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記事2004年4月13日 1930号 (1面) 
「私立学校法改正案」審議始まる 衆議院文科委で提案説明
私学振興へ政策転換促す
安西慶應塾長ら参考人から意見聴取
私学審委員選任等に異論が
 「私立学校法の一部を改正する法律案」の衆議院文部科学委員会での審議が三月三十一日から始まった。同日、河村建夫文部科学大臣が改正法の提案理由、概要を説明したのに続き、四月二日には与党と野党それぞれが推薦した参考人から私立学校法改正についての意見聴取が行われた。

 与党参考人となったのは慶應義塾の安西祐一郎塾長。また野党参考人は伊藤正純・桃山学院大学教育研究所名誉所員(全国私立大学教職員組合中央執行委員長)。
 質疑では改正私学法が学校法人に財務情報の公開を義務付けること、私立学校審議会の委員構成等を各都道府県知事にほぼ全面的に委ねることなどが取り上げられた。改正案について安西氏はほぼ全面的に評価し、伊藤氏も基本的に賛成との立場を明らかにした。
 このうち安西氏は今回の改正案は、私立学校が一人前の扱いを受けながら、今後、日本の教育の中心になっていくとの背景のもとで出てきたものとの認識を示すとともに、財務情報の公開については、外部の人が良い学校選びができるよう私学の一層の情報公開の必要性を指摘した。ただし公開する情報や公開先等については一定の歯止めが必要なことも示唆した。公開情報が悪用されることについて私学関係者の間には根強く不安感が残っている。
 またそうした改革と同時に日本の将来、世界の中での日本の位置づけのためには、国立大学重視の政策から、多様な活力のある人材をさまざまな所で育てていく政策への移行が必要で、そのためには私学の財政基盤の充実が重要だと強調した。
 安西氏はまた国からの財政措置として、約九十校の国立大学に約一兆六千億円の予算が振り向けられ、約千校の私立大学・短大には約三千三百億円の予算しか支出されていないことなども説明した。ただし国の財政問題もあることから、一定の競争環境が重要で、その中では経営の仕組みと情報公開が重要な位置を占めている、とした。
 続いて伊藤氏は財務情報の公開や学校法人における管理運営構成、監事と評議員の兼業規定を廃止したことなど今回の改正については基本的に賛成とし、また私立学校の経営上の責任体制が明確になる意味では評価できるとした。財務情報の公開に関しては、財務情報の公開によって経営を悪化させる学校に関しては法律の議論を超えて対応を検討する必要性を指摘した。ほかに教授会に関する記載がないとして検討の必要性を指摘した。
 一方、私立学校審議会の委員に関しては、教育に関し学識経験を有する者とするほか、委員の資格、構成割合、推薦手続き等はすべて各都道府県知事の判断に委ねることについては、伊藤氏は「大まか過ぎる。少なくとも半分か半分近くは私立学校関係者を」と語り、安西氏も「私学の関係者が何人か、その経験者が何人か入って、私学の在り方を十分吟味したうえで私立学校の審議をしてほしい」と語った。

情報公開による風評被害で質疑

 衆議院の文部科学委員会が四月七日に開かれ、私立学校法の一部を改正する法律案に関して質疑が行われた。この日は民主党・無所属クラブ、社会民主党・市民連合が欠席、公明党の斉藤鉄夫議員が財務状況の公開によって、将来、その学校がつぶれるのではないか、といった風評被害が起きる可能性を懸念、加茂川私学部長に質問したが、私学部長は閲覧対象者を在学者その他の利害関係人に限定したこと、正当な理由がある場合は閲覧を拒否できること、小規模法人には便宜のため様式、参考例を示す考えがあることを説明した。

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