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記事2004年4月13日 1930号 (1面)
高等教育の再構築に向け16の提言 私大連盟教育研究委
日本私立大学連盟の教育研究委員会(委員長=菅野卓雄・東洋大学理事長)・教育研究分科会(主査=松本亮三・東海大学学長室長)は、このほど日本の高等教育の再構築に向けて、入試改革、卒業時共通試験の導入、高大連携協議会の設置など、十六の提言を発表した。これは、大学を取り巻く環境の変化に対応するのは、個々の大学の努力では限界があるとして、世界の高等教育の現状と行方を見定めながら審議を行ってきた結果をまとめたもの。平成二十一年に到来すると言われる全入時代を目前に、大学はどのように質保証に取り組むべきか。日常的、かつ現実的な道筋を示した。 提言のテーマは大きく分けて(1)入試改革(2)入学時の質の保証から卒業時の質の保証へ(3)学生の達成度評価とミニマム・リクァイアメントの標準化(4)大学初期教育課程の再編と入学前教育(5)教員の意識改革の必要性と絶えざるFD活動からなっている。 (1)の入試改革の中で、理念先行のゆとり教育と大学入試の少科目化による学力低下への対応策として、大学入試センター試験を利用した入試科目の追加が手段の一つとして考えられるが、同試験を私立大学で活用するには、少なくとも主要科目について質とレベルを異にする種別の試験が必要だとして、国や大学入試センターに働きかける意向を明らかにしている。 また、高校間の格差が大きいことが原因で成績調査書の利用があまり進まないことへの中期的な対策として、同連盟で研究指定校・学部を設置し、成績調査書と学部における学業のパフォーマンスの関係を調査研究することが重要な事業となるであろうとしている。 さらに、国公立大学が入試科目数を増やしつつあるため、私立大学も志願者減のリスクを背負わず入試科目を増やしやすくなっていることを指摘した上で、推薦入学やAO入試でも入学決定を過度に早期化しないよう、私立大学全体で協約を制定するなどして、必要以上に入試を安易化したり、若者の学習意欲をそがない施策をとることが私立大学の使命だとしている。 (2)では、入学者の質の保証確保も必要としながら、卒業時の質を保証するシステムに転換させていくことが必要だと指摘し、卒業時に社会から選ばれる人材を輩出するには、各大学が卒業時に卒業資格認定を行う必要があり、客観的な形で質保証ができるよう、米国で行われているような共通適性検査導入や、厳格な評価を行うため卒業定員の設定も検討の必要があるとした。 さらに高等学校の教育課程を維持したまま、大学が一方的に対症療法を行うだけでは現状を改善するのは難しいため、高等学校教育と大学教育を制度的に結びつける必要があるとし、同連盟加盟校とその附属高校を核として、高大連携協議会を設置して対応を図る必要があると提言している。
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