こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2004年3月3日号二ュース >> VIEW

記事2004年3月3日 1926号 (3面) 
2004年少子化の中で厳しい大学入試
志願者軒並み減少
 大学入試の二〇〇四年の出願状況は予想されたことながら厳しかった。高校の新卒者が一九九二年の百八十万人をピークに、その後一貫して減り続け〇九年には百六万人になるという少子化現象継続の中で、四年制大学数は九二年の五百二十四校からすでに〇三年に七百校を超えるまでに増え続けている。学部学生を募集した校数でも七百に迫る勢いである。代々木ゼミナールが二月十八日までに前期入試など出願者数の確定した一般入試募集枠の応募者数が公表された二百二十七私立大学について集計した結果を昨年と対比したところ、九四・四%となった。今春の私立大学入試について一言でまとめると「勝ち組なし」と坂口幸世・進学情報指導部本部長はいう。
センター試験平均点高く
すべての地域で志願者減少


 昨年比出願者指数の九四・四%を試験の形態別に分類すると、通常型入試では九二・三%だが、センター試験利用入試では一〇一・五%とわずかに伸びている。受験生心理として数校を併願する場合、センター試験利用入試へ出願するのも、一般入試に出願するのも「同じ一校」と考えてどちらか一方だけに願書を出してすます可能性が高い。しかも今春はセンター試験の平均点が高かったから「自分はできた」と合格の期待を持ったものが多かった。しかし平均点が高い時にはみんなできている。しかも私立大学のセンター試験利用入試は募集枠が小さくレベルが高いので、合格は通常型入試に比べずっと難しくなる。
 つまり戦術としてセンター試験と通常入試を同じ大学に二つ出願しておけば、センター試験利用入試で落ちても通常入試で合格する可能性が大きい。センター試験利用入試で合格するのは、だいたいその大学を第一志望にしていない受験者層である。だから本当にその大学に入りたければ、通常形入試も併願するのが確実な戦術といえる。
 地域別の志願者数の昨年対比は北海道・東北九〇・〇%、関東九四・〇%、中部九六・二%、近畿九五・三%、中国・四国九六・一%、九州・沖縄九九・九%とすべての地域で減少している。
 学部系統別で昨年と対比しても次の通り、ごく少数の系統以外は軒並み減少している。
 法・政治九三%、経済・経営・商九二%、社会学九二%、人文科学九七%、学際・総合一〇二%、医療・保健九八%、理学八五%、工学九五%、農学九四%、家政学一〇三%、美術九六%、音楽一〇六%、体育九九%、その他七五%となっている。

医療・保健が前年対比一〇〇%超え
家政学系生活文化が突出

 これをさらに詳しく学科別に昨年対比指数が一〇〇%以上になったところだけを拾って見ると、理系では医療・保健系統の中の医学一〇七%、歯学一〇三%、看護学一〇〇%、工学部系のうち土木・都市一〇八%、農学系では獣医一〇一%、家政学系では食物・栄養一〇五%、生活環境一〇七%、生活文化一三五%となっている。
 また文系では法・経・社会学部系統の学科には一〇〇%超はゼロだが、人文科学系統では哲学一〇〇%、人間・コミュニケーション一一三%、教育学一〇四%、学際・総合系統では政策一一三%、環境一一二%、国際関係一〇二%、健康一一五%などとなっている。
 全体的な傾向として、女子の就職に強い学科や女子に関心を持たれやすい学科が健闘している。ただその中で例外的に医療・保健系統の薬学九一%が振るわなかった。薬学はこれまで女子の就職に強い学部学科として人気が高く、「薬学部をつくれば安心」と最近大学で新たに薬学部を設置するところが相次いできただけに、医・歯・獣医などの健闘の中で蚊帳の外に外れているのが特に目立つ。これは厚生労働省が数年後に薬剤師は余るという予測を出したことや初年度納入学費が二百五十万円程度で普通の理系学部の約百四十万円に比べて高額となるために不況下に敬遠されたこともあるようだ。また薬学部入試が難しいため人文や家政系などへ流れたものもあるらしい。
 こうした流れの受け皿として女子大学で増えたところがいくつか見られる。女子大学は知名度の高い割に競争倍率は低いところが多く、「お買い得」感を抱かれやすい。そして規模が大きくないだけに少し受験生がふえると倍率もかなりあがることになる。

女子大の一部を除き減少
大規模有名私大、国立大も減少


 個別大学の志願者数の表を見ると、清泉女子、白百合女子、東洋英和女学院、実践女子、昭和女子、同志社女子、京都女子、神戸女学院など女子大学のほかには、ごく少数の大学が昨年比指数で増えているだけで、その他は大規模有名私大を含めてほとんどが減少している。例外的に慶應義塾は一〇一%と増えたが、増えたのは法学部だけ、センター試験利用入試でこれまで面接を課していたため遠くの受験生に敬遠されていたのを、今春は面接廃止でどんなに遠くても受験できるようになったのが幸したため唯一増えたのであって、他の学部は軒並み減少している。
 中央大学は一〇二%と増えたが、これは文学部がセンター試験利用入試を四教科型のほかに三教科型を加えたことが影響している。
 国立大学も平均して五%ほど減っている。センター試験を五教科七科目に足並みを揃えたことによる影響は旧帝大系などには関係ないが、これまで三教科入試だったのを五教科七科目に改めた大学などは敷居が高くなりすぎて嫌われたようだ。


高卒者が減少する中で4年制大学は増加を続けている

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞