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記事2004年4月13日 1930号 (5面) 
新世紀拓く教育 (21) ―― 桜丘中学校・高等学校
中高同時に共学化 IT活用の学習
レプリカミュージアム整備
 桜丘中学校・高等学校(平美佐子校長、東京都北区)は平成十六年四月、中学と高校を同時に共学化、校名も桜丘女子から現校名に変更した。これを機に、インターネットを活用した学習環境「e―環境」を核に、進学教育・感性教育・英語教育・情報教育(e―教育)に一層力を入れていく。
 共学化は、「建学の精神である『自立した個人』を育てることに性差はない。伝統を大切にしながら、これからの時代を見据え、今求められているものを教育で実践し、常に進化し続けていくためです」と平校長は言う。
 同校が共学化を視野に入れはじめたのは十年ほど前から。数年前からは教職員会議でも共学化を検討し、さまざまな課題について話し合ってきた。なかには、伝統ある女子教育で十分ではないかという意見もあった。しかし新しい時代には新しい分野を切り開いていかなければならない、長い伝統と歴史があるからこそ、全教職員が気持ちを一つにして取り組まなければ共学化をなし遂げることはできない、と平校長は呼びかけ、全員の合意を見ることができた。
 平成十五年二月、理事会も共学化を承認。すぐに同校のすべての教職員から成る共学化準備委員会を正式に発足。同時に、在校生や桜友会(OG会)にはビジョンを示し、了解を得ることができた。共学化の実施は平成十六年度からとし、まず年間スケジュールを立てた。
 三月、早速、春休みを利用して、女子校から共学校となった学校を何校か見学させてもらった。
 六月二十二日のオープンキャンパス、七月二十一日の学校説明会に向けて、カリキュラムや制服の最終確認、校歌の改訂、男子のためのクラブ活動場所をどうするかといったことを具体的に決めていった。学校案内書も変更しなければならない。校舎の追加改修工事もある。細かな実務作業が押し寄せてきたが、そのひとつひとつを全員で手分けし、確認しながら、取り組んだ。
 共学化の先輩校からのアドバイスも受けた。そのひとつは、男子生徒の保護者は良くも悪くも進学に対する熱意が強く、学校側はその期待を担うことになるということ。施設面では、男子はパワーが大きいためガラスの扉などはガードするものが必要だ、など。生活指導面でも校舎内に死角をつくらないこと、男子生徒は第二次性徴期に入ることなど、先輩校の話は本当に参考になった。毎月定例での研修を重ねた。
 夏休み前には、少年問題に長年取り組んできた、日本私学教育研究所客員研究員で日本初の女性警察署長(元三田警察署長)となった桜井るゑ子さんを講師に講演研修を行った。講演の内容は、思春期と性差をめぐる諸問題、現代青少年の気質と背景、学校教育に求められるものや具体的なその対応、カウンセリング、教師のかかわり方、自己理解、などなど、ケーススタディー的なことも含めて非常に具体的なものだった。
 夏休みに入ると教職員がいろいろな学校へ積極的に研修に行き、それらの結果を持ち寄り、桜井さんの講演内容も含めて、何度も内部研修を行った。
 夏休みまではいざとなると大変なことが多いという感じがあったが、研修の積み重ねや、他校からの「男子とはいえ施す教育は同じ、あまり意識しないほうがいいですよ」というアドバイスをもらったり、桜丘の伝統と教育を見直す中で、次第に自信を深めていった。
 平成十六年四月、いよいよ男子生徒が入学してきた。男女構成は、男子生徒が中学では定員の三割、高校では四割と、学校側の期待以上の数字となった。それだけ同校への期待は高いということだ。
 カリキュラムの特色は高校段階の進路類型制の導入である。高校一年次では特待クラス、特進クラス、進学クラスの三種類だが、二年次には国公立理系、国公立文系、私大理系、私大文系(私大文系選抜)の四つに分かれる。明確な進路を示したコースづくりである。今後も、本来の教育期間に生徒たちがいかに力をつけたか、同校の環境がそうしたものにふさわしいか常時検討していくという。
 一方では、男子生徒が加わることによって、在校中の女子生徒の方にも、コミュニケーション力や物の見方・考え方に幅が出てくるのではないか、と期待している。
 桜丘中学校・高等学校は従来から情報教育でも名を馳せる。NECA主催のNECC(=ナショナル・エデュケーショナル・コンピューティング・カンファレンス)日本代表プレゼンター選考コンペでは最優秀賞を受賞。平成十四年六月、アメリカのサンアントニオで開催された「NECC2002」で「レプリカミュージアムを用いた調べ学習」と題した教育実践報告を行い、高い評価を受けた。
 レプリカミュージアムとは、例えば同校の玄関アトリウムにはエジプト古代神殿の神々の像や「死者の書」のレプリカが飾られ、パピルスも鉢植えで栽培され、廊下や教室などには四大文明にかかわるレプリカが百七十点以上も置かれている。つまり、校舎全体がレプリカミュージアムなのである。それらの展示品は、触っても、手に取って見てもいい。興味を持てば校内専用のウェブサイトで調べることもできる。感性を豊かにするだけではない。そこに仕掛けられているのは、生徒たちの知的好奇心をかき立てる仕組みである。「いままでは知識が大切だった。これからはその知識を使って何ができるか、何を生み出せるかです」と平校長。共学化して「楽しみも、期待も、やりがいもあります」と語る。


レプリカミュージアム(アトリウム棟、エジプトコーナー)

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