討してもだめで、首長、議会との連携、役割分担が必要だ」「首長の啓発に努めている」「教育委員会では政策に使える予算が本当に少ない」「まず運用面で活性化策を議論し詰めてから制度論に入るべきだ」といった意見が出された。
機動的に若手教員養成
教員組織の再編成が課題に

【教員組織の在り方検討委員会】

 中央教育審議会大学分科会の大学の教員組織の在り方に関する検討委員会(座長=安西祐一郎・慶應義塾長)は三月十七日、東京都内で第六回の会合を開いた。同委員会はこれまで、大学・短大・高等専門学校における若手研究職 (助教授・助手・講師など)につき、学校教育法や大学設置基準の記述が実態とかけ離れているとして、若手研究者が志や希望を持てる実態に即した制度・名称に変更するための論議を重ねてきた。
 審議の中で各委員から、専門分野ごと、また学校ごとに異なる状況があることが示されたため、委員会の基本的な考え方としては、各大学で柔軟かつ機動的に、特色に応じて教育研究の活性化や若手教員の人材養成を図る機能を十分果たすことができるような教員組織を編成できるようにするべき、ということで意見が一致している。
 この日その点について再度の確認が行われたが、その後も各分野の現状や理想を語るにとどまっており、制度設計などの踏み込んだ話には至っていない。話し合いの中で「(制度に自由度を持たせるとしても)まったく規定がなくなると海外や他大学から見た場合に混乱が生じるのではないか」と指摘する委員もおり、今後はこうした指摘も踏まえた最終調整ののち、若手研究職の役職名称を含めた具体的な制度設計を審議する見込み。



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