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記事2004年4月23日 1931号 (6面) 
激しい生徒獲得競争
04年首都圏高校、公立離れに歯止め
共学化や併願推薦制
私学側、公立の特色化に対応
 平成十六年の首都圏の高校入試は各都県の公立高校が個性化・特色化を目指して特別推薦など大幅な入試改革を行ったのが一定の成果を上げ、公立離れに歯止めがかかるという状況が生じているが、これに対して私立高校側も単願を条件とした推薦入学から公私立併願を認めるなどの入試対応策や共学化による人気アップ目指して巻き返しを図り、激しい生徒獲得競争を展開している。
 [東京]都立高校は成績査定で従来の相対評価を昨年から絶対評価に切り換えたが、その影響で生徒の内申点が一斉に上がった。内申成績「五」は生徒数の七%といった制約がなくなり、オール三だった生徒に「四」が五つもつくため、「私はすごい」と自信をもって推薦入試に挑戦する傾向が強まった。その流れが今年も続いていると森上教育研究所の小川哲美編集人は見ている。
 さらに今年からは高校の個性化・特色化を推進するために、文化・スポーツ活動に優れた能力を持つ生徒に特別推薦の制度を導入した都立高校が十五校、推薦枠を拡大した高校が十一校に達した。また学習成績だけでなく意欲や適性などもきめ細かく見る観点別学習状況評価も取り入れた。進学指導重点校の日比谷などは昨年同様人気が高い。都立の実質競争率は一・三三倍で昨年と並んで単独選抜制度導入以来最高となり、都立離れに歯止めがかかった。
 これに対して都内の私立高校は共学化と併願可能なB推薦を導入して人気アップをねらっている。男子校では昭和鉄道、関東第一、成立学園、女子校では桜丘、武蔵野の五校が男女共学へ移行した。豊南は男女別学から共学へ、国立音大付属音楽は普通科を女子から男女共学へ移行して校名も国立音楽大学付属へ変更した。
 都立高校の攻勢に対抗して私立高校では併願可能な推薦がますます活発化、今年の導入校は約二十校に達した。日本大学桜丘などは併願推薦導入によって昨年比七百九十三人の応募増となった。
 推薦を新たに導入する学校は成城学園、桐朋、桐朋女子の三校、逆に芝浦工大と帝京大学は推薦募集を停止した。都内私立高校の一般入試の中間応募状況を都がまとめたところでは、全日制百九十三校の平均倍率は二・三九倍(前年二・四四倍)となり、十年連続の低下。少子化に加えて景気低迷で複数校受験する生徒が減少傾向にある影響とみられている。
 [神奈川]神奈川の公立高校は十八校を再編統合して新設九校を開校したのに伴い、入試制度も前期選抜と後期選抜の二つの選抜機会を設けた。従来の推薦入試は前期選抜になり、中学校長推薦を必要とせず、自己PR書を提出することで志願できるうえに学力検査抜き、調査書や面接で総合選考される。公立百六十六校全部で実施され募集定員枠も普通科などは従来の推薦入試の三〇%から五〇%以内に拡大された。従来の一般入試は後期選抜となり、三〜五教科の範囲内で各校が決めた教科によって学力検査をした。平均競争率は一・三三倍。
 公立高の制度変更に対応して、私立高校では推薦入試を推薦I(単願)と推薦U(公立併願)の二つの形態に変更した。今年は全日制五十五校で外部募集を実施した。併願推薦にも注目が集まったが、理数科に推薦導入した桐蔭学園などいくつかを除いて応募者はあまり伸びなかった。共学への移行は鵠沼と橘学苑の二校だが、一般入試でそれぞれ二百十九人増、百七十九人増と共学人気はどこでも顕著だった。

通学区を撤廃
上位校へ志望者増加

 [埼玉]埼玉ではこれまで公立高校に八つの通学区を設定していたが、今年から通学区を撤廃して全県一区としたため、上位校への志願者が増えて、推薦入試、一般入試とも昨年より厳しい入試となった。推薦入試の倍率は二・二八倍で昨年比〇・〇五ポイント増、県内すべての公立高校で推薦入試が行われるようになった九四年以来、最高の倍率となった。最も倍率が高かったのは蕨・普通科の五・四八倍、次いで浦和一女・普通科四・七一倍、川越女子・普通科は四・六七倍。
 一般入試は一・二六倍で昨年並みの倍率だった。
 県内私立高校の外部募集は男子校七、女子校六、共学校三十三の計四十六校で行われた。早稲田大学本庄は入試日を早めたため、青山学院や明治大学付属明治との競合関係が解消されて二百八十一人の応募者増。推薦応募者を大きく伸ばしたのは開智七百二十三人、川越東六百十七人、浦和学院五百七十五人、東京農大第三二百十一人、聖望学園百三十二人など。
 [千葉]千葉県の公立高校では従来の推薦入試に替わって、昨年春から特色化選抜が導入されて、異常な人気を呼んだ。二年目の今年はやや鎮静化して百四十七校全部での平均倍率は二・三六倍と少し低下した。各高校が面接や作文などの試験方法を独自の判断で決めて実施するが、出身中学校長の推薦は不要で、志願者本人の意思で希望校を受験できる。受験生は二月下旬の学力入試と合わせて二回受験できる。特色化選抜に伴って独自問題実施校が拡大、学力重視校が増えている。
 私立高校で二校が推薦を導入、東海大付属浦安は百四十人募集に百八十二人、東海大付属望洋は百五十人募集に二百十六人応募。併願推薦の導入で茂原北陵は六百四十五人、和洋国府台は二百七十六人の増。千葉商科大学付属は共学移行で三百四人応募者増。市川が募集枠を減らした影響で競合関係の日大習志野は三百四十二人応募者増。
 私立高校の一般入試は倍率四・一二倍で前年比〇・四三ポイント減だった。不況と少子化に加えて公立高校で昨年導入した特色化選抜の影響もあると見られている。

絶対評価で甘い内申
有名校に集中の現象


 高校入試改革の中で自治体では学区制の撤廃や公立中学への絶対評価導入などが各地で進んでいる。その結果、学区制撤廃では東京の日比谷高校には旧学区外からの合格者が約八六%になったなど、学力のある生徒の有名校集中の現象が現われている。また絶対評価の導入は中学からの内申成績が甘くなったり学校間格差ができて、入試選抜資料として不適切ではないかという疑問も出てきている。
 神奈川県では中学校の絶対評価は平成十四年度から導入、平成十五年度から公立入試で絶対評価を使うことになったが、県内市町村教育委員会の指導課長らが集まった会議の席で絶対評価での評定成績を高校入試の選抜資料に使うことに対して疑問が続出、県教委の市町村別調査でも「五」の評価がついた生徒の割合は自治体間で最大七倍の格差があることが明らかにされた。
 埼玉県教育委員会では中学三年生に対するアンケート調査で五段階評価の「五」を特定教科で半数以上の生徒につけた公立中学校が平成十四年度の二校から六校に増えたし、各校の評価に偏りがあることが分かった。評定値の比率に制約のある相対評価には問題があって、学力到達度だけで点数をつけることにした改定は一応現場教員をホッとさせたが、その安〓ルビあん〓堵〓ルビど〓感が甘い評価につながった面は否定できない。このため今後の方向として学力検査と調査書の比率を六対四、五対五、四対六とする選択を学校が行う時に学力検査の比重を高める可能性が強まっている。
 こうした絶対評価による見かけの成績アップや学区制撤廃は中学生に強気で学力以上の公立高校受験を促す効果があり、その結果不合格者が増えて併願校への戻りが多くなるため、私立高校にはプラスに働いている面もある、と小川氏は述べている。


公私の学納金の違い(公費支出の差)が 私学への応募で重い足かせとなっている

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